怪物音楽番組『ミュージックステーション』をウォッチしてきてJ-POPの潮流は見えたのか?【連載最終回後編】

知らない人はいないであろう音楽番組『ミュージックステーション』を、音楽ブロガー・レジーが定点観測する連載コラム「月刊 レジーのMステ定点観測」。

[前編]では森山直太朗「さくら(二〇二〇合唱)」の名演についてお届けしましたが、[後編]では映画効果でブレイクを果たしたこのバンドの話題からどうぞ。

 

Awesome City Club:ついにMステ初出演

5日の放送に初出演を果たしたAwesome City Club。2015年に鳴り物入りでメジャーデビューしてから約6年、5人だったメンバーは3人になり、事務所やレーベルの移籍も経たうえで、ついにメインストリームど真ん中に登場しました。

この日披露したのは映画『花束みたいな恋をした』の大ヒットによって多くの人に聴かれている「勿忘」。atagiとPORINの男女ボーカルの持ち味が発揮されたバラードで、情感が伝わるリズムの作り方やストリングスの使い方も効いています(アレンジが肝の楽曲でもあるので、曲のメリハリを強調するギターソロがカットされてしまっていたのは残念でしたが)。

Mステ前に出演していた『CDTVライブ!ライブ!』ではやや緊張しているような素振りも見えたオーサムの面々ですが、この日は歌唱前のatagiの「気持ち的にはいつもと同じパフォーマンスができるようにと思っています」というコメントの通り、堂々としたステージを見せてくれました。「勿忘」をきっかけにこのバンドがMステの常連になっていくのか、引き続き注目したいと思います。

 

最終回に寄せて…… 2014→2021、Mステと音楽シーンの変化

さて、この連載の初回は、2014年5月の放送回について書いたものでした。前述のAwesome City Clubはちょうどインディーシーンで頭角を現していたタイミング。「東京のインディーシーンが面白い」なんて声が音楽好きの間で語られていた一方で、メジャーシーンは48グループ全盛の時期でもありました。この年の紅白歌合戦にはAKB48、SKE48、NMB48、HKT48の4グループが同時出演しています。

また、ロックバンドの世界ではフェスのステージを盛り上げるのに有効なものとして“四つ打ちロック”などと称されるサウンドがシーンを席巻していました。2014年5月のMステにはKANA-BOONが初登場、またAKB48は2週連続で出演と、Mステの出演者を振り返ることで当時の音楽シーンを取り巻く雰囲気がよくわかります。

あれから約7年、日本のポップミュージックを構成する要素は大きく変わりました。2015年のApple Musicの日本でのサービス開始以降ストリーミングサービスは徐々に浸透し、今では“そこでどれだけ再生されているか”がヒットを測る重要な指標に成長しました。また、時代の真ん中を占め続けると思われたフェスですが、コロナ禍の影響もあってこの先の動向は不透明です。

そういったインフラの変化以上に大きく変わったのが、音楽シーンの“主役”たちです。48グループは10年代後半を通してMステの出演回数が徐々に低下し、入れ替わるように人気を博している46グループも音楽シーンにおいてはその存在感の上昇がひと息ついた感じがあります。そんななか、星野 源(2015年5月29日のMステ、「SUN」の気合の入ったパフォーマンスには“時代が変わる”予感がみなぎっていました)や三浦大知(2016年5月6日のMステ、「Cry & Fight」での無音シンクロダンスで彼はついに“発見”されました)といったあらたなスターが登場したのが2010年代の半ば。その流れはあいみょん、Official髭男dism、King Gnuといった面々がメインストリームで評価される今のシーンのムードに繋がっていきました(この流れで言うと、Mステにいまだ米津玄師が出演していないのは惜しいところです)。

また、宇多田ヒカルが“復活”するなど(2016年9月19日の『Mステウルトラフェス』でのタモリとのトーク、そして「桜流し」のパフォーマンス最高でした)、キャリアを積んだアーティストの動向も充実。さらには、ここ数ヵ月のMステに顕著なように、TikTokやストリーミングサービスを通じてたくさんの新しいアーティストが支持を集めつつあります。

この連載が続いてきた約7年間は、結果的には日本の音楽シーンがダイナミックに動いていく時期でもありました。そのなかでMステの形も様々な面で変化しており、2019年10月からは放送時間が21時に移行、番組内容も一般の方のダンス企画やVTRでのランキング企画など時に“?”というコーナーへの比重が強まりながらも、総体としてはシーンの状況を伝えるメディアとして機能してきました。テレビというメディア自体のあり方が問われがちな昨今ではありますが、この先もMステがメジャーな音楽番組として、そしてメジャーな音楽シーンの中心として存在し続けることをこれからも願っております。

なお、最後に告知ではありますが、現在のMステのプロデューサーを務めている利根川広毅さんへのインタビュー記事(番組プロデューサーを直撃して聞いた、『ミュージックステーション』が本当にやりたいこと)がアップされています(後編は331日配信)。今のMステがなぜライブとVTR企画が併存する形になっているのか、その背景にはどんな思いがあるのか、そしてこの先Mステは何を目指していくのか……といった話を率直に語っていただきました。たびたび“Mステのバラエティ化について指摘をしてきた当連載に対する答え合わせのような内容になっていますので、そちらも合わせてぜひご覧ください。

それでは、これで本当に終わりです。約7年間、お付き合いいただきありがとうございました。またどこかでよろしくお願いいたします!

TEXT BY レジー(音楽ブロガー/ライター)

 

【2021年3月5日放送分 出演アーティスト】
GENERATIONS from EXILE TRIBE「雨のち晴れ」
川嶋あい「旅立ちの日に…」
Awesome City Club「勿忘」
aiko「磁石」
森山直太朗「さくら(二〇二〇合唱)」
KAT-TUN「Roar」

【2021年3月19日放送分 出演アーティスト】
DA PUMP「Dream on the street」
緑黄色社会「たとえたとえ」
ジャニーズWEST「Rainbow Chaser」
Snow Man「Crazy F-R-E-S-H Beat」(IMPACTorsとのSPコラボ!)
s**t kingz「FFP feat.C&K」
Toshl Toshl押し3択(Ado「うっせぇわ」 or 菅田将暉「虹」 or DISH// 「猫」)
もさを。「ぎゅっと。」
NCT 127「gimme gimme」
sumika「願い」
[Alexandros]「風になって」「ワタリドリ」

【2021年3月26日放送分 出演アーティスト】
川崎鷹也「サクラウサギ」
東京スカパラダイスオーケストラ「多重露光 feat.川上洋平」
Sexy Zone「LET’S MUSIC」
秋山黄色「アイデンティティ」
BLOOM VASE「CHILDAYS」
あいみょん「桜が降る夜は」

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