『ザ・スイッチ』を映画好きアーティスト4人で観賞。なんだかヘンなホラーで大満足【連載最終回前編】

邦ロック界で一二を争う映画論客とも言われるBase Ball Bearの小出祐介が部長となり、ミュージシャン仲間と映画を観てひたすら語り合うプライベート課外活動連載。

7年間に渡って続けてきた、当連載の最終回。今回みんなで観たのは4月9日(金)に劇場公開となるホラー映画『ザ・スイッチ』。生粋のホラーマニアとして知られるようになった小出部長と、知らずうちにその薫陶を受けていた部員たちのおしゃべりが止まりません!

みんなの映画部 活動第74回[前編]
ザ・スイッチ
参加部員:小出祐介(Base Ball Bear)、福岡晃子、ハマ・オカモト(OKAMOTO’S)、オカモトレイジ(OKAMOTO’S)


今、もっとも勢いのある「ブラムハウス」によるハイブリッドホラー映画

──『みんなの映画部』第74回目です。今回は『M-ON! MUSIC』での最終回になってしまうわけですが、とりわけ当連載らしい作品セレクトでお届けしたいと思います。新作『ザ・スイッチ』を試写にて観賞いたしました。ハリウッドのヒットメーカーが手がけるホラー映画の話題作でございます。まずは恒例の小出部長からひと言お願いします。

小出 最高でした~!

一同 (笑)。

ハマ 重みないなあ。最終回なのに。

レイジ 「最高!」か「う~ん……」か、どっちのパターンかなあってすげえ思ってました。

小出 僕は余裕で大好きでしたね。

レイジ ああ、良かったあ。

福岡 そんな気はした。

小出 やっぱブラムハウス(ジェイソン・ブラムが代表を務める人気映画プロダクション。低予算のホラー映画を得意としつつ、『セッション』『ゲット・アウト』『ブラック・クランズマン』はアカデミー賞作品賞にノミネート)制作のこの手の映画で、ハズした試しないなっていう感じだよね。

ハマ うん、ちょっとブランド力ついてきましたよね。

小出 いや、すごいよ、ホントに。全部素晴らしい。

──いまや信頼の映画会社になっています。地肩が強いというか。

小出 そう。絶対面白くないわけないから。『ザ・スイッチ』の監督はクリストファー・ランドンっていう人で、彼の前作が『ハッピー・デス・デイ』(2017年)と『ハッピー・デス・デイ 2U』(2019年)。このシリーズはタイムループものとスリラーのかけ合わせなの。

レイジ 誕生日が何回も起こるみたいなやつでしたっけ。

小出 そうそう。今回はさらに驚きのハイブリッド型殺人鬼スリラーなわけですよ。なんとスラッシャー×『君の名は。』!!(笑)

──さらに言うなら大林宣彦監督の『転校生』。「おれがあいつで、あいつがおれで」!

小出 女子高生と殺人鬼のおっさんのボディスイッチング、異色すぎる男女入れ替わりものっていうことで。このポップなかけ合わせを思いついた段階で一頭地を抜いてる感じですよね。もしかしたら近い発想の作品とか他にあったかもしれないけど、決してアイデア一発勝負の域に終わらせず、「良質なB級映画」という最適な形にきっちり仕上げるブラムハウスの手腕。本当に見事だと思いました。面白いポイントはあげればキリがないんですけど、皆さんどうでした?

レイジ ギャグが本気で面白かったっすね。

福岡 たしかに!

ハマ ベタなんだけど、“ちゃんとクオリティの高いベタ”なんですよね。

レイジ うん、普通に笑える。そこハズしてないのって重要じゃないですか。あと、地味でおとなしい女子高生がヒロインで、彼女が密かに恋焦がれているイケメン君がいて……というお決まりの設定の部分もあるんですけど、こういう青春ホラーだと「ふたりがチューして終わりかなあ」とか、予定調和のパターンがいくつか頭に思い浮かびますよね。でも、この映画の展開はこっちの想定を結構超えてくるんで、そこも感動しました。

小出 そうだね。もしくは殺し切れてなかった殺人鬼が蘇るっていう不穏な終わり方とか。

レイジ パート2に続くようなね。

小出 そうそう。いわゆる『ハロウィン』形式ですけど、僕もその想像をしていたんですよ。でも、しっかり粋に終わらすっていうか、シャレの効いたオチで終わらせる。ヒロインの家族の話もちゃんと描ききり、一本の映画としてきれいに着地させる展開。完璧って思いました。

 

7年間で映画を楽しむ力が培われた

福岡 私はずっと笑ってた。めちゃくちゃ面白かったですね。思えば、この『みんなの映画部』の連載、何年やってますか?

──ちょうど7年ですね。

ハマ 7年。すごいな。

福岡 7年やってきて、ずいぶん訓練されたというか(笑)。私もやっとこれがめちゃくちゃ笑えるぐらいになったんだなって思いました。

レイジ リテラシーが上がったっていう。

ハマ なるほどね。

レイジ 俺も認識できるアメリカンジョークの幅はかなり広がった感じがしますね。例えばヒロインの親友ふたりが「私たち、黒人とゲイだから絶対死ぬよ!」とか言ってるシーンって、メタなんだなって。日本だとこういう台詞って、単純に不謹慎って解釈する人も結構いそうじゃないですか。

福岡 そうそう、表面的にね(笑)。私たちもホラーを楽しむリテラシーを小出部長に引き上げていただきましたね。

ハマ 部員へのホラハラ(ホラー・ハラスメント)教育の成果が出ている(笑)。

小出 ありがとうございます。

ハマ 俺は『ハッピー・デス・デイ』も好きだったんで、前段階から間違いないだろうなと思っていたんですけど、ばっちり期待に応えてくれた作品でしたね。単純に設定とか面白いですけど、下手な監督さんが撮ったら途中で飽きちゃったりすると思うんですよ。

でも、この映画は基本がしっかりしているというか、とにかくテンポが良いし、グロ描写も意外に安っぽくない。ちなみに“剣がしゃべる”みたいなのも何年ぶりに見たんだろうみたいな。あははは。

福岡 剣のプラスチック感がヤバかったよね(笑)。

ハマ 剣がしゃべったり、雲が覆って儀式みたいになるとか、『ハムナプトラ』ぶりに観たっていうか。

レイジ ディズニーっぽい感じがなくもない(笑)。

ハマ あとこの会社(ブラムハウス)好きとしては、“13日の金曜日”までの日にちを出す感じとかね。

小出 “11日の水曜日”から始まるからね。

ハマ そうそう。今回タイムリープものじゃなかったから、時間軸の繰り返しとかは別になかったけど。でも、確実に『ハッピー・デス・デイ』ファンの目線を持ってく演出みたいなのがあって、すごい良かったなって。

小出 噂によると『ハッピー・デス・デイ』の世界観を共有してるらしいよ。

ハマ あ、そうなんだ。スタジオのファンに向けた感じがあるんだろうなって思って、そういう作り方も大好きでしたね。あとさ、こいちゃんにしかわからないこと言うけど、最後は『ジョジョの奇妙な冒険』第三部のディオを倒したあとみたいな雰囲気ですごい面白かった。

小出 あははは!

ハマ めっちゃそうじゃなかったですか?

小出 そうだね。

TEXT BY 森 直人(映画評論家)

過去のホラー映画と並べてさらに深くおしゃべりを進める[後編]に続く

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