松坂桃李主演『あの頃。』をアイドル好きアーティストが観て唸る痺れる!

邦ロック界で一二を争う映画論客とも言われるBase Ball Bearの小出祐介が部長となり、ミュージシャン仲間と映画を観てひたすら語り合うプライベート課外活動連載。

監督は『愛がなんだ』で話題を集めた今泉力哉が務め、先日公開されたばかりの劇場映画『あの頃。』。劇中の主人公のように思春期からハロプロに熱狂してきた小出部長たちは、この映画をどう受け止めたのだろうか。

みんなの映画部 活動第73回[前編]
あの頃。
参加部員:小出祐介(Base Ball Bear)、福岡晃子、ハマ・オカモト(OKAMOTO’S)


原作はミュージシャン、マンガ家、元バンドマネージャー・劔 樹人の自伝的コミック

──『みんなの映画部』、第73回目です。今回はオンライン試写で新作『あの頃。』(2月19日公開)を鑑賞いたしました。ハロプロこと「ハロー!プロジェクト」にかけたアイドルオタクの男たちを描く、松坂桃李さん主演、今泉力哉監督の話題作でございます。

ハマ こいちゃんが爆裂するでしょ、これは。

──ハマくんから予告が入りましたが(笑)。まずは恒例の小出部長からひと言お願いします。

小出 (しみじみと)沁みました……はい。

ハマ 言いたいことがありすぎな感じですね。僕とあっこびんが先に言ったほうがいいんじゃないですか?

福岡 そうだね。私はめちゃくちゃ面白かったです。オタク続きじゃないですか、前回(活動第72回『七人のおたく』)から。でも違うジャンルというか、私が知ってる雰囲気のオタクの話だなと思ったんだけど。アイドルファンの男の人たちの世界っていう。仲間たちがみんなでいつも溜まっているあの部屋、私も行ってみたいなって思いましたよ(笑)。楽しそうで。私、主人公のモデルになっている劔 樹人さん(原作者)のこと知ってるんですよ。

小出 ここに集まってる人は全員知ってるんじゃない?

福岡 初めてちゃんと話をしたシチュエーションがちょっと変わっていて。うちのお父さんが1年ぐらい東京住んでた時があるんですよ。その時にいろんな私の友達とお酒を酌み交わしてたんですけど、そのなかに劔さんもいたの。

ハマ なんで?(笑)。お父さんとも呑んだことがあるんだ。

福岡 そのときにも劔さん、うちのお父さんにアイドルの話してたなって。でも私はもちろん、劔さんはベーシストとしてのバンド活動のほうで知ってるし、神聖かまってちゃんや撃鉄のマネージャーとして何回も会ってるから。

小出 マネージャー時代の劔さんにも会ってるんだ?

福岡 うん。だから『あの頃。』も、やっぱりバンドマンの匂いがずっとどこかにあるなって思いながら。

小出 そうだよね。本作はバンドものでもあるよね。

福岡 そうそう。あとは映画音楽を作ったのが長谷川白紙くんっていう今めちゃくちゃ勢いと才能のある若手の人だから、音楽面の充実もすごく感じた映画でしたね。

小出 なるほど。ハマは?

ハマ 僕も劔さんとは神聖かまってちゃんのマネージャーとして知り合いました。あと僕が4年半スカパー!でやってた『FULL CHORUS』っていう番組に、モーニング娘。をはじめ、ハロー!プロジェクトの面々も結構来てくれてたんですね。その際に劔さんもコメントいただいたりもあって。

あと「ホフディラン 春のベース祭り」というイベントで一緒になったりとか、なにかと絡ませていただく機会が多くて。特に『FULL CHORUS』に関してはご夫婦(劔さんの奥さまはコラムニストの犬山紙子さん)でファンだって言っていただきました。

そんなご縁もあって、僕も劔さんご本人を知ったうえの目線っていうのは当然あったんですけど、単純に、ひとりの男の青春や半生の大切な時間を切り取った映画としても非常に面白かったです。キャストの皆さんも本当に良くて。

小出 素晴らしかったですよね。

ハマ (オタク仲間のひとり、コズミン役の)仲野太賀くんに連絡しちゃいましたよ。純粋に感動しちゃいましたね。とても良い作品でした。

福岡 めちゃくちゃ良かった。

ハマ あと主人公・劔役の松坂桃李さんのベースを弾いている姿も良かったです。ちゃんと体に馴染むように練習されたんだろうなっていう。その努力は、普段弾いてる我々のような人には伝わるじゃないですか。

小出 味あったよね。フォームもとても良かった。

ハマ さっきバンドものでもあるっていう話もあったけど、それもあって本当にグッと来ちゃった。良いもの観たなと。芸がめっちゃ細かいと思う。いわゆるアイドルオタク描写に関しても、きっと相当芸が細かいんだろうなと。

小出 めちゃめちゃ細かいけど、そこは一旦置いといて(笑)。僕の感想としては、前回の『七人のおたく』編でも話しましたけど、やっぱり“すごく好きなものがある”っていうのは、ほんとに人生を豊かにしてくれるんだよね。これがいちばん思ったこと。

映画の冒頭、主人公の劔さんは途方に暮れてたわけですよ。好きでやってるバンド活動がうまく立ち行かず、これからどうしていこうかと。そんなときに、あやや(松浦亜弥)の「♡桃色片想い♡」とミュージックビデオに不意の衝撃を受けて、エンジンがかかる。

ハロヲタの話だと限定して観るだけじゃなく、すべての人に通ずるメッセージだと思うんですよ。なにかひとつ強烈にのめり込んでいる大好きな趣味、大好きなことがある幸せ……それは釣りでもガーデニングでもなんでも良くて。

──かまやつひろしさんの名曲「ゴロワーズを吸ったことがあるかい」の歌詞みたいな世界みたいですね。

小出 “狂ったようにこればこるほど 君は一人の人間として しあわせな道を歩いているだろう”ってね。ほんとに。ただ一個、夢中になっているものがあるおかげで、日々の生活に行き詰まっていても、どうにか踏ん張れましたって人はたくさんいると思うんですよ。そういう経験がある人や、今自分の人生がしんどいって思っている人にも観てもらいたいなって思いました。

福岡 主人公が「♡桃色片想い♡」を聴いて、最初の涙を流すところはグッときた。曲調が明るいだけに、なおさら。

小出 その時、松坂桃李さんの目にあの当時のハロプロのミュージックビデオ御用達のリングライトが瞳に映ってて。これでもう、つかみばっちりと思いました。

福岡 そこまで見てなかったー。

ハマ 小道具系とかも含めて、どういう協力を仰いだんでしょうね?

小出 どうすかね。そこはわからないけど、当時のハロプロがどういう時期だったかみたいなところをざっくり話しましょうか。歴史の背景を。

福岡 お願いします。

ハマ 現代史の授業の始まりです(笑)。

 

劇中での完璧なハロプロ時代考証を小出部長が解説

小出 『あの頃。』のお話は2004年から始まりますけど、当時の松浦亜弥さんは初期の“THE アイドル”っていうフェーズから、だんだん歌手路線にシフトし始めた時期で。劇中冒頭に出てくる「♡桃色片想い♡」は2002年2月リリースだから、実際は少し前の曲なんですよね。

で、2004年のトピックはわかりやすいところだと、モーニング娘。から安倍なつみさんが1月に卒業。続いて辻 希美さんと加護亜依さんのユニット、W(ダブルユー)がデビューする。劇中でもダブルピースしてましたけど。

ハマ 「本体を超えるんじゃないか?」っていうセリフありましたもんね。

小出 そうそう。で、辻・加護は8月に卒業。少し前後しますけど、モーニング娘。の当時の新曲として「Go Girl~恋のヴィクトリー~」(2003年11月リリース)というのがあって。この曲がなんで出たのかっていうと、この頃「芸能人女子フットサル」っていうのがあってね。

ハマ 懐かしい! あったな、それ。

小出 女性タレントさんのフットサルチームがいっぱいあったんだけど、そのなかにモーニング娘。の吉澤ひとみさんや石川梨華さんを中心にアップフロント(芸能プロダクション)のチーム、Gatas Brilhantes H.P.(ガッタス・ブリリャンチス・エイチピー)っていうのがあったのよ。通称「ガッタス」。

ハマ はい、覚えてます。

小出 このチームからの選抜メンバーで「音楽ガッタス」っていう音楽活動もあって。松井 寛さんが何曲かアレンジしててすごくカッコ良いんですけれども。で、劇中で西野くん(若葉竜也)が着てたオレンジのユニフォーム、あれはガッタスのユニフォームなんですよ。

福岡 へ~。

小出 たぶん、サッカー好きじゃなくてガッタス好き(笑)。そして、「Go Girl~恋のヴィクトリー~」のカップリング曲が、オタク仲間たちが組んだユニット「恋愛研究会。」のテーマソングとして使われている「恋ING」。

ハマ あ、「恋ING」はカップリングなんだ。

小出 元々は「恋ING」がA面で、メインになる予定だったらしいんですけどね。いろいろ事情はあるんでしょう。

ハマ フットサルの盛り上がりがあったんでしょうね。

小出 あと、2004年には『愛・地球博』がやってたじゃないですか。

ハマ 森の精・モリゾーとキッコロがイメージキャラクターの。

小出 そう。それに伴った事業イベントが当時いろいろあって、ハロプロも『熱っちぃ地球を冷ますんだっ』ていうイベントをやったりしてたのね。劇中に出てくる部屋にあるいろんなグッズのなかに、その『熱っちぃ地球を冷ますんだっ』から出てきたエコモニ。(石川梨華・道重さゆみによるユニット)のポスターが貼ってあったから、どういう時期なのかっていうのがよくわかるようになってました。

──いわゆる時代考証が完璧ってこと。

小出 そうなります。

TEXT BY 森 直人(映画評論家)

オンライン取材中、私物のハロプログッズを四次元ポケットから出すかのように次々と披露する小出部長。

さらなるハロプロ解説と自身のBerryz工房との出会いを話す[後編](2月23日(火)配信)に続く

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