問題作?松田優作の圧倒的な存在感を20~30代アーティスト3人で観賞した

邦ロック界で一二を争う映画論客とも言われるBase Ball Bearの小出祐介が部長となり、ミュージシャン仲間と映画を観てひたすら語り合うプライベート課外活動連載。

自宅にいながらみんなで映画を楽しむ方法を実践中! それぞれの自宅で「せーの!」で観始めて、終わった直後にオンラインで感想会を展開中。今月は1977年の日本映画界に物議を醸した松田優作出演の奇作(?)『人間の証明』です!

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みんなの映画部 活動第70回[前編]
『人間の証明』
参加部員:小出祐介(Base Ball Bear)、福岡晃子、ハマ・オカモト(OKAMOTO’S)


今は亡き名優・松田優作の姿を20~30代アーティスト3人で観賞

──連載『みんなの映画部』、第70回です。今回はやや久々のあみだくじ方式で作品を選定しました。結果選ばれたのは、1977年公開の日本興行収入ランキング第3位、『人間の証明』(監督:佐藤純彌)です。幾度もテレビドラマ化されている森村誠一のベストセラー小説の、最初の映像化作品ですね。NetflixやAmazonプライムで視聴可能でございます。では、まずは恒例の小出部長からのひと言をお願いいたします。

小出 めちゃくちゃ面白かったでーす。

ハマ えらい淡々と(笑)。連載と共に70回続く、こいちゃんの冒頭の挨拶もいろいろなニュアンスを描くようになってきましたね。

小出 僕は10年ぶりくらいに観た感じだったんですけど、コンプラ的にはいろいろとアウトな……。ただ、まぁ野暮か!

──みんなが生まれてない年の作品ですもんね。

小出 全然生まれてない。年上組の僕とあっこですら、生まれる6年とか7年前ですもんね。

福岡 そうだね。

小出 思えばこれ、角川映画の第2弾ですよね。『犬神家の一族』(1976年/監督:市川崑)に次ぐ作品ですけど、どれだけ当時の角川春樹さん(プロデューサー)がイケイケだったのかっていうのがわかりますけど、原作と映画と音楽による、いわゆるメディアミックスってやつを展開したんですよね。映画のヒットから横溝正史が再ブームにもなったりして。

福岡 なるほど。

小出 その1本目の勢いに乗って作ったのが『人間の証明』。予告を見ると「読んでから観るか? 観てから読むか?」って、いやらしいほど真正面からメディアミックス(笑)。作品的にも景気が良いですよね。ニューヨークまで出向いてカーチェイスしてる(笑)。

ハマ ってことは、松田優作さんはこれが初の角川映画だったんだ?

小出 当時の優作さんは大スターになる直前だったんじゃないかな。

──刑事ドラマ『太陽にほえろ!』のジーパン刑事役でブレイクはしてましたけど(1973年)、映画は『竜馬暗殺』(1974年/監督:黒木和雄)とかシブいのに出ていた頃ですね。『人間の証明』のあとで、『最も危険な遊戯』(1978年/監督:村川透)、角川映画の『蘇る金狼』(1979年/監督:村川透)や『野獣死すべし』(1980年/監督:村川透)などメジャーな主演映画が続くゾーンに入っていく流れです。

ハマ じゃあテレビの『探偵物語』もそのあとなんですね(1979~80年)。だから自分の記憶の優作さんより、まだ味が濃くなかったです。それでもこの役には充分だけど。

福岡 めっちゃカッコ良かったよね!

小出 本当カッコ良い。感覚的にはこの頃の優作さんって、『孤狼の血』(2018年/監督:白石和彌)の大役に抜擢された松坂桃李さんみたいな感じだったなのかなあ。

ハマ 岩城滉一さんもまだ新人っぽくて、すげえ良かったっすね。

福岡 若かったね。甘ったれたお坊っちゃん役がすごい似合ってた(笑)。キャストの豪華さは本当にすごすぎるよね。

小出 岩城滉一さんの父親役が三船敏郎さんだよ。どういうスケールなの(笑)。

ハマ 脇から脇まで目が離せない。個人的には、呑み屋で西条八十の詩(『帽子』という詩。「母さん、僕のあの帽子どうしたでせうね/渓谷へ落としたあの麦藁帽子ですよ」という内容が物語の重要なカギとなる)の話のヒントをくれる、大滝秀治さんと佐藤蛾次郎さんがマジで面白くて。大滝秀治さんは、もう関根勤さんのモノマネのまんまなんですよ。関根さん、うますぎるな! ってめっちゃびっくりした。本物見て、一緒じゃんって。

小出 関根勤さんのモノマネバイアスで、大滝秀治さんを見ちゃうよね(笑)。

ハマ そうそう。ガムテープどこだろ? って探しちゃう。ほっぺの詰め物の切れ目どこだろうっていう。あと、出演クレジットに深作欣二監督の名前もありましたよね? どこにいたか全然わかんなかったけど。

小出 河原でおばあちゃんの遺体があがった時にいた警部補役だね。

──文化人枠のゲスト出演も華々しいんですよね。音楽・映画評論家の今野雄二さんも出ていました。

 

問題のファッションショーシーンでは大野雄二の音楽を楽しむ

ハマ しかしこの頃の日本って豪快というか、国自体がのぼり調子っていうか。今の時代にはない豊さに満ちてますよね。当時の映画人にあったいろんな勢いを感じました。あと話が面白い。

小出 面白いね。

ハマ 話がほんとに、ミステリーとしてきちんと機能してるし。それって当たり前のことかもしれないけど、そういうものってもうあんまり観られなくなってきてるじゃないですか。初期の角川映画って、今観ても素晴らしいものがたくさんありますけど、『人間の証明』も古いとか新しいとか関係ねえんだなって思わせてくれる作品だなって。

小出 話の展開は「さすがに都合良すぎるだろ」とは思うけどね(笑)。あれだけ登場人物が出てきてるのに、全部血の因縁で繋がってくる。

福岡 私、ちょっとやっぱそこには引っかかってたかも。『犬神家の一族』も血や家族の因縁話だけど、あっちはあんまり気になんなかったのに。

小出 でも、その強引さも含めて“見せちゃう”パワーがみなぎってた。気持ちいい力技って感じ。

ハマ 映像の使い方とかもすごいっすよね。序盤のファッションショーのシーンの長さとかびっくりしました。

福岡 たしかにびっくりした(笑)。

小出 マジで長いよね。初見の時、あまりに長すぎて心が折れたもん。

一同 (笑)。

ハマ でも音楽が大野雄二さんですからね。やっぱ超カッケーな! と思いましたよ、改めて。

小出 音楽は最高だよね。すっごい雑な言い方すると、『ルパン三世』のサントラを聴きながら、知らないファッションショーを見てる感じ。

ハマ 無駄に長いファッションショーも、大野雄二ファンなら大丈夫(笑)。今こいちゃんが言ったように、大野さんは『ルパン三世』の音楽を手がけたことで超有名なんですけど、『犬神家の一族』もそうだし、テレビドラマの『大追跡』とか1970年代から80年代にかけての刑事サスペンスのサントラをたくさん手がけられていて、SFアニメ『スペースコブラ』の主題曲もやってる。

ファンクやソウルやジャズの要素を日本の音楽にめちゃめちゃ入れ込んでくれた偉大な超パイオニア。僕みたいなファンは作品知らなくても、大野雄二のクレジット入ってたらレコード買う、みたいな感じです。

ちなみにファッションショーがあまりにも長いんで、ずーっとベースラインとってました、観ながら。あまりにも長いから耳コピしてた、ずっと。

小出 耳コピできるぐらいの時間があった。

福岡 あはは。

ハマ そう。それぐらい見られるから。楽器やってる人はぜひ。

福岡 でも服はシャレてたよね。あのショーだけじゃなく、松田優作さんの格好もめっちゃシャレてたし。

ハマ うん、シャレてましたね。ちょうど今の服って、なんかこの時代のトレンドに回帰してる感じもした。

福岡 音楽も含めておしゃれだったな、全体的に。全部カッコ良かった。

ハマ 超冴えてる時代ですよね。

福岡 うん。

TEXT BY 森 直人(映画評論家)

松田優作の演技・顔力について話した[後編]につづく

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