BLACKPINKが世界的ヒットした理由をNetflixドキュメンタリー映画を観て知る

邦ロック界で一二を争う映画論客とも言われるBase Ball Bearの小出祐介が部長となり、ミュージシャン仲間と映画を観てひたすら語り合うプライベート課外活動連載。

今回は配信がスタートされたばかりのNetflixオリジナル作品、K-POPガールズグループ・BLACKPINKの音楽ドキュメンタリーを観賞。今回もそれぞれの自宅にて「せーの!」で観賞し始めて、直後にオンラインで感想会をやりました。

K-POP好きなメンバーと、そこまでではないメンバー、それぞれの受け止め方やミュージシャンならでは感想をお楽しみください!

 

みんなの映画部 活動第69回[後編]
BLACKPINK ~ライトアップ・ザ・スカイ~
参加部員:小出祐介(Base Ball Bear)、福岡晃子、オカモトレイジ(OKAMOTO’S)、ハマ・オカモト(OKAMOTO’S)


 

プロデューサー兼ソングライター・TEDDYについても話した[前編]はコチラ

 

熾烈で過酷な部分はあえて見せていない優しい視点のドキュメンタリー

レイジ さっきこいちゃんも言ってましたけど、このドキュメンタリーはBLACKPINKの入門編というか、かなりライト層に向けて作ってるなって思います。なぜかって言うと、韓国の芸能事務所のドキュメンタリー番組ってすごいいっぱいあるんですよ。練習生にフォーカスしたサバイバルとか。

それ観てると、かなりエグくて。これマイナスプロモーションにしかなんないんじゃないの? ってぐらい社長がひどいこと言ったりするんですよ(笑)。YGの社長も「うーん、なんかお前ダサい」みたいな。「なんでダサいか自分で考えろ」としか言わない。でも、たしかにそのコメントがいちいち的確なんですよね。

小出 練習生としての生活がシビアな世界だっていうのは、韓国のアイドルを調べてたりするとよく目にする情報ではあるけど、このドキュメンタリーはそこまで見せてないよね。

レイジ 優しい視点で作られてますよね。もっとこの映画を「彼女たちはヘビーな修羅場を潜り抜けて、ようやく華やかな世界にたどり着いたんですよ」っていうふうにも作れたはずなのに、ハードな部分はまったく出していない。

BTSのドキュメンタリーとかでもバックステージを降りた瞬間に気絶して運ばれるとか、きつい場面がバンバン出てくるんですけど、そういうところも全然なかった。もちろん彼女たちの基礎体力が本当にすごくて、ステージ裏でもへばっている姿を実際見せていないのかもしれないけど。

小出 まあ、やっぱりね、このドキュメンタリーはアルバムの発売に合わせたタイミングで出してるからさ。

福岡 プロモーションの一環なのかな。

ハマ たしかに長いプロモーション映像っていう感じがすごいした(笑)。マイナスな意味じゃないんですけど、ドキュメンタリー映画というよりは「特番」。

小出 まさに特番だよね。Netflixドキュメンタリーってこともあるし、世界対応の特別番組を組みましたっていう感じなのかな。BLACKPINKもいよいよ本腰入れて世界へ、っていうタイミング。これまでのグループの歴史をきっちり整理整頓して、わかりやすく紹介するっていうのが作品のテーマだったのかもしれない。

 

BLACKPINKが空けた風穴は、今後はどう展開していくのか?

ハマ そういう意味では今回の作品で、「こんなとこも見せちゃうんだ」みたいな驚きはやっぱり薄いですか?

レイジ 正直、一切ないぐらいな感じじゃないですか。ロゼが作曲してる場面とかは結構珍しかったけど。

──となると、やはり現時点だと日本人はK-POPリテラシーが比較的高いってことになりますかね。アメリカやヨーロッパのファンの人たちには、まずK-POPのプロフェッショナルできらびやかなところから見せたいよねっていう戦略なのか。

小出 欧米諸国にどういう伝え方をするか、っていう部分に関してはまだ模索しているのかもしれませんね。かつてのK-POPはJ-POPの影響も濃かったし、2000年代半ば頃までには日本にかなり進出していたじゃない? 当時も世界進出は狙ってたと思うけど、例えば日本で『紅白歌合戦』まで出てた少女時代も、アメリカ進出は大成功とはいえなかったりもして。2012年にPSYの「江南スタイル」が大ヒットして初めて大きな結果が出た。

その間、例えばワン・ダイレクションみたいなグループが不在だった市場の隙間を狙って、K-POPのダンスボーカルグループが進出して、徐々に広まっていったという印象でしたね。今、日本は海外市場のなかのひとつっていう感じなのかなぁ。このBLACKPINKのドキュメンタリーでも、日本のことは全然出てこないし。

ハマ 出てこないですね(笑)。ファッション誌の表紙がバーって映ってる時に一誌ぐらい見えたかな。

レイジ あと日本に行く準備のシーン。

ハマ たぶん、今ってK-POPにとって世界への風穴が開き始めたタイミングなわけですよね。「K-POPって括るのってなんなの?」みたいなTEDDYさんの発言もあったけど、BTSの「Dynamite」が全部英詞なのもまさしくそうだし。そしてBLACKPINKがまた先頭に立つわけじゃないですか、ここからさらに彼女たちがどうなっていくかによって、シーン全体の様相も全然変わっていくんでしょうね。女性グループではBLACKPINKが今、轍を作ってるというか。

レイジ 唯一無二じゃないですか。ガールズグループであそこまでいってるのは。

ハマ これは自分の感覚なんだけど、BLACKPINKってアイドルっていうふうには全然見えなくて。映画のなかでも「(BLACKPINKは)ガーリーでやってきてない」というメンバーの会話があったじゃない。全然適切な例えじゃないかもしれないけど、デスチャ(デスティニーズ・チャイルド)みたいな感じだと思った。

福岡 わかる。私もそう思った。

ハマ いわゆるみんながワードとして思う“アイドルグループ”みたいなのじゃないよなって。

レイジ “ガールクラッシュ”っていう言葉があるんですよね。異性ウケするスタイルのかわいい系のアイドルじゃなくて、同性の女の子に憧れられるカッコ良い系のジャンルがあって、2NE1(トゥエニィワン)や4minute(フォーミニッツ)がその走りだったんですよ。だからBLACKPINKもその系譜にある。

ハマ なるほど。そう聞くと、思えばNiziU(ニジュー)とかはみんなの思うアイドルって感じですよね、この後どうなっていくかはわかんないけど。今のアイドルは“憧れられる対象”のほうが世界に対しては強いんだろうな。でもその反面、従来のガーリーな路線というか、ある種正統派のアイドルの系譜がどんな風に展開していくのかもすごい気になった。

レイジ BLACKPINKが風穴を開けたことで、ここから先、ガリー系のK-POPアイドルも大きな舞台に行く可能性はあると思います。

ハマ そうだよね。それも楽しみだよね。

小出 ITZY(イッジ)とかもさ、今年の初めぐらいだったっけ、ニューヨーク公演やったの。

レイジ 海外で単独公演やれてるグループは結構いますからね。TWICEもそうですよね。

小出 そうだね。BLACKPINKはそのあたりのグループとどう違うんだろう?

レイジ 単純にK-POPが世界進出し始めてる、第一歩の段階を今俺たちは見てるいて、TWICEらが立つステージがまだ用意されてないだけな気がするんですよね。

小出 なるほどね。

レイジ たまたまコーチェラみたいなアイコニックなフェスにハマったのがBLACKPINKだったという言い方もできる。きゃりーぱみゅぱみゅのかわいい系カルチャーみたいなジャンルの新しい流れも始まっているから、アメリカとかでガーリーフェスみたいなのが浸透していったら、ITZYが立てるステージがそこにあるかもしれないし。そこもアイドル自体のレベルの差っていうよりは、受け止める側がまだないって感じじゃないですかね。

小出 もしかしたらK-POPのガーリー系のブームもあるかもしれない。

レイジ うん、たぶんまだまだ変わっていくと思いますよ。

TEXT BY 森 直人(映画評論家)

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