アートに色は関係ない、音楽も無色だ。アーティスト4人がしびれた、映画『メイキング・オブ・モータウン』

邦ロック界で一二を争う映画論客とも言われるBase Ball Bearの小出祐介が部長となり、ミュージシャン仲間と映画を観てひたすら語り合うプライベート課外活動連載。

今回は現在公開中の音楽ドキュメンタリー映画『メイキング・オブ・モータウン』を4人で観賞しました。最前線で活動するアーティストだからこそ出てくる感想をご堪能ください。

みんなの映画部 活動第68回[後編]
メイキング・オブ・モータウン
参加部員:小出祐介(Base Ball Bear)、福岡晃子、オカモトレイジ(OKAMOTO’S)、ハマ・オカモト(OKAMOTO’S)


 

[前編]では、モータウンファンのハマくんも解説してくれています

秘蔵!マイケル・ジャクソンのオーディション映像も登場

ハマ 秘蔵映像も相当すごかったですね。ジャクソン5での、マイケル・ジャクソン少年のオーディション映像とか。JB(ジェームス・ブラウン)のカバーやってましたね。

レイジ あのモノクロ映像が残っていたのは感動しました。マイケルって、のちにJBと一緒にステージ立って泣いちゃったこともあるんですよ。あれを見ると、やっぱり最初から本当にJBが彼のヒーローだったんだなって。

小出 マーヴィン・ゲイ&タミー・テレルの大名曲「エイント・ノー・マウンテン・ハイ・イナフ」を、ダイアナ・ロスがシュープリームス時代とソロ時代に二度もカバーしてるみたいに、社内カバーが多いんだよね。バージョン違いも多い。

なんでだろうってちょっと不思議に思ってたんだけど、その謎が解けた。最初に出したバージョンがあんまりヒットしなかったりしたら、アレンジとアーティストを替えて、新曲として出しちゃうっていうエピソードも面白かったなあ。

ハマ 「まだあんまりみんな聴いてないからやっちゃえ」みたいなの最高だなって(笑)。

小出 すごいよね、あれ。「早くバージョン作り変えて出しちゃえ」みたいな。

ハマ そう。「絶対次のやつのほうがカッコ良いよ!」みたいな。

レイジ この感じが今のヒップホップのリミックスカルチャーに繋がってるのかもしれないですね。

小出 近いよね、あのスピード感。

レイジ リミックスのほうが有名で、原曲は聴かれてないっていうの結構多いですもんね。

小出 あるよね。モータウンに影響を受けた後進の人たちとして、ヒップホップ畑からはドクター・ドレーも出てきたね。

ハマ コメンテーターの人選も的確な気がしました。最強の名言が出てくるじゃないですか、「アートに色は関係ない、音楽も無色だ」って。あれマジほんとすげえなと思って。

レイジ 社長の発言なんですよね。でも映画のなかで語っているのは、俳優のジェイミー・フォックス。

小出 あれはすごいね。

ハマ あれはほんまもんのパンチラインです。そっちのテンションを俺が持ってるんだったら、完全に“タトゥーで入れる系”の言葉だなと思いました。

福岡 社長が自分で自慢気に言ってないっていうのがカッコ良いよね。影響を受けた側が大切にしている言葉だからこそ、余計に真実味がある。

 

音楽好き、音楽関係者、あらゆる人に観てほしい一作

ハマ 今回のドキュメンタリー映画で肝なのは、ベリー・ゴーディーJr.自身がモータウンのことを振り返って語ったことって、これが初めてなんですよ。評論家が書いたモータウンの本ってたくさんあるんですけど。

小出 評伝はいっぱいあるんだけどね。

ハマ そう。モータウン関連の本だとか、バックミュージシャンにフォーカスを当てた映画が結構前にあって。だからもう出尽くしちゃってるんで、どうするんだろう? って思ったら、結局、会社の中心人物だったベリー・ゴーディーJr.とスモーキー・ロビンソンのふたりが出てきてしゃべりまくる構成になった。まさに真打ち登場って感じで。

右が社長のベリー・ゴーディーJr.、左が盟友のスモーキー・ロビンソン。このおじいちゃんふたりの最高な掛け合いも観どころのひとつ。

小出 やっぱ当事者の話だからさ、今まで読んできたとか観てきたモータウン関連のなかでいちばん頭に入ってきたよ。

ハマ ね。だって俺、これまでの文献とかドキュメンタリーのイメージで、社長のことを勝手にすっげえイヤなやつだと思ってたの。

小出 俺も思ってた。

ハマ でもフタを開けたらえらい陽気で気さくなオッサンで、まるで印象が違う。めちゃめちゃ話上手だし。

レイジ 社長とスモーキー、あのふたりがいまだに本気で仲良さそうなのがすごい。

ハマ それがいちばんグッときますよね。

小出 だって最後、社歌を歌ってるのふたりだけなんだもん(笑)。

ハマ そうそう、偉大なるモータウン物語の大オチがオッサンふたりが歌う社歌(笑)。ちゃんと笑いで落としていたのも良かったです。あといちばんホッとしたのは、H-D-H(ホランド=ドジャー=ホランド)っていう作曲家チームの3人が、みんな元気に生きてんだと思って。個人的に結構テンション上がったんですけど。モータウンにとっては、ソングライターの屋台骨だった彼らが会社を辞めることが大きな曲がり角になったんですよね。

小出 印税問題がね。

ハマ そうそう、印税問題で訴訟みたいな。あのくだりもちゃんと語りつつ、でも映画に出演してくれてる。別に今も憎しみ合ってるわけじゃないんだねって。

小出 俺もそれ意外だった。ケンカ別れしたはずなのに出演してくれるっていうのはさ、本当に音楽で繋がってたんだなって感じてグッときちゃったよ。すごく充実した時期だったんだろうなって。

福岡 “モノ”として欲しくなるね、この映画。お守りみたいに。

レイジ たしかに。俺もモータウンはあんまり詳しくないんですけど、今回の映画をきっかけにちゃんと聴いてみようと思いました。

ハマ それはうれしいですね。モータウンはブラック・ミュージックうんぬんを超えて、ポップスの源流だと言われてますからね。このレーベルが生んだ音楽こそが、今も我々が愛してやまないポップスの大元だっていう。申し分ないんじゃないでしょうか、この映画。すべての音楽が好きな人に観てほしいですね。

TEXT BY 森 直人(映画評論家)

『メイキング・オブ・モータウン』
監督:ベンジャミン・ターナー、ゲイブ・ターナー     
出演:ベリー・ゴーディ、スモーキー・ロビンソン
2019/カラー/5.1ch/アメリカ、イギリス/ビスタ/112分
原題: Hitsville: The Making of Motown/字幕翻訳:石田泰子 監修:林剛 配給:ショウゲート
© 2019 Motown Film Limited. All Rights Reserved.  

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