文句なしの音楽映画!『メイキング・オブ・モータウン』をアーティスト4人で観た

邦ロック界で一二を争う映画論客とも言われるBase Ball Bearの小出祐介が部長となり、ミュージシャン仲間と映画を観てひたすら語り合うプライベート課外活動連載。

今回は現在公開中の音楽ドキュメンタリー映画『メイキング・オブ・モータウン』を4人で観賞しました。最前線で活動するアーティストだからこそ出てくる感想をご堪能ください。

みんなの映画部 活動第68回[前編]
メイキング・オブ・モータウン
参加部員:小出祐介(Base Ball Bear)、福岡晃子、オカモトレイジ(OKAMOTO’S)、ハマ・オカモト(OKAMOTO’S)


モータウンを知らない人でも楽しめる、「音楽最高!」なドキュメンタリー映画

──『みんなの映画部』第68回です。今回は新作ドキュメンタリー映画『メイキング・オブ・モータウン』。今回はオンライン試写という形で観ました。

米デトロイト発、ポップなソウル・ミュージック・ファクトリーというべき偉大な音楽レーベルの創立60周年を記念して作られた作品で、創設者のベリー・ゴーディーJr.と、彼の親友かつモータウンのスターでありソングライターであるスモーキー・ロビンソンを中心に、会社の歴史を語るという逸品でございます。まずは小出部長からのひと言お願いします。

小出 最高でした!

ハマ 最高!

レイジ 最高!

福岡 最高!

小出 音楽最高! って感じでした。

ハマ チャラい(笑)。この軽さが記事でも伝わると良いですね。

──ひょっとすると、若い読者の方々はモータウン自体をあまり詳しくご存じないかもしれない。

ハマ 元々マイケル・ジャクソンが所属していたレーベルです、と言えばそのすごさが伝わりやすいでしょうか。あとスティーヴィー・ワンダーとかね。ちなみに俺はこの映画、観るのは2回目なんですよ。

小出 公式で推薦コメント出してるもんね。

ハマ そうなんですよ。本当に面白いから、これはみんな観たほうが良いよって思って。俺は個人的にモータウンの音楽が大好きなんですけど、マニア視点で観ても、この映画はマジで最高以外の何も言えない。大切なことは全部ちゃんと説明してるし、「言うことなし! おつかれさまでした!」っていう(笑)。本当によく出来てると思う。

小出 もう、もれなく、ハマの言ってること賛成。

ハマ まあ、70年代がちょっと薄いっちゃ薄いんですけど。駆け足の展開だったから。

小出 90年代の衰退した時期とかはカットされてるしね。

ハマ そこはもうごっそり。Boyz Ⅱ Menとかが所属していた頃ですね。でも2時間弱の映画だと、やっぱり黄金期って呼ばれてる67年あたりをメインにするのが歴史の見取り図としても正解だと思うんです。その意味では申し分ないところにフォーカスが当たってる。編集とか音楽の使い方もすごい面白いし、モータウンを知らない人にも親切に作られてることもめっちゃ高評価って感じ。

レイジ すっごいわかりやすいですよね。

ハマ そう。置いていかれないっていうか、全然。

小出 僕はモータウンにすっごく詳しいわけじゃないんですけど、それなりに本を読んだりして知識はあったのね。でも、いまいち掴みきれてないところがあって、それをきちんと補強してくれた感がある。やっぱりモータウンの成り立ちにはデトロイトの土壌が大きかったんだね。社長のベリー・ゴーディーJr.は元々フォード社の自動車工場で働いていて、その生産システムを音楽レーベルに応用したっていう。まさしくデトロイトって街があったから間違いなくできたレーベルなんだなっていうのもよくわかったしさ。

創業者のベリー・ゴーディーJr.。全世界に影響を与えた音楽レーベルについての評論・解説文献は数あれど、本人の口から語られるのはほぼ初めてという。

ハマ 当時の一般の黒人の方で、どこで働く? みたいな流れになったときに、そりゃあ自動車工場でしょ、っていう。モータウンの語源でもある「モーター・タウン」と呼ばれてた“デトロイトあるある”からストーリーが始まったっていうのも、なるべくしてなったという感じですよね。あと健全な会社経営の話でもあって、ミュージシャンやソングライターたちもファミリー内で影響しあって、切磋琢磨してたっていう話も良かったですよね。

小出 みんなが得をするようにね。

ハマ 自分が書いた曲も当然ヒットしてほしいけど、アイツが関わった曲もヒットしてほしい、みたいな。そういうポジティブな創作・生産のサイクルが、少なくとも60年代のモータウンでは機能していた。

小出 この時期のモータウンのレーベルとしての在り方は、本当にひとつの理想だと思ったなあ。商業的に成功しているのはもちろんだけど、養成やしつけの部分まで抜かりなく管理している。

ハマ マナーまで教えてますからね。

福岡 あれ、びっくりした。あと品質管理だっけ。「質では妥協しない」とか「高水準の曲を作らないと会社のイメージダウンになる」とか……あの当時の社内会議が音声で残ってるんだね。

レイジ それを今、ロールモデルにしてるのが、K-POPのレーベルや事務所っぽいなって思いました。

──なるほど。クオリティコントロールを厳密に行って、複数のアーティストでヒット曲をコンスタントに出していくっていうのは、まさに。

ハマ そのためには歌がうまいだけじゃない、「自尊心を高める」みたいな話もありましたね。

小出 あれも良いこと言ってた。

ハマ ねえ。超良い。あそこに目を向けてるのはすごいことだなと思って。

小出 パク・ジニョン(JYPエンターテインメント創業者)も同じこと言ってた。

レイジ 彼は絶対モータウン大好きですよね。会社の本棚に関連書籍とかめっちゃ置いてそう。

ハマ その意味では、つんく♂さんが早い段階で実践してましたよね。秋元 康さんやつんく♂さんって、モータウンのやり方を意識しているのかもなって思う。

 

デトロイトのレコードレベールが世界に様々な影響を与えていく

ミシガン州デトロイトにある一軒家を録音スタジオに改装してスタート。ここへ若き才能が集まり、24時間体制で制作が行われていた。

小出 社会背景の説明も丁寧だったよね。当時、デトロイトは急成長していた都市で、黒人たちが職を求めて集まってたっていうことと、公的な音楽教育も非常に盛んだった、みたいなさ。

レイジ すごく良い場所だったってことですよね。60年代にしては珍しく、人種差別や偏見が少ない街。だからミシシッピーとか、南部にツアーで出て行ったときは本当に怖かったって。

小出 当時のアメリカのディープサウスっていうのは、それこそ『グリーンブック』(2018年/監督:ピーター・ファレリー)でも描かれたような状況。黒人専用の水飲み場なんてのがあることにゾッとしたと言ってたよね。

ハマ まさしくそうですよね。

小出 モータウンの社風って本当に先駆的だったんだよね。性別や肌の色ではなく、その人の“個”を見て雇用していた。

ハマ ブラック・ライヴズ・マター運動が起こっている今だからこそ、モータウンのあり方っていうのはさらに理想的に見える。映画の最後でスティーヴィー・ワンダーとオバマ前大統領が言ってること、そのまんまって感じですよね。結局のところ、今問題になってることって何十年も前からあって、それがいまだに続いてるっていうことが本当に露わになりますね。

小出 2020年の今でも、っていうか今だからこそ学ぶべきことが多すぎる。公民権運動が起こった当時のモータウンの関わりも興味深く描かれてたね。キング牧師がいきなり訪ねてきたとかびっくりした。

ハマ ね。マンガみたいな感じですよね(笑)。

小出 のちにベトナム戦争が起こって、世の中はヒッピーなムードになっていく。映画部でも少し前に『フォレスト・ガンプ/一期一会』(1994年/監督:ロバート・ゼメキス)を観たけど、重なる部分が多かったね。ただ、モータウンは車を作る工程にヒントを得た会社で、まさに“ヒット曲工場”だからさ。露骨な政治的なメッセージからは、むしろ距離を置いていたんだよね。

福岡 社長さんが「うちはラブソングばかり出してるから」って。

小出 そう。でもマーヴィン・ゲイが『ホワッツ・ゴーイン・オン』を出した。ベリー社長は反対していたけど、めっちゃ売れちゃったんで、「やっぱ出しといて良かったわ」ってなるんだけどさ(笑)。スモーキーも『ホワッツ・ゴーイン・オン』を「いちばん大切なアルバム」と語ってたよね。

ハマ 『ホワッツ・ゴーイン・オン』が出た年と、スティーヴィー・ワンダーが自分で作詞作曲プロデュース権を得るのって、同じ1971年なんですよね。そこから単なる“ヒット曲工場”の域では済まなくなって、時代の波でモータウンも変容を余儀なくされていく。

TEXT BY 森 直人(映画評論家)

『メイキング・オブ・モータウン』
監督:ベンジャミン・ターナー、ゲイブ・ターナー     
出演:ベリー・ゴーディ、スモーキー・ロビンソン
2019/カラー/5.1ch/アメリカ、イギリス/ビスタ/112分
原題: Hitsville: The Making of Motown/字幕翻訳:石田泰子 監修:林剛 配給:ショウゲート
© 2019 Motown Film Limited. All Rights Reserved.  

社長の名言にしびれる[後編]へ続く

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