マーベル初心者とマーベルマニアのアーティストが一緒に『アイアンマン』を観たら

邦ロック界で一二を争う映画論客とも言われるBase Ball Bearの小出祐介が部長となり、ミュージシャン仲間と映画を観てひたすら語り合うプライベート課外活動連載。

こんな時期だからこそのみんなで映画を楽しむ方法もある! それぞれの自宅にて「せーの!」で観始めて、終わったらオンラインで感想会。今月はMCUの記念すべき第1作目のあの赤いスーツのスーパーヒーローです!

みんなの映画部 活動第65回[後編]
『アイアンマン』
参加部員:小出祐介(Base Ball Bear)、福岡晃子、オカモトレイジ(OKAMOTO’S)、ハマ・オカモト(OKAMOTO’S)


[前編]『アイアンマン』初観賞だったレイジくんのフレッシュな感想

 

マーベルどん底期から生まれた『アイアンマン』

小出 あっこはどうでしたか?

福岡 最高です。

ハマ あははは。

福岡 マーベルはちょこちょことしか観てないんですけど。でも唯一グッズを持ってるのが『アイアンマン』。USBとiPhoneケース持ってた。

レイジ iPhoneケース、アイアンマンのイメージ強いっす。

福岡 やっぱね、(マーベルのなかでも)これがいちばん好きだなと思った。

ハマ ほんと人気高いっすよね。

小出 『アイアンマン』でこのMCU、インフィニティ・サーガのシリーズが始まったわけだけど、当時、マーベルは崖っぷちだったんだよね。

レイジ へえ。

小出 自社に映画製作部門を作ったこと自体が、起死回生を狙った一手で。90年代にコミックスが売れまくった時期があったんだけど、バブルが弾けて負債を抱えまくってしまったの。MCUの前に、ソニー版の『スパイダーマン』(2002年~2007年)があったじゃない?

ハマ サム・ライミ監督の三部作ね。

小出 特に1と2は大ヒットしたんだけど、実は会社にはお金が全然入ってこなかった。

──人気のあるキャラクターの映画化権は売りきっちゃってたんだよね。X-MENとかスパイダーマンとか。

レイジ 俺がマーベルを真剣に好きだった頃って『デアデビル』とか『エレクトラ』(2005年/監督:ロブ・ボウマン)とかのイメージ強いですもんね。

ハマ 早かったのはそのへんだもんね、意外とね。

小出 でも、鳴かず飛ばずだったよね? 手元に権利がないわけだから、映画スタジオに映画を作らせていたらクオリティが下がっていってしまって、当然、興行収入も落ちていってしまった。

で、収益をすべて会社に入れられるようにしようと映画製作部を設立するために融資を受けるんだけど、担保はマーベルのキャラクターたちだったの。それこそアベンジャーズとかね。失敗してたらマーベルは終わってたかもしれない。

そして、アイアンマンが選ばれることになるんだけど、その理由ってのは子供たちがいちばん興味を示したのが、アイアンマンのフィギュアだったからなんだって。あっこの反応はある意味正解なのよ(笑)。

 

MCUが映画界の常識を変えていくことになる一発目の作品だった

レイジ 今回改めて観て、初めて気づいたディテールとかってありました?

ハマ 俺は最初のトニー・スタークの自宅のカットで、ギターが2本置いてあるっていうのは全然気づいてなくて意外だった。シリーズを通してギター弾く描写なんて一回もないのにギター置いてあるなあって(笑)。

あと一応ミュージシャンうんちくで言うと、『アイアンマン2』のサントラにレイジ・アゲインスト・ザ・マシーンのトム・モレロ(ギタリスト)が参加するんですけど、『アイアンマン』では村を襲ってるシーンで、ふたり目かなんかでぶっ飛ばされるテロリストがトム・モレロらしいです。

福岡 へえー。

ハマ アイアンマンが救いに来て、手でバーンってぶっ飛ばされる、カメオ出演。それがきっかけで『アイアンマン2』のサントラに参加してる。アイアンマンの超ファンらしいですよ、トム・モレロ。

小出 良い話じゃん。あとはあれかな、『ジュラシックパーク』視点(前回の活動参照)で言うと……。

ハマ なにそれ、どういう視点?(笑)

小出 前回話したことと同じく、テン・リングス(テロ組織)のセキュリティが甘すぎる。

ハマ ああ、セキュリティ問題ね。

小出 だってさ、トニー・スタークはいち起業家である前に、ぶち抜けた天才なんだよ? 金持ちでナルシストで、すげえキザでイヤなやつだけど、ぶち抜けた天才だし、カリスマなのよ。その天才が瀕死だからといって、あんなちっちぇ監視カメラで大丈夫なわけないだろ。なめんな(笑)。

ハマ テン・リングス、お金なかったんですかね(笑)。

小出 ただトニー・スタークにとって、テン・リングスに拉致された事件は自分の価値観が決定的に変わる出来事だったわけじゃないですか。兵器を作りまくって、そのおかげで世の中が平和になってるって思い上がっていたのが、蓋を開けてみたら全然真逆のことが起きてた。自分の才能を正しく使おうと思ったんだよね。

いっぽうで、生命の危険にさらされたこの事件が、トニーの心にも傷を負わせてた。このあとのシリーズの話になっちゃうけど、超人がいる、神様がいる、地球外からの脅威と戦ったりもするなかで、恐怖心に苛まれるようになってアーマー依存症にもなってしまう。ついには、強固な防衛システムまで開発するんだけど、これがあらたな脅威にもなってしまって、世界に甚大な被害を起こしてしまうんだよね。

ハマ そうなんですよね。そこが全体のポイントなんですよね。

小出 で、ついには、ヒーローたちを国連の監視下に置こうっていう話まで出てくる。

ハマ そこで「国(公)か、自分(個人)か」という考え方の違いをめぐって、キャップ(キャプテン・アメリカ)と立場が分かれていく。インフィニティ・サーガって、大きくは「トニーとキャップの対立の物語」ですもんね。

小出 そうだね。そして、「トニー・スタークの変化と成長の物語」でもある。

ハマ 『アイアンマン』の話に戻すと、ローズ中佐っていうトニーの友だちがいたでしょ。軍人さん。

レイジ あれがウォーマシンになる人ですよね(『アイアンマン2』以降)。でも俳優が違いましたよね?

ハマ そう。あれは1作目だけの俳優(テレンス・ハワード)。だけど契約上のトラブルかなんかで降りちゃったんだよね。で、次から交替して、ウォーマシンは『アベンジャーズ/エンドゲーム』(2019年/監督:アンソニー・ルッソ、ジョー・ルッソ)まで別の俳優(ドン・チードル)がずっとやってる。

レイジ なるほど。今回のほうがイケメンだったよね。

ハマ そうね(笑)。だからローズ中佐が「俺は何したらいい?」って言って、銀色の初期のアイアンマンのボディスーツだけ見て「ま、次回かな?」って言うところ、あれは続編への伏線なの。

レイジ ってことだよね。だからオメガレッドとかシュマゴラスとかはいつ出てくるのかなって。

ハマ オメガレッド(笑)。

小出 そのへんはあれでしょ、CAPCOMのゲームでしょ。

レイジ そうですそうです。そのへんだけフィギュアとか買ってたんです。

──レイジくん偏ってるね、情報が(笑)。

小出 僕がマーベルに興味を持ったのもCAPCOMのゲームきっかけだもん。『マーヴル・スーパーヒーローズ』とかね。アイアンマンはこれで知った。

レイジ カッコ良いっすよね。俺の手元にあるX-MEN系のマーベルの資料(カプコン格ゲーのカタログ『ALL ABOUT カプコン対戦格闘ゲーム 1987-2000』)とかがギリギリそのシネマティックユニバースが始まる前のやつだから、映画と全然違う。これもめっちゃ面白いですよ(本の表紙をみんなに見せる)。

福岡 わー、すごい!

小出 それ面白そう。

ハマ 「こんな本を待っていた」っていう帯のコピーがすごい(笑)。

レイジ カプコンの格ゲーの本なので、ジョジョ(のゲーム)も載ってるんですよ。

小出 その当時にCAPCOMが開発してたのが『バイオハザード2』だから、バイオハザード2の警察署のロッカーにジョジョって名前が付いたのがあるんですよ。リメイク版の『バイオハザード RE:2』でも再現されてた。これ豆な。

ハマ 久しぶりに生で聞いた「これ豆な」(笑)。ともあれ今回久々に『アイアンマン』を再見できたのは本当良かった。これが壮大なサーガのユニバースの始まりでしたね。

小出 ここから始まってさ、MCUは20本強かけてひとつの大きな物語を語った。

ハマ 『アイアンマン』が終わったっていうかね。「フェーズ3」までのMCUはアイアンマンの話でしたよね。

小出 最後の『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』も『アイアンマン4』みたいなものだった。11年かけてやっていってさ、観てる側みんなの熱量も落ちてくどころかどんどん上がっていったじゃん。『アイアンマン』の頃は、アイアンマンの知名度全然高くなかったからね。

いっぽうではそのあいだに『スター・ウォーズ』が新しく7、8、9と、旧来の「三部作」をやっていて。『スター・ウォーズ』と、ゲームチェンジャーになったMCU。時代が変わった感じがしたよね。

ハマ そうっすね。古いステレオタイプ対ニュージェネレーションみたいな構図になっちゃいましたよね。マーベルは右肩上がりだったけど、『スター・ウォーズ』は元々大ファンの俺ですら、正直自分のなかで右肩下がりだったから。すごい「交代劇」って感じだった。製作側もお客さん側も、新しいジェネレーションが作っていった映画の形がMCUだったんですよね。

TEXT BY 森 直人(映画評論家)

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