コロナに負けない自宅映画活動!『フォレスト・ガンプ』をアーティストみんなで(自宅で)を観た

邦ロック界で一二を争う映画論客とも言われるBase Ball Bearの小出祐介が部長となり、ミュージシャン仲間と映画を観てひたすら語り合うプライベート課外活動連載。

実は観たことなかったあの名作をこのタイミングで。それぞれの自宅で「せーの!」で観始めて、終わったらオンラインで感想会。映画館が休館しても映画はいくらでも楽しめる!

みんなの映画部 活動第63回[前編]
『フォレスト・ガンプ/一期一会』
参加部員:小出祐介(Base Ball Bear)、福岡晃子、オカモトレイジ(OKAMOTO’S)


大ヒット作だけど、実は観たことがない……という映画ありませんか?

──『みんなの映画部』第63回、メンバーそれぞれの自宅からお送りする特別スタイル回でございます。

レイジ はい、全然できます。

福岡 あはは。

小出 問題なしでーす。

──基本は映画館に行く映画部ですが、ご存知のように新型コロナウイルスの感染防止による自粛要請の影響で映画館の灯りが消えている現状です。しかし、映画を楽しむやり方はいくらでもあるぞということで、「せーの!」で映画を観始めて、観終わってすぐみんなでオンライン感想会をやるという趣旨です。

そんななかで観たものは、NetflixやHulu Japan、Amazonプライムなどでも配信されている名作『フォレスト・ガンプ/一期一会』(1994年/監督:ロバート・ゼメキス)です。今回は「大ヒット作だけど実は観てないかも」っていうテーマのもとに、みんなで話し合って決めました。ではまず恒例の小出部長のひと言からいきましょうか。

小出 はい、面白かったです(冷静に)。

福岡 意外と、そういうテンションなんだ。

小出 いや、めっちゃ面白かったですよ。「あ、こういう映画なんだ!」って、いろいろ納得しながら観た感じです。

──っていうか、小出部長がこれを観てなかったっていうのは意外ですね。ロバート・ゼメキス監督、大好きなのに。

小出 そうなんですよ。自分が子供の頃からテレビで何回もやってたんで、逆に「いつでも観られる」感が強すぎてここまで来ちゃった。予備知識は「トム・ハンクスがなんか走るらしい」みたいな(笑)、マジでそれくらいで。

レイジ 個人的には同じトム・ハンクス主演の『グリーンマイル』(1999年/監督:フランク・ダラボン)とカブってて。たしかにテレビでしょっちゅうやってたイメージですね。ただ俺はね、子供の頃一回観てましたね。でも観てるのすら覚えてなかったっすもん。

福岡 今日観て思い出した?

レイジ 主人公のフォレスト・ガンプが最初にダーッと走るシーンで、脚に付けてた補助の器具が外れるシーンがあるじゃないですか。あれとかよく覚えてたんですけど。内容は全然覚えてなかったっすね。でも今回観て、もうめっちゃ面白かったです。最高だなあ、完璧だなあって。でも、じゃあ自分のフェイバリットになるかというと、それは違うかな? って感じ。

福岡 どういう感情よ、それ?(笑)

レイジ 素晴らしいけど、やっぱり名作と言われるだけあって、20世紀の最後のあたりのクラシックというか。これを元ネタにした映画がいっぱい作られていますよね。

──30年ものアメリカの歴史をリアルになぞりながら、それをフィクションの個人史として描いていくのは当時ではフレッシュな作劇でしたね。架空の人物であるフォレスト・ガンプが記録映像とドッキングして、ケネディやニクソンやジョン・レノンらと同じ現場に居合わせている。この“ホラ話”は当時飛躍的に進化していたVFX、CGが可能にさせたもので、映像表現的にもランドマークと位置づけられています。

レイジ ほうほう。今はCMとかでもおなじみの手法ですけど、当時は衝撃だったんですね。ちなみに俺、一個だけ気に食わなかったシーンがあって。後半のパートなんですけど、ガンプが3年もひたすら走り続けるじゃないですか。でもナイキのコルテッツは、絶対そんなに履けない。ソールがすり減って(笑)。

小出 (笑)。

レイジ いや、わかんないけど。アッパーだけ残してソールを何度も張り替えて履いてるのかもしれないけど。ただホラ話にしろ、あれはあざとすぎだなあって感じしましたね。

小出 ちなみに俺、今日は『バック・トゥ・ザ・フューチャー』(1985年/監督:ロバート・ゼメキス)パーカーなんですけど。

福岡 ほんとだ。

レイジ 合わせてきてんなあ。

小出 監督合わせで。やっぱり史実とフィクションをリンクさせるっていうのは、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』でもやってきたことだから、ゼメキスのお家芸みたいなところがあるんだろうなと思いましたね。あと、ナイキのコルテッツは『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のマーティ(マイケル・J・フォックス)も履いてたよね。

レイジ ああ、そっか。たしかにファッションとかはすごい『バック・トゥ・ザ・フューチャー』と共通する感じありましたね。帽子のシルエットも『バック・トゥ・ザ・フューチャー』ぽかった。

福岡 たしかに。

レイジ ってか、俺もたまたまありますよ、今。

小出 2のやつね。

レイジ そうです。全部レンチキュラーになってる。今日は家だからいろいろ出てくる。

福岡 ああ、すごい。私、なんにも持ってないなあ。

小出 (BTTFグッズをドカッと出す)

レイジ めっちゃ出てきた(笑)。なんで? あらかじめ置いといたんですか?

小出 たまたま机の周りに集中してた(笑)。 もったいなくて使ってないけど、『バック・トゥ・ザ・フューチャー』グッズすげえ持ってる(笑)。

 

おうち映画として観るにはめちゃくちゃ良い作品

レイジ 話戻りますけど、『フォレスト・ガンプ』めっちゃ面白かったな。

小出 あははは。

福岡 私も面白かった。っていうか、私は昔観てたんだけどね。今回は私だけ観てた。

レイジ いつ以来ですか?

福岡 20年近く前だったと思う。10代の時以来。

レイジ 覚えてました?

福岡 あんま覚えてなかった、ちゃんと観たら。「あ、こんな話だったっけ?」って。でも今、外出自粛で自宅に籠もっているときに、おうち映画として観るにはめちゃくちゃ良い作品やなと思ったんですけど、私は。

レイジ 実は現代とリンクするところも多かったですよね、デモ隊だったり、未知の病にかかっちゃうとか。

福岡 フォレスト・ガンプがアメリカ大陸をナイキ履いて走ってたとき、マスコミでも話題になって「なぜ走るんですか?」ってレポーターたちが聞くやん。でも「理由はないよ」って。「走りたいから走ってるだけ」。そういうのって今考える時期だから。なんとなく決まってることをずっと毎日自動的にこなしてたけど、本当のところ自分は今何をしたいのか……とか。

その問い直しみたいなことが、いつもの日常の忙しなさから離れて、立ち止まっている今の気分にちょうど合っていたというか。すごく私は面白かったな。昔観たときよりずっと良い映画だったなって思います。

小出 人生のヒントみたいなものが詰まってる映画だよね。「人生はチョコレートの箱。開けてみるまでは中味がわからない」ってあったでしょ、フォレストが自分のお母さん(サリー・フィールド)から教えを受けて大切にしている言葉。このセリフ自体は知ってたけど……映画史上めっちゃ有名なセリフってことでよく聞くやつだから。でも『フォレスト・ガンプ』が出典ってことは正直知らなかった。

福岡 アメリカ映画の名言100選みたいなのに入ってるらしい。さっきちらっと調べたけど。

小出 僕が興味深かったのはね、これってアメリカ近代史とその国のなかに生きてる人の話じゃないですか。しかもアラバマ出身の白人。たぶんフォレスト・ガンプの先祖というか家系は、代々アメリカの南部でプランテーションを営んでた家なんですよね。

レイジ プランテーションってなんですか?

小出 綿花の栽培や加工を営んでいた大規模な農場。黒人たちを召使いにして……つまり奴隷として働かせていた、アメリカ南部の典型的な金持ちの白人家庭だったんじゃないかなと。

──ブルースの根源みたいな風景ですね。

レイジ なるほど。

小出 冒頭でお母さんが言ってるけどさ、フォレストって名前は白人至上主義団体のクー・クラックス・クラン(KKK)の創始者(ネイサン・ベッドフォード・フォレスト)から取ってる。『ブラック・クランズマン』(みんなの映画部 第51回を参照)のときにも出たけど、ここから察するに、ガンプ家って生粋の白人文化家系なわけよ。

一方でお母さんは脚が悪かったフォレストのことを思いやって、「神が公平なら全員に歩行器具をつけさせて」なんてことを言う。我が子に与えられた不平等な運命に痛みを感じつつも、黒人を召使いで雇ったりすることには疑問を抱かず、それが当たり前の文化のなかで生きてきてる。

正直、このエピソードが出てきたときは「この映画、大丈夫かな?」って思ったの。えらく偏った“感動”を見せられるんじゃないかと不安に思った。

──実はその点から『フォレスト・ガンプ』を批判する言説もアメリカ本国などでありますよね。ものすごく白人寄り、右派寄りの歴史観で、アラバマの人種差別や公民権運動の苛烈な史実をほとんど描いていないという。ただ、その批判もあまりに概念的というかカウンター目線すぎるというか。物語の本質は、中道であらゆる対立構造を超えたところにある気がします。

小出 僕もそう思いました。本質はそこじゃない。だってフォレスト・ガンプ自身は肌の色なんてまったく気にしてないんだから。

TEXT BY 森 直人(映画評論家)

ガンプの無垢な存在についてさらに話したくなっちゃう[後編]につづく

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