アカデミー主演女優賞獲得のレネー・ゼルヴィガーにしびれたアーティスト3人。『ジュディ 虹の彼方に』を観てきた

邦ロック界で一二を争う映画論客とも言われるBase Ball Bearの小出祐介が部長となり、ミュージシャン仲間と映画を観てひたすら語り合うプライベート課外活動連載。

今回は映画『ジュディ 虹の彼方』を観賞。3人の評価は賛否が分かれていますが、アーティストの半生を描いた作品だけに、アーティストだからこその仕事哲学にも話が繋がっていきます。

みんなの映画部 活動第62回[後編]
ジュディ 虹の彼方に
参加部員:小出祐介(Base Ball Bear)、世武裕子、オカモトレイジ(OKAMOTO’S)


世武&レイジがどうしてもノリ切れなかった点を話した[前編]はこちら

 

セクシャルマイノリティーを勇気づけたジュディ・ガーランドの生き方

小出 もういっこ、重要なことを付け加えていいですか。ジュディ・ガーランドっていう人はLGBTQのアイコン的な存在なんですよ。レインボーフラッグ(LGBTQ運動のシンボルとなっている性の多様性を表わす旗)ってあるでしょ。あれは『オズの魔法使』のテーマ曲で、ジュディが終生歌い続けた「オーバー・ザ・レインボー」から来てるんで。

世武 それは知らなかった。

小出 彼女が亡くなったのが1969年ですけども、その頃なんか、同性愛への風当たりとかハンパじゃなく強かった時代。

世武 ロンドンのシーンで、劇中のゲイカップルが牢屋に入ってたって言ってたもんね。

──数学者アラン・チューリングの伝記映画『イミテーション・ゲーム/エニグマと天才数学者の秘密』(2014年/監督:モルテン・ティルドゥム)などでも描かれていましたが、かつてイギリスでは1960年代まで同性愛行為が違法とされていましたからね。

小出 そういう時代のなかで性的マイノリティの人たちは、ジュディ・ガーランドの人生に自分を重ねていたらしいんですね。抑圧のなかで戦ってきたのに、自身を制御できなくなって落ちぶれてきてしまった。そんな彼女が「なぜ私は虹の彼方の幸せの国に行けないの?」と歌う……。

だから最後にステージでジュディが「オーバー・ザ・レインボー」を歌おうとしたときに、客席のゲイカップルが立ち上がるシーン……僕はちょっとそこで泣いちゃったっていう。

世武 あの部分って実話なの? ちょっと演出がかっててウワッて思ってしまったんだけど(笑)。実話だったらいいな……。

──実話かもしれないし、フィクションかもしれないし。それは検索しないほうが幸せかも。

レイジ あはは、たしかに。実話と思いこんでおこう。

小出 クサいなっていうのもわかりつつ(笑)、曲の歌詞を考えるとやっぱり泣けるんですよ。ジュディ・ガーランドは自分がずっと歌ってきた“虹の彼方に”まで、まだ行けてないわけじゃないですか。子供の頃から歌ってた「オーバー・ザ・レインボー」……きっと自分にはいろんな人生の可能性があって、まだ見ぬ虹の彼方に行きたいっていうのを歌い続けてた人が、亡くなる半年前でも見つかってないし、まだずっと探し続けてたんだっていうさ。

そしてあのゲイカップルも、きっとここではないどこかを夢見ながら生きている。彼らは全然別の人生を生きながらも、同じ虹の橋を渡ろうとしてるんだなって。

レイジ なるほど。

 

レネー・ゼルヴィガーの鬼気迫る迫真の演技

──最後に祝オスカーの主演女優、レネー・ゼルウィガーの話をして終わりましょう。

レイジ 大竹しのぶさんに見えました。

一同 (笑)

世武 ミュージカル感もあったし、余計そうだよね。これを日本でやるんだったら大竹しのぶさんが主演になりそう。

レイジ たしかに。レネーさんに関してはさっきググって、あ、この人だったんだって。

小出 『ブリジット・ジョーンズの日記』とかは親しみやすい等身大の女性像じゃん。あれからこれはちょっと想像できないね。

世武 ちょっとした目の動きとか、情緒不安定そうな感じとかめっちゃうまかったよね。

レイジ 超リアルでした。

小出 ずっと猫背なんですよね。姿勢でも生活習慣をうかがわせていて、ステージに上がったらめっちゃ遠く見てる目をする。ちょっとイッてるていうか。眼前のお客さんっていうよりかはものすごく遠く見てる感じの目で。まばたきもあんましないで歌ってたり、鬼気迫る迫真の芝居でしたね。

──レネーさんご自身の人生もかなり波瀾万丈ですしね。ジュディと本気でシンクロした彼女の演技が小出部長の言ってた“できちゃう人の悲しさ”をより生々しく表したのかもしれない。肉体も精神もボロボロでとっくに限界なのに、まだショーを続けちゃうという。

小出 できちゃうことっていいだけじゃないんだなぁ。ある人が言ってたんですけど、「奥田民生さんのすごさは“天才なのに安定してる”ってこと」だって。天才はみんな自分の天才性に心身が潰されるところがあるのに、民生さんは大丈夫。天才かつ健全な肉体のポテンシャルがあって。

世武 それは本当の本物だな。民生さんってもちろん曲もすごいんだけど、歌は結局肉体だもんね。

──地頭ならぬ地体が良い。

世武 そういう感じ。それってマジで才能ですよね。自分で選べないから。

小出 メンタルも安定してるのかもしれないですね。

世武 体と繋がってるからね。

小出 声帯とメンタルは本当に密接な関係。昔、ボイトレの先生が「ボイス・トレーニング」じゃなくて「ボイス・セラピー」をやってるって言ってた。心が健やかだと声も自然に出てくるっていう。

レイジ 俺、『Dream Power ジョン・レノン スーパー・ライヴ』でご一緒したときに、民生さんのリハ見たんすよ。マイクの位置こんくらい離して、口の開き方とか小さいのに、くっそ声出てて。超能力かと思うくらい意味わかんなかったっす(笑)。

TEXT BY 森 直人(映画評論家/ライター)

感想会会場への道中。ここで感想を一切話さないのは映画部暗黙のルール。

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