人気アニメ『地獄少女』をあの奇才・白石晃士監督が実写化したので、さっそく白石ファンのアーティストが観てきた

邦ロック界で一二を争う映画論客とも言われるBase Ball Bearの小出祐介が部長となり、ミュージシャン仲間と映画を観てひたすら語り合うプライベート課外活動連載。

『貞子vs伽椰子』『不能犯』など、アクの強い世界観を描く白石晃士監督の最新作を観てきました。この連載で白石晃士監督作を観るのはなんと4回目!

みんなの映画部 活動第58回[前編]
地獄少女
参加部員:小出祐介(Base Ball Bear)、福岡晃子、オカモトレイジ(OKAMOTO’S)


絶妙にイヤな暴力描写がすごくて、その見せ方がセンス良い

──『みんなの映画部』第58回でございます。当映画部が応援する白石晃士監督の最新作『地獄少女』を観てきました。まずは小出部長、恒例のひと言をお願いします。

小出 はい、大好きでした。

全員 (拍手)

──ものすごい力作ですよね。そのぶん、世間一般の目からすると相当“変な映画”に見えるんじゃないかという気もします(笑)。

レイジ それめっちゃわかります。俺らは白石晃士監督の作品が好きだからこそ、過去作もたくさん観ているし、真意がわかって面白いってところ絶対あると思うんですよね。でも、もし白石監督のクレジットや個性に興味のない状態で観てたら、「これいったい何?」「どこ目指してんの?」的な居心地の悪さを感じたかもなって。

福岡 今のレイジの話聞いて、たしかにそうだなと思った。白石監督は好きだし、それありきで、どういうふうにこうしたかったのかなって思いながら観ちゃったところはあって。そういう見方してたからすごい面白かったけど。

レイジ 暴力描写とかもかなりエグかったし。ラインに引っかからない絶妙にイヤな暴力描写がすごくて、そこの見せ方とかさすがセンス良いなって思いました。

小出 考え抜かれてるよね。PG-12におさめたのか、それともおさまったのか、暴力描写の決定的な部分は映んない。でもシチュエーションがすごいイヤだから、最悪の想像力をかき立てるんだよ。めっちゃイヤすぎる切られ方されてるなとか。

レイジ あと蹴りすぎみたいな。そこまで蹴る? みたいな。

──『とんぼ』の長渕剛さん以来の蹴りを観たよ。昭和の人しかわからない例えですが。

レイジ 全然わからない(笑)。

福岡 『地獄少女』って元々テレビアニメでしょ。私はちらっと何話か観ただけやけど、あれって思春期の子が観るアニメって言ったらいいんかな。描写的にはさほどグロくないじゃん。グロくはないけど、ただ「人を憎んで仕返しをしても何も解決しないんだよ」っていう教訓みたいなものが恐怖として刺さるところがあるっていうか。

『学校の怪談』とはまた違う意味で、小中学生くらいの子に向けたアニメかなと思ったんだけど、この映画の場合は年齢対象どれくらいなんやろな? って思いながら観てた。

レイジ やっぱり女子中学生とかじゃないですか?

小出 マンガ版は『なかよし』(講談社)連載です。

福岡 そうなんや。これ、10代の子はどういう感じで観るんだろう。大人が観ると表現の仕方の面白さを楽しめるところはいっぱいあると思うけど。

レイジ こっちは白石監督の独特のやり方を知っちゃってるから、逆にストレートな見方を想像しにくいですね。例えば他の映画で、自分がつまんねーとか思った作品とかも、その監督の作品を全部観たら、全然違う見え方になって急に面白く感じたこともあったので。

小出 まあモノによっては、その監督作を全部観てもやっぱりつまんない場合もあるけどね(笑)。

レイジ それもあります(笑)。逆に言うと、自分が作り手として作品をリリースし続けるのって、ほんとに毎回外せないなって改めて思いました。

 

“白石シネマティックユニバース”の一環として見ることができる

小出 2005年から始まった『地獄少女』のアニメに関しては、僕はかいつまむ程度に観てるだけ。がっつり大ファンってわけではない。

レイジ 人気のアニメなんですか?

小出 人気あるでしょう。うちのドラムの堀之内さんはDVD-BOX持ってるくらい好きだって言ってたし、パチンコやパチスロにもなってるくらいだし。

僕はシリーズとびとびで観てる感じなんですけど、土台に『必殺仕事人』を感じるんですよ。アニメのオープニングも口上から始まって「晴らせぬ恨み、晴らします」って、『必殺』シリーズっぽくってテンション上がるんですけど。

でも、比較してみると同じようで少し違う。『必殺仕事人』の場合は、ひどい仕打ちをした恨みの対象が法で裁かれなかったり、上手く逃げていたりする。で、お金を払って、そいつを仕事人に始末してもらう。

依頼人は、お金を払ったあとは仕事が終わるのを待つのみなんですよね。で、仕事人も仕事人で、自分たちが正義とは思ってはいなくて、ヒーローにならないためにお金をもらってる。ダークヒーローであると。

『地獄少女』の場合は、地獄少女と三藁(使い魔)たちはこの世ならざる存在。ある理由があって責務として、こういう仕事をしている。で、彼女たちを通して誰かを地獄に送った依頼人も、現世はしっかり生きることができるけど、死んだら自分も永遠に地獄に落ちる。恨みを晴らした人間は、ゆくゆくその相手と同じ目に合わなきゃいけないっていう代償を払うんです。

つまり、そこまでして本当に復讐したいのか? それに値するだけの恨みをあなたは抱いているの? っていうところまで考えさせられるんだよね。

──憎しみの負の連鎖について問いかける、すごく真っ当なテーマですよね。

小出 そうなんです。それを毎回30分の一話完結で、ちゃんとひどい話を作ってるのはすごいですよ。

それを今回白石監督がやるっていうんで、僕はむしろ『必殺』寄りになるのかなって想像していて。っていうのも白石監督、『必殺』シリーズフリークなんですよ。

こないだ『ほんとにあった!呪いのビデオ』のイベントをやったときに、白石監督と久々に会ったんだけど、中村義洋監督(活動第23回『残穢【ざんえ】-住んではいけない部屋‐』参照)も時代劇フリークでね、ふたりでDVDの貸し合いっこしてた(笑)。楽屋で「ごめん、あれ今度返すから」「これ観た?」って。

レイジ ただのガチオタっていう(笑)。

小出 ところがフタを開けてみると、『必殺』とは全然違うアプローチ。輪入道(麿赤兒)と骨女(橋本マナミ)が出てくるところとか、シルエットの見せ方とか、随所に『必殺』味はあったと思うけど、むしろ、『地獄少女』の要素を吸い上げて、真っ向勝負で実写映画化してると思った。

そして、何より“白石シネマティックユニバース”の一環として見ることができるっていう側面。前作の『不能犯』(活動第41回参照)もマンガ原作のところに白石監督の作家性を殺さずに乗っけて、「白石印で撮ってます」っていう気概はあったけど、「もっときてくれ!」って思ったりしたじゃない?

でも『地獄少女』は白石シネマティックユニバースに隣接する作品だった。そこに僕はファンとして歓喜したわけ。

──ちなみに白石シネマティックユニバースは別に正式名称ってわけではありませんけども(笑)。

小出 はい、僕が勝手に言い始めた可能性が強いです(笑)。

TEXT BY 森 直人(映画評論家)

いつもは喫茶店での感想会ですが、年末ということで鍋にしました。ちなみに、これを経費で落とせるのか現時点ではまだわかっていません……。

小出部長が“白石シネマティックユニバースを丁寧に解説する[後編]に続く

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