『トイ・ストーリー』シリーズに思い入れがありすぎるアーティストの最新作感想会

邦ロック界で一二を争う映画論客とも言われるBase Ball Bearの小出祐介が部長となり、ミュージシャン仲間と映画を観てひたすら語り合うプライベート課外活動連載。

今回は9年ぶりのシリーズ最新作となった『トイ・ストーリー4』。第一作を幼少期から観ていてひときわ思い入れ強いメンバーたちから賛否が挙がっております。

みんなの映画部 活動第55回[後編]
トイ・ストーリー4
参加部員:小出祐介(Base Ball Bear)、福岡晃子、世武裕子、オカモトレイジ(OKAMOTO’S)、ハマ・オカモト(OKAMOTO’S)


シリーズに思い入れが強すぎて、
今回のオチにとまどっている[前編]はこちらから

『トイ・ストーリー』が過去3作でやってきたことをひっくり返した

小出 僕は今回、『トイ・ストーリー』が過去3作でやってきたことを全部ワッシャーってひっくり返す感じだと思ったんですよ。ウッディが繰り返し言ってるとおり、“おもちゃにとっての幸せってのは何なのか?”って問いが、シリーズを通したひとつのテーマになってる。

『1』で提示されたのは、“持ち主に愛されること”。人間に大切にされることがおもちゃの幸せだと。『2』では、持ち主の子供が大きくなって、いつか忘れられるときが来るっていう、おもちゃたちの不安感が明示される。ちなみに、ウッディが実は、短期間で終了しちゃったアニメの生産数の少ないおもちゃで、大変レアなアイテムだということもわかるんだよね。

世武 そこの自信はあるわけね、本人も。

小出 かもね。とはいえ、いつか持ち主から忘れられるときが来ることを悟っておけよ、っていうのが『2』。

で、『3』ではまた『1』の“おもちゃにとっての幸せっていうのは何なのか?”というテーマが反復される。加えて、焼却所という明確な“おもちゃの最期”も見せる。

アンディも『3』では17歳になり、大学進学を控えて、大学の寮に入ることになってる。もうおもちゃで遊ぶ年齢でもないから、おもちゃは屋根裏部屋に置いていこうっていうことになるんだけど、アンディにとってウッディはやっぱり特別。だからウッディだけは寮に持っていく。他のおもちゃは屋根裏に保管しようと。そこで手違いやすれ違いがあって……。

ハマ そんな大冒険を経て……。

小出 たまたまウッディが、小さな女の子・ボニーの家に1回行くの。今まで何年も遊ばれてなかったから、ボニーと遊んでもらったことで久々に楽しい時間を味わうわけ。

で、いろいろすったもんだがありまして、アンディは最後にどう決断したかというと、おもちゃたちをボニーにあげようってことにするんです。おもちゃは子供に遊んでもらうことが幸せだろうと、アンディも思ったわけですよね。

世武 アンディとボニーはどういう繋がりなの?

小出 ご近所。で、まだ4歳のボニーにアンディは、仲良くしてくれるかい? って、おもちゃ一つひとつを“自分の中の設定も含めて”紹介していくんだよね。

ハマ あれは最高のシーンですよ。

──サヨナラをする前に、もう1回遊んで紹介して。

ハマ ウッディだけは大学にそのまま持っていくつもりだったけど、結局ウッディもボニーにあげちゃう。

小出 迷うんだけど。

世武 へえ~っ、いい話ちゃう?

小出 かつて子供だったアンディがいよいよ大人になって、次世代の子供と一緒に遊ぶっていうね。そのラストシーンのエモさがすごいわけよ。

 

ウッディは『トイ・ストーリー』の理念そのもの

世武 こうやって話を聞くと、本当に『3』までの流れと今回ってだいぶ違うね。例えば『トイ・ストーリー』がおもちゃの世界の話じゃなくて、人間の世界の比喩だと思ったときに、私はウッディのキャラってすごい押しつけがましくてあんまり好きじゃないんですよ。特におもちゃは人間に所有されることがいちばんの幸せっていう考え方とか、「それはお前だけの価値観な。私は違うから」って。

レイジ でもそういうヤツなんですよね、最初から。ウッディって『1』のときは結構イヤなヤツで、“俺がいちばん愛されてる”ってことを鼻にかけるタイプだったし。

世武 もし私がそこのグループに属してたら……。

ハマ 劇中にね、世武っていうおもちゃが出てきたら。

世武 無理だね(笑)。すごい反発すると思う。良い風なことばっか言ってんじゃねえよ! みたいな。

小出 ウッディはさっきも言ったとおり、『トイ・ストーリー』の理念そのもの、つまり持ち主に愛されることがおもちゃにとっての幸せだってことを体現してきたキャラクターだから。

──保守派の体育会系リーダーですよね。

小出 例えば今回の『4』も、ウッディは新しいフォーキーっていうゴミから生まれた新しいキャラクターを、いちばんボニーのお気に入りなんだからって言って、そいつが何回ゴミ箱に飛び込んでも戻そうとするわけじゃない。

今回の劇中でもちょっと言われてたけど、ウッディはすごい運が良かったのもあるんだよ。アンディにあれだけ愛されてたっていう、他のどのおもちゃよりも至極の幸せを知ってるヤツだから。だからこそ、何回でもフォーキーを連れ戻そうとする。“持ち主に愛されていることは最高の幸せだから”っていうのをウッディは伝えたい側なんだと思うんだよね。ところがさ、あの自由人になった彼女、ボー・ピープに再会を果たして……。

世武 そっちに負けてるからね。あっさりそっちについてくわけだから。

小出 葛藤はあったと思うんだけどね。あれだけ、もうボニーの眼中にないわけだから。ただ、今回の終盤の展開を『トイ・ストーリー』でやっちゃうと、ここまでの箱庭の夢が崩れちゃうじゃない?

ハマ そうなんですよねえ。

小出 っていうことは、自由になった“野良おもちゃたち”が世界中にのさばってるってことになるし。

ハマ これはもう『トイ・ストーリー5』でどうにかしてくれないと。

小出 そうなんだよ、早く続きを作ってもらわないと!(笑) 僕は『トイ・ストーリー』って、“A地点からB地点に行って、B地点からA地点に帰るだけだけど、成長・変化はしている”っていう箱庭の世界観も肝だと思ってたから、今回オープンワールドへ出かけていく、いわば“野良おもちゃ化”を許したっていうのは、わざわざ箱庭を壊して、茨の道へ向かったんだなと。最初はほんとにつらかったけど、わざわざこうするのはシリーズとして必要な変化なんだと信じて、『5』を待ちたいなと。

ただ、フォーキーっていうキャラクターは素晴らしいよね。このキャラクターを通して描かれるのは、“物”がおもちゃになる瞬間。フォーキーは正直、見た目はゴミと大差ないのに、ボニーが自分で愛情を込めて作った。彼女にとってはいちばん愛してるおもちゃで。

これは、さっき言った“持ち主に愛されることが、おもちゃにとっての幸せ”ということのさらに根本。“どこからがおもちゃなのか”という領域に触れてますよね。つまり、人がそれに愛着を感じたり、愛情を注いだときにおもちゃになる。そのとき、命が吹き込まれるってことなんじゃないかと。

大量生産ラインに乗せられたおもちゃだって、開発者や職人さんの愛をもとに生まれてくるわけじゃないですか。やっぱり、人の手があっておもちゃが生まれるんだっていうことを感じて、「『トイ・ストーリー』ってすげぇ……」と痺れました。本編最後の“あるセリフ”に、フォーキーが「さあね」って返したのも最高。

世武 子供にいろいろ考えさせる材料はあるよね。だから今回は『トイ・ストーリー』としてのイメージよりも、今、子供たちに人が成長するのはどういうことかを教えたいっていう目的のほうが勝ったんじゃないかな。

過去の『トイ・ストーリー』を守ってほしいのは、25年前から観てたウチら世代以上であって。今の子供たちにはおもちゃのキャラクターを通して、これから生きていくために必要な教訓を説きたかったってこと。

ハマ 完全に次世代系っすよね。ディズニーはそうだもんな、『スター・ウォーズ』にしろ。現代の志向が反映されてんだなって。今回のメッセージは多様性というか、誰かに所有されるだけじゃない自由な生き方もあるよっていう。

レイジ 最後に思ったのは、エンドロールも終わって、ピクサーのロゴが出てきたとに、映画館にいた子供が「エへへ」とか言いながら笑っていて、ああ、これでオッケーだなって。

ハマ たしかに。

小出 僕もそこで、ああ、勝ってんだなって思った。今回も『トイ・ストーリー』の勝ちなんだなって。

福岡 それほんとに思った。

世武 子供たちに「楽しかったー」って思わせたら、それでもう勝ちだよね。今回はレイジくんから、パパの立場で説得力のある言葉が聞けたのが良かったね。

TEXT BY 森 直人(映画評論家)

観賞後、感想会へ向かう部員たち。ここではガチで感想を言わない暗黙のルール。

今回の感想会は、テラス席でハンバーガーを食べながら。長梅雨で前日までずっと雨でしたが、この日は晴天。荒天でおなじみの本連載としては希有。

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