大事なことは全部ミリヤが教えてくれた。女子高生のカリスマが母になってもアラサーに響くワケ

母になった加藤ミリヤの新曲「愛が降る」

今年4月に結婚を公表、先日第一子となる男の子を出産。新しいフェーズに入る加藤ミリヤが、およそ一年ぶりとなる新曲を発表した。楽曲のタイトルは「愛が降る」。

今年9月に迎えるメジャーデビュー15周年に向けての第1弾作品であり、公式ホームページで直筆の歌詞(しかも達筆!)を公開するなどして、リリース前から話題を集めているナンバーだ。

これまで強烈な“愛”を歌ってきたミリヤが、今歌う“愛”はどんなものなのか? これまでのミリヤを紐解きながら、考えていこう。

 

ミリヤの歌にはつねに“愛”が刻まれていた

高校一年生でデビューしたミリヤの初期代表曲といえば「ディア ロンリーガール」だろう。

デビュー間もなく発表されたこの曲で、彼女は子どもと大人の狭間で居場所を探す思春期の心情を見事に代弁。多感な時期にさまざまな葛藤を抱える女子高生にとって、ミリヤのタフネスはとても魅力的で、一本筋の通った何者にもなびかない個性に羨望も集まり、“女子高生のカリスマ”と称された。

3rdシングル「ディア ロンリーガール」(2005年3月24日発売)

干支がひと回りした12年後の2017年には、同曲を再構築した「新約ディアロンリーガール feat. ECD」を発表。

大人になるに連れ、取り巻く環境がいろいろと変わるなかでも、同じ時代をタフに生き抜いてきた同世代に向けて、“孤独愛せるようになれたかな”“飛び立って「うちらの時代」を”と愛のこもったエールを送った。

 

激しい怒りも悲しみも……強い愛がゆえに湧き上がるもの

ラブソングを振り返ってみよう。例えば、彼女が20歳で出した「SAYONARAベイべー」は、曖昧な態度を繰り返す男性とのやりとりをセリフ形式で歌詞にして注目された楽曲。

別れを決意しながら結局言い出せない辛さを題材にしながら、そんな臆病な態度じゃダメだと自分を責める強さや、どこか相手をマウントしようとする姿勢が垣間見えるラブソングだった。

その「SAYONARAベイべー」の続編とも言われた「WHY」は、 “あんたなんか要らない”という強気な歌詞から始まる曲。

なかなか振り向いてくれない身勝手な相手に対して思いを募らせるあまり、「どうして私じゃダメなの?」と詰め寄る場面も出てくる。

 

誰かを愛するってことはひと筋縄ではいかない。だからこそ強くありたい

恋人に恋愛10ヵ条を突きつける女子アンセムだと話題になった「AIAIAI」も強い女性像が全開だ。

この頃の彼女は鼻ピアスを開けたり、ライブでエレキギターを演奏するなど、ビジュアル面やサウンド面でも攻撃的な姿勢を展開。同曲のリリースインタビューでも「女の子が強く見えて、待ってた! という曲にしたかった」と語っていたことを覚えている。

そして、昨年発売したミニアルバムの表題曲「I HATE YOU」は、愛するが故の憎しみがテーマ。続いて発表された最新アルバム『Femme Fatale』では、気鋭のクリエイターを多く迎え、彼女のルーツにあるヒップホップ、R&B、レゲエといったクラブサウンドに再接近し、飽くなき挑戦心を示した。

アルバムに収められた「顔も見たくない feat. JP THE WAVY」では人気上昇中のラッパーJP THE WAVYをフィーチャリング。いけ好かない相手に対して“顔も見たくない”とキツいワードを連呼する。

アルバムタイトル“Femme Fatale”には“男を滅ぼす魔性の女”という意味が多く見受けられるが、ミリヤは「男性の運命を変えるほどの女性」という意味合いでタイトルに冠しており、ひとりの人を愛し抜ける強さ、ひとつの愛を貫ける強い女性をテーマにして作られたアルバムだった。

 

約15年の時を経て、ようやく歌えるようになった「愛が降る」

そんな愛の強さを、これまでにないほどの穏やかな表情で表現したのが今回の新曲「愛が降る」だ。歌詞には彼女が長年温めてきたという自らの母の思いを投影。

デビューアルバム『Rose』に収録された「STAR」という曲で亡き父への思いを歌ったミリヤが、それから約15年を経て自らが母親になった今、最愛のパートナーを亡くした母の気持ちを綴るという、愛の連鎖が強く感じられる一曲となった。

1st アルバム『Rose』(2005年10月26日発売)

美しく透き通ったピアノの音色と、たおやかなストリングスの響きに導かれて始まる「愛が降る」でのミリヤの歌声は、実に優しい。

愛する人が空から見守ってくれている安心感。喪失感を乗り越えた先にあるしなやかな覚悟。届けられないからこそ止めどなくあふれる思慕の念。そうしたものをすべて包み込む柔らかで温かな感情が楽曲のあちらこちらから溢れ出してきて、聴く者の胸をもいっぱいにする涙腺決壊のバラードだ。

 

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MVも透明感に溢れている。今回のビジュアルでは、トレードマークとも言える赤いリップスティックを封印。代わりに、ふと見せる口元には柔らかな笑みがこぼれる。しかし、そこにはこれまでとは異なる趣の強さが感じられることもたしかだ。

デビューした頃から、いつも同世代の代弁者であったミリヤ。10代のときには多感な思春期を生き抜くための強さを与え、20代のときは甘えられなくなった環境を乗り越える逞しさを手引きしてきた。

そんな彼女も30歳を迎え、結婚と出産を経験。人生の新しい扉を開けた彼女は、きっとこれまで以上にリスナーに寄り添う音楽を届けてくれるに違いない。

TEXT BY 猪又 孝

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