『君の名前で僕を呼んで』をチョイス!アーティスト5人が選んだ2018年のベスト映画

バンド界で一二を争う映画論客とも言われるBase Ball Bearの小出祐介が部長となり、ミュージシャン仲間と映画を観てひたすら語り合う課外活動連載。

大晦日から元旦にかけてJ-WAVEで放送されたハマ・オカモトがMCを務める特別番組内での内容を記事化。メンバー各々が2018年のベスト作品を発表し合いました。みんなバラバラ……。

みんなの映画部 特別活動[前編]
「2018年ベストムービー」

参加部員:小出祐介(Base Ball Bear)、福岡晃子、世武裕子、ハマ・オカモト(OKAMOTO’S)、オカモトレイジ(OKAMOTO’S)

2018年はどれくらい映画を観ましたか?

ハマ 2018年のベストムービー発表になりますが、こいちゃんは2018年にどれくらい観ましたか?

小出 56本でした。新作は。

ハマ 世武さんももちろんたくさんの映画を観てると思いますが、劇伴として携わっている作品も、去年はものすごく多かったですよね。

世武 2018年は8本ですね。

ハマ すごいです。

小出 5人ぐらいいないと無理。

ハマ 我々がアルバムを作るということとエネルギー的には同じじゃないですか。サントラだったら曲数だって多いわけですし。

福岡 単純に、そのサントラを作るのに映画を何回ぐらい観るの?

世武 通しは1回、打ち合わせがあったら2回とかかな。

福岡 へえ。それで作るんや。

世武 結構、監督と音楽打ち合わせしてる最中にもう曲書き出したりしてるしね、わりと。脚本に(笑)。

全員 え~、すごい! カッコ良い!

世武 脚本に書くと言ってもカタカナでね。話しながら浮かんできたものを書き留めておくというか。たまにやっぱりこうじゃないなと思う時もあるけど、そのまんま肉付けしていくだけだから、作ってる時間はそんなに長くない。

レイジ 譜面書けるのはカッコ良いなあ。

福岡 プロフェッショナルや。

小出 我々なんか、しょせんバンドマンですよ。型から始めてる。

ハマ ジャカジャ~ンいうてね。

小出 ドンパンドドパンしかない。

ハマ 本当に、言葉にするとヒドイですね。

全員 (笑)。

 

最後にお父さんが諭す。そのシーンが非常に響いた

ハマ では、早速ベストムービーを各々発表していってほしいのですが。毎年恒例と言っていいでしょう。まずは部長がバシっとひとつ選んでいただいて。

小出 毎年恒例なんですけど、相当悩んでて……。良いなあと思った映画がほんとに多くて、ちょっとどうしようかなっていう感じではあるんですけど……ベストは『君の名前で僕を呼んで』。

全員 おおー!

ハマ そこにきましたか。

レイジ めっちゃ意外。

世武 こいちゃんがそこって意外だな。

小出 ですよね。そのぐらい悩んでるってことでもあるんだけど。『君の名前で僕を呼んで』はどう観るかが人によって違う映画なんじゃないかなとは思うんです。あらすじを言うと、1983年夏のイタリアの話なんですけど、17歳のエリオくんっていう大学教授の息子さんちに、オリバーという大学生がアメリカからホームステイみたいな感じで来るんですよ。その同居してるなかで彼らふたりに愛が芽生えて。

僕は、性っていうのを固定的なものではなく、揺れるものとして描いてるのがすごく良いなと思ったんですよね。「男性だから」「女性だから」っていうふうになんとなく捉えている人が多いと思うんですけど、人間は男が100で女が100で、ではないじゃないですか。実はグラデーションなんじゃないかなと。

基本的には異性が好きなんだけど、同性に対しても例えば「カッコ良い」「憧れる」と思うとか。それも滲んでるっていう部分の一個なのかもしれないし。性というものを絶対的なものではなくて、移ろいゆくもの、揺れる、その時の気分でも、日によってもちょっと違う、というものとして捉えているのが良かったです。

あと青春映画的な側面。17歳の男の子なので、性別という意味でも特に揺れてるグラデーションの時期なのかなと思ってるんです。オリバーとの恋愛というのが、彼にとっての通過儀礼のひとつでもあるというか。大人になっていくまでに経験していくことのひとつであって、自分が同性に惹かれたことがあるっていうのを、大人になるにつれて否定したくなっちゃうと思うんです。それをお父さんが諭すんですね、最後に。そのシーンが非常に響いたというか。

ハマ あのシーンの映画、という印象にもなってしまいそうですよね。

小出 お父さんのセリフがもうめちゃめちゃ素晴らしいなと思ってて。映画としても、前半のイタリアの夏のカラっとした真っ青な空というか……。

ハマ 見たことないのテンションで水遊びしてましたよね。

小出 その水と空から始まって、ラストシーンは冬に火を見つめるエリオくんで終わるっていうコントラスト。はじけるように始まって、最後は火を見つめて。自分の内面のメタファーだと思うんですけど、自分の心の中にある火を見つめて彼は大人になっていくだろうっていう描き方。エリオとオリバーが過ごした時間を一緒に体感する、最後一緒に焚火を見つめる、暖炉を見つめる、と流れていく映画的なバイオリズムがすごく好きでしたね。

ハマ 小出部長が選んだベストムービーは……

小出 『君の名前で僕を呼んで』でした。

ハマ 以上、終わりでいいですね。

福岡 毎年これだもん。やりにくいよ、次。

ハマ 次はあっこさん、よろしくお願いします!

 

もう1回バンドマンになりたいと思った

福岡 私も最初に言い訳をさせていただきますと、去年の7月の終わりにチャットモンチーの完結があって、私、前半全然映画を観られてなかったんですよ。だから話題になった映画、『万引き家族』や『リメンバー・ミー』などを観てないんですよ。なので、2018年後半の映画になっちゃいました。

ハマ 追い上げましたか。

福岡 すごい迷ったんやけど、『SOUNDS LIKE SHIT』です。

全員 お~!

小出 そうですか。

レイジ 面白かったっすね。

福岡 面白かったよね~。これね、私、バンドやってない女の子と一緒に観にいったんですけど、全然感想が違かって。

レイジ バンドやってない友達っていうのは、音楽にもさほど興味がない人ですか?

福岡 興味はあってもバンドの世界とは全然違う人で。観たあとに、私はやっぱりもう1回バンドマンになりたいと思った。苦しいけどその先にあるものがやっぱり良いなって思ったけど、その女の子は「バンドマン大変すぎやろ」って(笑)。

ハマ 率直にね(笑)。

福岡 その子は「いや、こんな大変やとは思わんかった」ってズーンとしてて。あ、これは私にしかわからんところも結構あるんやなと。バンドをやり切って終わらせてたから、次にバンドやるっていう気持ちにはなれてなかったんですけど、あの映画観たら、バンドマンもう1回なりたいなって思いましたね。

ハマ 補足として言っておくと、Hi-STANDARDのドキュメンタリー映画です。

福岡 映画としてもすごくよくできてました。

レイジ 全員まともで全員それぞれおかしくなっていっちゃう。

福岡 それが最初から順序立てて説明されていくっていう。胸が苦しくなるときが何度もあるんですけど。

レイジ このタイミングでそれを見せたっていうのがすごいですよね。

福岡 ほんとに。何年かたったらそれを冷静にしゃべれたりするんだと思って。すごいなと思いましたね。もうこれがベストでしたね。バンドで言うと、『ボヘミアン・ラプソディ』も迷ったんですけど、いちばん近しく思って、心が動きました。

小出 なるほど。

ハマ 完結したあとのあっこさんにもう1回バンドやりたいって思わせるというのはすごいと思います。

小出 完結した直後もすごかったです。

福岡 あはは。こいちゃんと一緒にマテリアルクラブの制作をやらせてもらってたんですけど、そんとき私、超ウザいやつやったよな。

小出 ウザくはないけど(笑)、バンドを解散したことがないから解散をする人の気持ちってわかんなかったし、しかも同期でずっと並走してた人がバンドやめたことでからっぽになってた。すぐマテリアルクラブの制作に入らなきゃいけなくて、そこに自分はどう出ていけばいいのかって。

福岡 「出たくない、顔見せたくない」とか言ってた時期もあったしね。

小出 めちゃめちゃ言ってました。

福岡 (トリプルファイヤー・吉田靖直が参加した「閉めた男」で)飲み会をずっとレコーディングしてたときも。

小出 そのしゃべりをエディットしたんですけど、もう福岡さんの酔っぱらい方がハンパなかった(笑)。

全員 あははは。

福岡 変な感じになったよね。

小出 完結直後なんで、変なスイッチが入っちゃって。

福岡 みんな完結は気をつけてほんとに。

TEXT BY M-ON! MUSIC編集部

[後編]
ハマくん、レイジくん、世武さんの
2018年ベストムービー

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