映画『来る』。中島哲也監督最新作に思うところがありまくるアーティストのガチ感想

邦ロック界で一二を争う映画論客とも言われるBase Ball Bearの小出祐介が部長となり、ミュージシャン仲間と映画を観てひたすら語り合うプライベート課外活動連載。

本連載史上最大の物議を醸した『渇き。』から4年。中島哲也監督最新作『来る』に、今やホラー映画通としても知られるようになった小出部長が挑むことになったが……。

みんなの映画部 活動第49回[後編]
『来る』
参加部員:小出祐介(Base Ball Bear)、オカモトレイジ(OKAMOTO’S)


原作を愛する小出部長の哀しみが溢れる[前編]はこちら

ホラーやミステリーをやる気は、最初からなかったのかも知れない

レイジ はっきり言っちゃうと、俺は何が面白かったのかまったくわからなかった……面白くなかったです。

小出 せっかく[前編]で良いところを挙げていったのに(笑)。

レイジ というか、面白さがわからなかったというのが正しいかもしれないです。「これ、話がないじゃん」っていう感じなんですよ。こいちゃんは原作を読み込んでいるから、話そのものはよくわかってますもんね。

小出 うん、頭の中で話を補完できるからね。内容を察した部分が結構あった。でも今日は2回目の観賞で、やっぱり大事なものがなくて、余計なものばっかりがあるなあと思って観てたよ。この印象が『渇き。』とまったく同じ。

やっぱり中島哲也監督の演出の特徴にして最大の問題だと思うのは、画に序列がないということなんですよ。「ここは見せ場だからたくさん見せよう」「キメの画を撮らなきゃ」とか、逆に「ピークに至るまでは派手になりすぎないようにしよう」とかが全然ない。

全部をやりすぎて、全部が並列なんですよ。終盤のお祓いフェスも、本来あそこでカタルシスを感じなきゃいけないんだよね。「え! 何始まるの!?」ってドキドキしたい。でも、そこまでが詰め込みすぎちゃっていて、もうあれくらいじゃ驚かなくなってる。

レイジ 普通のシーンでも怖いライティングのまま、というイメージというか。

小出 音楽も鳴りっぱなしで、すぐ次のBGMと共に場面を転換する。この画の序列のなさとそこから来る語りの抑揚のなさで、恐怖もカタルシスも、原作の持ってるエンタメ度、ミステリーとホラーの面白さを全部ぶち壊しちゃってる。

──結局、どんなに残酷な描写をやろうが「怖くない」んですよね。『渇き。』以上に、今回の『来る』は正直「露悪的な紙芝居」に見えちゃう。ジャンルのマナーとの相性が極端に悪いまま、闇雲にアクセル踏み続けている感じ。

かつての『下妻物語』(2004年)や『嫌われ松子の一生』(2006年)は画の過剰と物語のバランスが絶妙に取れていたと思うし、『告白』(2010年)なんかは「画の序列のなさ」が閉塞した世界観を表すひとつのメッセージになっていたんですけど。

レイジ 『告白』は俺も面白かったと思います。

小出 中島演出とガッチリ噛み合う原作ならすごく効果的なんだとは思うけど、ここ2作は食い合わせが良くなさすぎる。「怖くない」ことの象徴で言えば、『来る』で本当に良くないと思ったのは、血ですね。

レイジ ああ。嘘みたいに血が出すぎでしたよね。

小出 血がいっぱい出てきたところで、「はいはい、血ね」って思ったというか。怖さも痛みもない。やっぱり画の序列のなさが、「血がいっぱい出ておぞましい」に導けてない。

ホラーって、すべての映画ジャンルのなかでも機微がないといけないじゃないですか。こないだ公開された『ヘレディタリー/継承』(2018年/監督:アリ・アスター)なんか素晴らしかった。「もうこれ以上いやなこと起きないでくれ〜!」って願いながら観たよ。

レイジ 若干似たような物語でしたよね。『ヘレディタリー/継承』と。

小出 呪いという点でね。

レイジ だからそういう感じの話なのかなとか、輪廻的なことなのかなと思いながら観てましたけど、何もなかったし、伝わってこなかったっすね。そういう話、俺はわりと汲み取れるほうだと思うんですけど。

小出 ホラーやミステリーをやる気は、最初からなかったのかも知れないね。

 

「比嘉姉妹シリーズ」を松さんと小松さんの真琴で観たい

レイジ あの偽イクメンの秀樹(妻夫木聡)が書いてる育児ブログは原作にもあるんですか?

小出 あります。

レイジ なんか風刺も入ってるのかなという感じがしましたけどね。奥さん(黒木華)や子供が大変なことになっている時も、自分はへらへらブログを書いてる。

──ネグレクト(児童虐待、育児放棄)の風刺に関しても非常に惜しい気がしましたね。秀樹も「いるいる」系の男だし、黒木華さんが追い詰められていく展開も切迫感あるんだけど、描写が定型的すぎてわかりやすい戯画に流れちゃってる。

レイジ 役柄というか芝居として、妻夫木さんはハマっていたとは思うんです。だけどアイツの薄っぺらさだったり、実は周りから嫌われている感じが第一章からもう見えすぎていて。

小出 そうだね。本当は第二章で初めて見えなきゃいけないんだけど。

レイジ 一見優しくて素敵なパパ。だけどフタを開けたらこんなやつだった、っていうほうが面白かったし、生っぽいリアリティを感じられたと思って。

小出 原作はちゃんとそうなってるの(笑)。設定っていう意味での脚色はさっき(前編)言った通りうまくいってると思うんですけど、描写の話になってくると「こうしちゃったかー」と思ってしまう。キャラクター自体は良かったから、「比嘉姉妹シリーズ」を松さんの琴子と小松さんの真琴で観たい気持ちは湧きましたよ。

次の『ずうのめ人形』とか、『ぼぎわんが、来る』以上に話の積み立てが難しいかもしれないけど、ラストはより壮絶で派手だから、巧く映画化すれば、スクリーン映えすると思うなぁ。

レイジ 面白そう~。めっちゃ原作を読みたい気持ちになりました。

TEXT BY 森 直人(映画評論家/ライター)

小出部長が現場に持ってきた原作。すべて初版という敬愛っぷり。記事上では割愛しましたが、各巻の楽しさをレイジくんにしっかり解説していました。


お知らせ

我が『みんなの映画部』メンバーであるハマ・オカモトがMCを務めるJ-WAVEの年越しスペシャル番組のなかで「みんなの映画部[ラジオ版]」を放送予定。小出祐介、福岡晃子、世武裕子、ハマ・オカモト、オカモトレイジの全部員が集合して、2018年の映画部活動を総決算します。

『J-WAVE YEAR END & NEW YEAR SPECIAL TIME FOR MUSIC』
12/31(月)23:00~27:00

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