BTS騒動をどう捉えるか。『ミュージックステーション』定点観測コラム(11月分)

知らない人はいないであろう音楽番組『ミュージックステーション』を、音楽ブロガー・レジーが定点観測する連載コラム「月刊 レジーのMステ定点観測」。

[前編]では椎名林檎と宮本浩次のコラボの模様についてお届けしましたが、[後編]は三者三様の転機を迎えたアイドルグループの話題からどうぞ。

 

乃木坂46、AKB48、NMB48:それぞれの転機のなかで

11月のMステでは、48/46のグループの面々が様々な形で転機を迎えました。ここではその模様をお届けします。

2日の放送に登場したNMB48は、この日が大エースとしてグループを牽引してきた山本 彩の最後のMステ出演となりました。

山本から残されたメンバーへのメッセージがあるなど感動的なステージではありましたが、歌われる曲目がNMB48ではなくAKB48としての楽曲である「365日の紙飛行機」だったこと(山本がAKB48としてセンターを務めた曲です)にも象徴されるように、グループとしてこれまで何を蓄積してきてこの先どんなことを見せていくのか? という部分については課題が山積みです。

NGT48やSTU48といった後続グループが元気ななかで、次のフェーズに向けてどんなビジョンを示してくれるのでしょうか。

9日のMステで「帰り道は遠回りしたくなる」を披露した乃木坂46。グループ内でトップクラスの人気を誇る西野七瀬と、西野と同じく一期生としてグループを支えてきた若月佑美のラストシングルとなります。

疾走感と清潔感のあるエレクトロサウンドという乃木坂印として固まってきたフォーマットのこの曲は、大サビからラストにかけての西野をひとり押し出す形のフォーメーションが印象的です。

今年は乃木坂46にとっては生駒里奈と西野七瀬というグループの顔ともいうべき存在がふたりも卒業を発表するという激動の1年となりました。2019年から新章幕開けという感じでしょうか。

30日のMステに出演したAKB48は新曲「NO WAY MAN」を披露。この夏放送されていた日韓合同のオーディション番組「PRODUCE48」で活躍した面々が多数選抜入りし、そのオーディションを経て結成されたアイドルグループ「IZ*ONE」に参加することとなった宮脇咲良、矢吹奈子、本田仁美の3人がフロントを務めるこの曲ですが(AKB48としての活動をしばらく休止する3人の壮行シングルという位置づけでもあります)、その3人がIZ*ONEの活動のため不在ということで、この日はチーム8の横山結衣(総監督の横山由依と微妙に漢字が違います)がそのダンス力を買われてセンターに抜擢されました。

彼女のパフォーマンス自体は非常に堂々としたものでしたが、韓国のファンからも注目が高まるタイミングで「グループ最高難度」というあまりにも内向きな訴求ポイントを打ち出すというやり方には大いに疑問を感じます。

グローバルなトレンドを意識しつつユニークな魅力を提示する楽曲「La Vie en Rose」を発表したIZ*ONEに比べると、時流からずれたEDM風のサウンドの「NO WAY MAN」に対しては48ファンとして残念という気持ちにならざるを得ません。グループとしてのあらたな基軸を獲得するにはまだまだ時間がかかりそうです。

 

BTS(防弾少年団)出演見送り。音楽好きとして騒動をどう捉えるか

ここまで取り上げた以外にも、KICK THE CAN CREWと岡村靖幸のコラボ、あいみょんやOfficial髭男dismといった新鋭の出演など、見どころの多かった11月のMステ。一方で、9日の放送に登場予定だったBTS(防弾少年団)が急遽出演を取り下げるという「アーティストのパフォーマンス以外」の話題で大きく注目された1ヵ月でもありました。

番組サイドからこの出演キャンセルに関して発表された理由は、「以前にメンバーが着用されていたTシャツのデザインが波紋を呼んでいると一部で報道されており、番組としてその着用の意図をお尋ねするなど、所属レコード会社と協議を進めてまいりましたが、当社として総合的に判断した結果、残念ながら今回はご出演を見送ることとなりました」とのこと。

もちろん、この“Tシャツのデザイン”は決して気持ちの良いものではありませんでしたし、その不快な思いをBTSの出演を決めた番組側にぶつけたくなる人がいるというのもわからなくはありません。

ただ、ビルボード1位を獲得して国連でもスピーチを行うなど世界的なスターにのし上がっている最中のBTSのパフォーマンスを見る機会が“音楽とは直接関係のない、極めて政治性の高い話題”によって失われてしまったというのは非常に残念なことのように思います。

日本と韓国の間に様々な歴史問題が横たわっているのは周知の事実ですが、最近のポップミュージックの世界に限れば、TWICEに日本人が参加したり、前述のとおり日韓合同のアイドルグループIZ*ONEが立ち上がったりと、いろいろな形で交流が進んでいます。

また、BTSに限らず複数のグループが世界的に注目を浴びているK-POPのシーンは、グローバルな観点で言えば日本の先を行っている存在です(これは紛れもない事実だと思います)。

韓国から学ぶべきところがたくさんある、そしてそういう動きに繋がるパイプもできつつある状況にもかかわらず、今後もこういう形で分断を招くような出来事が起きかねない空気が蔓延しているのは音楽ファンとしてはなかなかしんどいなという気持ちです。

二国間の関係性、双方に対する国民感情というものは、ポップカルチャーだけで解決できるものではありません。ただ、韓国と切磋琢磨しながらともにクオリティを上げていく(そして足りない部分を学ぶ)という関係性を、せめて音楽シーンのなかだけでもちゃんと作れるようになってほしいと願わずにはいられません。

2018年のMステも残すところあと1回。恒例のスーパーライブが12月21日に放送されますので、次回はその模様についてお届けしたいと思います。それでは来月もよろしくお願いいたします!

TEXT BY レジー(音楽ブロガー/ライター)

 

【2018年11月2日放送分 出演アーティスト】
DA PUMP「U.S.A.」
Kis-My-Ft2「君、僕。」
平井 堅「half of me」
藍井エイル「アイリス」
GENERATIONS from EXILE TRIBE「少年」
DA PUMP「if… 」
平井 堅「楽園」
高嶋ちさ子「Live And Let Die(007 死ぬのは奴らだ)」
NMB48「僕だって泣いちゃうよ」「365日の紙飛行機」

【2018年11月9日放送分 出演アーティスト】
乃木坂46「帰り道は遠回りしたくなる」
桐谷健太「お家をつくろう」
関ジャニ∞「ここに」
KICK THE CAN CREW feat. 岡村靖幸「住所」
あいみょん「今夜このまま」
椎名林檎と宮本浩次「獣ゆく細道」

【2018年11月23日放送分 出演アーティスト】
Hey! Say! JUMP「BANGER NIGHT」
西野カナ「Bedtime Story」
JUJU「My Favorite Things」
SEKAI NO OWARI「イルミネーション」
ゆず「マボロシ」
THE YELLOW MONKEY「天道虫」

【2018年11月30日放送分 出演アーティスト】
Sexy Zone「すっぴんKISS」「カラクリだらけのテンダネス」
AKB48「NO WAY MAN」
絢香「あいことば」
Official髭男dism「Stand By You」
コブクロ「晴々」
DAIGO「もっと強く抱きしめたなら」
絢香「糸」
コブクロ「サイレントマジョリティー」
東京スカパラダイスオーケストラ feat.宮本浩次「明日以外すべて燃やせ」

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