村上佳佑いわく、生まれた時から“神に近い存在”だったクイーンに親近感を抱いた瞬間

上映と共に注目を集める、クイーンを描いた映画『ボヘミアン・ラプソディ』。リアルタイムでクイーンを知らない世代にクイーンはどう見えるのか? カラーの違うアーティスト3組に映画を観賞してもらい、それぞれの目線で思いのままに意見してもらった特別インタビュー。

【映画『ボヘミアン・ラプソディ』インタビュー】
村上佳佑

リアルタイムでクイーンを知らない世代が映画『ボヘミアン・ラプソディ』を観て何を感じるのか? この特別インタビューにシンガーソングライターの村上佳佑が参加。フレディ・マーキュリーが亡くなった頃、生まれたばかりだったという村上はフロントマンであるフレディを中心に本作を語り始める。


息苦しくなればなるほど、心は熱くなる作品

中学生の頃に初めてクイーンを聴いたんですけど、あの時感じた「この人たち天才だ!」という感情が甦りました。

それと同時に息苦しさもあって……曲がりなりにも僕はアーティストとして活動させてもらっていて、自分と重ねて観るシーンが多かったんですよね。そうすると、「僕はクイーンと同じ状況に立たされたとき頑張れただろうか?」「僕だったらこんなふうに思えただろうか?」とか、つねに自分の心の内側をザワザワザワッとかき乱されて。

でも、そのザワザワザワッていう感じが嫌じゃないんですよね、息苦しいけど(笑)。息苦しくなればなるほど、心は熱くなる。不思議な感覚でした。

フレディ・マーキュリーというフロントマンの放つオーラ……死してなお、音楽や映像を通して、こんなにも訴えかけてくるわけですから。ここまで自分を貫けるっていうのはすごいと思うんですよ。

ただ生活していくなかでも、自分を貫くって容易ではないじゃないですか。特に自分自身をマイノリティだと感じてしまっている場合だと。いちアーティストとしてもそうですし、ひとりの人間としても勇気をもらいました。

神に近い存在のクイーンが見せた、感情の起伏と覚悟

年齢的に、クイーンを知った時にはすでに“伝説的なバンド”だったので、何段階か上にいる、ちょっと神に近いようなアーティストだったんですけど、映像を通して「この人たちも人間だったんだ」ってちょっと安心しました(笑)。

恐怖もあれば緊張もするし、感情が揺れ動くぶん感動も当然するっていう“当たり前”を垣間見れた。例えば、初めてお客さんが一緒に歌ってくれたシーンの映像を観た時は、こんなふうにクイーンも感動してたんだな、って親近感を抱きました。

いちばん衝撃だったのは、『ライヴ・エイド』を控えたバンドリハの時にフレディの声が出ない、そもそも調子が良くない描写があったじゃないですか。あのシーンにちょっとびっくりしました。フレディ・マーキュリーっていつでもあの声が出せるイメージだったので。

でも、やっぱり人前に立つと最高のパフォーマンスをやってのけた。エイズを宣告され、空白の期間があったバンドが再始動するステージで、文字通り決死の覚悟に近いものがあの時のフレディにはあったのかなって。その覚悟があったからフレディには不安はなかった……命に変えてでも声を出す、歌ってみせるという、魂を削るレベルの覚悟で挑んだんじゃないのかなって考えちゃいますね。

愛情の渇望。まわりの愛情を上回る、フレディの孤独との闘い

昔、父に「将来どんな仕事やりたいの?」って聞かれた時に「有名になりたい!」って答えたんですよ。なぜかって言うと、ただ寂しかったからなんですよね。

家族からもちゃんと愛されていたと思うし、まわりも僕のことを大切に思ってくれていたんですけど、それでもすごく寂しいと思う瞬間があって。

僕のことをみんなに知ってもらって、愛してほしいって。その手段が音楽だったんですよね、もちろん歌うことが好きだったのもありますけど。

村上佳佑がいた、という生きた証が欲しいと言いますか。誰かに知ってもらえている間は、その人の記憶に残るから僕は死なないじゃないですか。そうなりたいですね。今はまだまだ未熟でほど遠いんですが、世界的な歌い手になって、ひとりでも多くの人の心に残りたいです。

それに近いものを映画『ボヘミアン・ラプソディ』で描かれるフレディに強く感じましたね。フレディのまわりにもちゃんと彼のことを見ている仲間はいたわけじゃないですか。

でも、それすらわからなくなってしまうほど孤独に襲われることがあって……表現者ってより孤独を強く感じてしまう生きものですけど、そうじゃなくても共感できると思うんですよね。誰しもが経験したことのある孤独に人一倍敏感だったのが、フレディなんじゃないかと。

自分の声、自分の姿で、世界を変える

やっぱり、自分が歌い手なのでどうしてもフレディばかりに目が行ってしまいがちなんですけど、彼の歌い方って演説みたいなんですよね。

自然と声のするほうに引き寄せられて、聴き入ってしまう。で、次の瞬間、フレディと一緒に拳を突き上げてしまう……教祖に近いようなパワーがありますよね、間違いなくカリスマ性を持った人だなと。

今回映画で描かれている1985年前後って大衆に向かって隔たりなくメッセージが届けられたのはアーティストだと思うんですよね、政治家ではなく。

しかも、フレディが訴えかけた「俺がいつか世界を変えてやるんだ」というメッセージは、彼のような境遇だからこそ発信できたメッセージだと思うし、自然と説得力も歌に滲み出ていたと思うんですよ。人の心にぐっと入っていく、言葉の強さや重みをまざまざと見せつけられましたね。

あと、この映画で可能性を自分自身で潰してはいけないってことを強く感じました。僕はなめらかな声質なんですけど、ハスキーな歌声にものすごく憧れがあって。マイケル・ジャクソンもジェームス・ブラウンも、フレディ・マーキュリーもそう。

色っぽい歌をうたう人ってちょっとハスキーなんですよね。だから、そういう声に憧れて試行錯誤してみたんですけど……僕はハスキーな声にはなれないんだと諦めていたけど、フレディを観ていたら、もうちょっと自分の声と向き合ってハスキーにならないにしても、限界までやれることはあるんじゃないかって気づかされました。自分のボーカル力に僕自身が見切りをつけることなく、突き詰めてもいいのかなって。

彼はピアノも弾けますが、何かを伝えようとはしてなくて。やっぱり彼のステージに立つ姿と、その歌声でメッセージを叫び続けてたんで。

僕ももっと自分の声で、自分の姿で、もしかしたらできるのかなって思いました。そうなりたいなと思いました、改めて。

クイーンの4人が見た景色を共に見たくなる

実は、僕がアカペラグループ(A-Z)で活動していた時に、映画のエンディングでも流れていた「Don’t Stop Me Now」をカバーしたことがあって。

その時に「どうしてこんな曲が書けるんだろう」って、当時のアカペラメンバーともよく話てたんですけど、「天才なんだよね」ってひと言で落ち着くという(笑)。そうとしか結論づけれないというか。でも、こうやって改めて彼らの音楽と対峙してみると、もっとちゃんと聴きたくなりましたね。

どんな時代を彼らが生きて、どういう音楽で生きていたのかを改めて知りたくもなりました。彼らの場合、これだけ世界的に有名なバンドになったから、良くも悪くも本人に直接聞かない限り事実かどうか怪しい話もたくさんあったりするわけじゃないですか。それでも、音楽を聴くことで、感じ取れるものがあると思うんですよ。

だって、音楽だけは事実じゃないですか。あの時代にクイーンが観たもの、聴いたもの、感じたもの、想ったこと……それらが詰め込まれたものだから、彼らを知るためにも改めて聴きたいですね。

INTERVIEW & TEXT BY ジャガー


映画情報

『ボヘミアン・ラプソディ』
大ヒット上映中
監督:ブライアン・シンガー
製作:グレアム・キング/ジム・ビーチ
音楽総指揮:ブライアン・メイ(クイーン/ギター)/ロジャー・テイラー(クイーン/ドラマー)
出演:ラミ・マレック/ジョセフ・マッゼロ/ベン・ハーディ/グウィリム・リー/ルーシー・ボイントン/マイク・マイヤーズ/アレン・リーチ
配給:20世紀フォックス映画
(C)2018 Twentieth Century Fox

映画『ボヘミアン・ラプソディ』OFFICIAL WEBSITE


プロフィール

ムラカミケイスケ/静岡県出身、1989年12月8日生まれ。小学1年生から幼少期の5年間をアメリカ・ジョージア州アトランタにて過ごす。立命館大学に入学し、アカペラグループ「A-Z(アズ)」を結成。2011年のグループ解散後はソロに転じ、今回リリースしたミニアルバム『まもりたい』でメジャーデビュー。

村上佳佑 OFFICIAL WEBSITE


リリース情報

2018.11.14 ON SALE
ALBUM『Circle』
EMI Records

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この記事を書いた人

  • ジャガー

    ジャガー

    「M-ON! MUSIC」の編集/ライター/小言を言う係。音楽フリーペーパー「music UP's(現okmusic UP's)」の編集を経て、音楽雑誌「ワッツイン」へ。前身サイト「DAILY MUSIC」 への参加をきっかけにWEBの人になりました。