やっぱり泣かされてた?アーティストが語る映画『ボヘミアン・ラプソディ』

邦ロック界で一二を争う映画論客とも言われるBase Ball Bearの小出祐介が部長となり、ミュージシャン仲間と映画を観てひたすら語り合うプライベート課外活動連載。
音楽映画に対して人一倍敏感に反応するアーティストたちが、『ボヘミアン・ラプソディ』を観たら……。予想以上に楽しんだようで、テンション高めに感想会がスタート。

みんなの映画部 活動第48回[後編]
『ボヘミアン・ラプソディ』
参加部員:小出祐介(Base Ball Bear)、福岡晃子、ハマ・オカモト(OKAMOTO’S)、オカモトレイジ(OKAMOTO’S)

小出部長とハマの音楽オタぶりが全開な[前編]

フレディ・マーキュリーのセクシュアリティの問題が慎重に描かれていた

福岡 『ライヴ・エイド』の時って、もうフレディ・マーキュリーは自分がHIVに感染していることを知っていたってことだよね。

レイジ ここからどのくらいで亡くなっちゃうんですか。

小出 1991年に死去だから、6年後ですね。

ハマ HIVのことを世間が知るきっかけになったくらいの感じじゃないですか、フレディの死が。

──1991年だと、ちょうどその頃にロサンゼルス・レイカーズのマジック・ジョンソン(当時、プロバスケットボールの選手)もHIV感染を自ら公表して話題になりました。

ハマ マジック・ジョンソンもそうですね。

小出 この映画では、フレディ・マーキュリーのセクシュアリティの問題が慎重に、だけどしっかり描かれてましたね。自分のセクシュアリティに関して、徐々に自覚していく段階とか。実際ずっと謎で、メンバーにも明言したのはずいぶんあとのことなんだってね。

レイジ そうなんですね。

小出 LGBTに関して文化的に今ほど成熟していなかった時代だったっていうのもあるだろうけど、メンバーはそれを超えた信頼関係にあった、と。

福岡 そのへんのフレディの葛藤が神秘的な感じで描かれてたよね。私はそこも好きやったな。恋愛絡みの描写が美しかった。

──ちなみに監督のブライアン・シンガーは『X-MEN』シリーズなどで有名な人ですけど、数年前にバイセクシュアルであることを公表しています。映画では若き日のフレディが奥さんのメアリーと出会うシーンも印象的ですね。BIBAってブランドのショップに勤めていた女の子っていう。

小出 そこでクリームの「サンシャイン・オブ・ユア・ラブ」(1967年の名曲)が流れる。

ハマ 当時リアルにああいうお洒落なブティックで流れていたんだろうなと感じました。あの使い方は良かったですよね。

小出 テンション上がるよね。この映画、章が変わるごとにその時代を象徴する曲が流れるわけ。そのあとのタイミングで流れる時々の曲でもう1個良いと思ったのが、フレディがパーティーで頭パッカーンってなっちゃった時。

ハマ 「スーパー・フリーク」!

レイジ ああ、ラリパッパだった時!

小出 そうそう。リック・ジェームスの「スーパー・フリーク」(1981年のファンクナンバー)がかかったのが本当にウケたというか。俗っぽい曲第1位だから(笑)。

ハマ もうすべてを表してますよね。

レイジ リック・ジェームスってとにかく顔がスケベなんですよ。だから見た目もまんまですもんね、あの感じの。

小出 まんまだよね。やりたい放題の権化。

ハマ 下世話な80年代のシンボル(笑)。

小出 リック・ジェームス、良いベーシストなんですけどね。

ハマ だからクイーン以外の選曲も本当にハズレなし。ベタも押さえつつ。

──意図が明確に伝わりますよね。

ハマ 背景がきちんとあるというか。ちなみにそのあと「ディスコなんかやりたくねえ」ってロジャー・テイラーが怒ってるところに、ジョン・ディーコンがファンク調の「地獄へ道づれ」を作って持ってくる。

“今ディスコがキテる”といった時代の潮流を「スーパー・フリーク」で一回見せている感じがすごく良かった。

レイジ たしかに。

小出 当時ジョン・ディーコンは、シック(ナイル・ロジャースが在籍していた伝説のディスコ/ファンク・バンド)が大好きで、レコーディング・スタジオに入り浸ってたんだってね。

それで「グッド・タイムス」って曲に影響を受けて作った「地獄へ道づれ」をスタジオに持っていったら、みんながすごいイヤがったっていう(笑)。

ハマ 結局、大ヒットになるんですけどね(1980年にアメリカ、イギリス共にヒットチャートの1位を獲得。クイーン最大のヒット曲とも言われる)。

 

U2も。映画序盤で、これはとことん本気だなとわかる

小出 『ライヴ・エイド』の話に戻るけどさ、最初のシーンも最後のシーンも、クイーンのメンバーがU2とすれ違ってるっていうのがめっちゃ良かった。右側で4人降りてくるんだけど、あれU2なのよ。

福岡 マジ?

小出 あとで実際の『ライヴ・エイド』の映像観てみ? ボノの格好まんまだったから。

レイジ そこまで凝ってるんですね。

小出 そう、だから序盤の時点で「あーこの映画、絶対面白い」と思ったの。ガチだなとわかった。

ハマ なるほど。あとスタジオにいる風景も他の映画よりリアルな感じがしました。「ボヘミアン・ラプソディ」をレコーディングするシーンもものすごく良かった。

小出 ダビングしすぎてテープが劣化してるとか、ああいうのもすごいリアルだなと。アナログ録音ってテープに直接記録して消してだから、摩耗して透けていっちゃうわけですよ。

普通はその寸前で止めなきゃいけないんだけど、行けるとこまで「ボヘミアン・ラプソディ」は録っちゃったよっていう。

ハマ 実際テープが限界まで薄くなってきてしまったから、もうこのへんで止める、みたいなことだったらしいですよ。あのコーラスの録り。

ドラムのロジャー・テイラーはすごく歌がうまくて、ライブでもコーラスをバンバンやって。いちばんトップが出るのが彼だったので、いつもやらされまくって大変だったって。

小出 “♪ガリレオ~”のいちばん高いところはロジャーの声。

福岡 「ガリレオって誰だよ?」ってつっこみの台詞、あれ超面白かった~。

ハマ ああいう笑わせにかかるシーンも全部面白かった。あと「ボヘミアン・ラプソディ」って、あれだけの超名曲なのに、実は発売した直後は結構マスコミから叩かれてるんですよね。当時本当に書かれた辛辣な批評や記事が画面に出るのも面白かった。

──クイーンに対しての今だからこその再評価って意図もありますよね。すごく大衆的なイメージがあるけど、同時にフレディのマイノリティー意識といい、実は早くに先端を行っていたバンドなんだと。

小出 音楽的には影響を受けにくいバンドでもあると思うんですよ。フレディの個性が強すぎるし、音もかなりクセがあるし、エッセンスを盗みにくい。だから僕も好きだけど、夢中っていうわけじゃなかったし、「We Are The Champions」とか王道すぎてあんまり聴いてなかった。

それがもう、あの曲でダラダラ泣きましたから。こんなに良い曲なのかよぉ! って。きっと好きになり直す人も多いんじゃないかな。素晴らしい。マジですごかった。

レイジ めっちゃ聴いてみたいって思いました、クイーンのアルバムを。

福岡 たしかに無性に聴きたくなる、本物を。

レイジ 俺、まだクイーンをちゃんと聴いてないのは幸せなことだなと思いました。自分が知らない良い音楽がまだまだいっぱいあるんだなって。

ハマ これからクイーンの音楽に出会う人には、そのきっかけとしても打ってつけの映画だと思います。僕もこれを観て、やっぱり最強のバンドだったんだなって改めて思いました。

小出 うん、本物の最強。

 TEXT BY 森 直人(映画評論家/ライター)

試写でもらったプレス用パンフレットを手にして、レジェンドミュージシャン知識が止まらない小出部長とハマくん。キミたちは何歳ですか……。

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