自分の仲間以外の世の中が大嫌いだった男が、主催音楽フェスを成功させるまで【舞台の袖から】

ステージの“袖”で活躍する人々のドキュメンタリー『舞台の袖から』。第2弾は、『MUROFES』主催者・室 清登。「将来については何の希望も持っていなかった」という室の、人気フェス主催に至るまでの経緯に密着した。

2018.10.01

初めてライブを観に行った時、舞台の上の大好きなアーティストが大好きな曲を演奏していた。このフェンスの向こう側へ行きたい。そう思った瞬間、客席とは別の場所から舞台を見る人の存在に気づいた。これは、客席からではなく、袖から舞台を見つめる者たちの物語。


【舞台の袖から】
フェス主催者・室 清登

千葉県浦安市出身。大学生活の途中で、まったく未知の世界であったライブハウスの運営を学ぶため、単身大阪のライブハウスに勤務。

その後、東京・渋谷にあるTSUTAYA O-Crestにてブッキングマン・店長を経て、2012年に自身の名前を冠にしたフェス『MUROFES(ムロフェス)』旗揚げ。先日7度目となる『MUROFES』をお台場で成功させた。

「将来については何の希望も持っていなかったし、自分の仲間以外世の中が大嫌いだった」と語った室だが、誰もが知るフェスの主催者となるまで、一体どのような人生があったのだろうか。

 

子どもの頃は野球少年、高校ではスケボーとダンス。でも夢はなかった。

出身は千葉県の浦安ですね。その後、広島と名古屋に引っ越して、また浦安に戻って来ました。

子供の頃熱中していたモノは野球っすね、中学も野球でした。高校ではスケボーとかダンスやってたんですけど、何になりたいっていうのはなかったですね、ホントに。

仕事も何をしたいとかも一切なく、ずっと遊んでました。自分の周りにスケボー全国大会一位のヤツとかいたんで、(そっちの道は)絶対無理だなと思ってましたし(笑)。

浦安は荒れてましたね。ヤンキーとかチーマーが多かったです。僕はわかりやすく言うとBボーイでしたね。スケボーやダンスとかやったり。クラブデビューも高校時代で、よく遊んでました。

 

カリスマ的存在だった90年代ヒップホップ

中学時代はMr.Childrenとか聴いてました。あとはB’zじゃないすかね、サザンオールスターズとか。歌えないですけど(笑)。そっから高校生になってヒップホップとか聴くようになって、アンチJ-POPみたいな時期を経て、今はまたどっちも良いな思えるようになりました。

アンチJ-POP時代、ヒップホップは自分にとってのカリスマでした。言動とか服装とかも含めて全部。この人たちスゲーなって。今でも90年代のヒップホップを聴くと胸が熱くなります。今でもその頃の曲がいちばん良いなって思ってます。

父親の紹介でライブハウスの世界へ

初めて働いたのは、大阪にあるBIGCATってライブハウスで。遊びに行ったクラブとかでバンドなんかを観る機会もありましたが、ちゃんとライブハウスでライブを観たっていうのはそこが初めてですね。

ライブハウスの世界に飛び込んだのは、親父の紹介がきっかけ。大学入ったけど全然行ってなくて遊び呆けてました。それで大学辞めて大阪行ってライブハウスで働き始めるって感じで。ライブハウスで働くというのも、入った会社で中国にライブハウスを作るっていう計画がもとにあって、店出すにしても経験がないんじゃダメだってことで。一年間修行のつもりで行ったのが大阪BIGCATだったんです。

行った当初は、一刻も早く帰りたかったです。21歳くらいの男なんてそんなもんじゃないですか? ずっと実家だったんで(笑)。でも、働き始めたらライブハウスの仕事が楽しくなっちゃって、ハマって「中国行くの辞めます!」ってなりました(笑)。

その頃、自分の仲間以外の世の中が大嫌いだったんです。地元にはツルんでる友達がいっぱいいて、居心地も良いし。でも自分で想像がついちゃったというか、悪い方向に行ってたのかもしれないし。このままじゃ自分の世界は何も変わらないなって思ったんですよ。

 

ドリンクの発注から照明まで。ライブハウスで見えたムロフェスの原点

(ライブハウスでの仕事の)やり始めは主にドリンクの発注ですね、内容に関わることはなかったです。二年目から小さいハコに移ったんですけど、小さいハコなんでドリンクもやりながら、やったこともない照明もこなすようになり、だんだん出演者とも仲良くなり始めた頃に、「小さいライブハウスでこれからのバンドとやっていくのも面白いな」って感じて。

その時の感覚が今のムロフェスの原点だったのかなって思います。「これしかない!」っていうのと負けん気しかなかったです。

 

良い小屋を作り、人と人が繋がってフェスになっていく

以前はライブハウスに出るようなバンドって、ハコでメインをはれるようになることがある意味で目標みたいな部分があったと思うんですけど、今はフェスに出ることが優先順位高いというか。だから、フェスをやりたいということよりも、もっと漠然としたものででしたけどね。

時期的には3~4年経ってバンドとツアー回ったりしだしたぐらいだったと思います。その後、東京に移ってブッキングやったりマネージャーやったり店長やったりするんですけど、同じライブハウスなんですけど違和感があって、そこには大阪で感じたグルーヴはなかったんですよ。ハコへの愛情がない。そこを変えたい。フェスをやりたいって発想よりも、成り行きなんです。

まずは良い小屋を作るが最初で、そこで良いイベントをやって、人と人が繋がってそれがフェスになった感じです。

 

“自らの手で作り上げていく”というこだわり

具体的に構想したのは2010年ですね、その後震災があって開催できなくて、2012年に開催しました。キッカケは……ぶっちゃけて言うと、『BAYSIDE CRASH』っていうメロコア系のイベントがすでにあって、トレーラー2台並べてステージを作った写真見せてもらったんですよ。その発想とかすごいなって。周りにそういう人がいなかったら、自分でフェスをやるって発想すらしなかったと思います。

メロコアシーンには特有の縦横の結束力とつながりとかあるじゃないですか? でも自分たちが関わっている歌モノのバンド同士にだって繋がりはあるし、作れないわけじゃない、絶対やってやるって。

だから、初年度はラインナップと空気感、それと大人の人を入れずに自分たちの手で作るということを特にこだわりました。

でも、先輩とかには「お前には無理だ」って言われて。だからフェスをやるってことより音楽業界に風穴開けたかったんです(笑)。

 

自分の名前がフェスの名前に入るということ

“ムロフェス”って名前になるまでに、いくつかの候補はあったんですよ。

さっきも言ってた『BAYSIDE CRASH』っていういのがあったんで、“SEASIDE STORY”とか……なんかラブホテルみたいな名前だなって(笑)。そしたら知り合いのバンドが「“ムロフェス”でいいんじゃない?」って。

初年度から考えたら、規模もそうですしいろんなことが変わったと思います。いろんな意見も増えますよ(笑)。自分の名前が前に出ることでクレームも全部僕に来ますしね。

でも、逆に表立ってやることで、お客さんもわかってくれるところはあると思います。誰がやってるかわかるということと信念。その筋さえ通っていれば。

 

今年で7年目のムロフェス、「皆勤賞です」の声も

今年7回目のムロフェスを無事に終えられたことにホッとしています。

今でもお客さんやバンドのみんなの顔が忘れられないですしね。お客さんから声かけられたんですよ「初年度から毎年来てます! 皆勤賞です!」って、初年度のTシャツ着て来てくれてて。

だから来てくれているお客さんの年齢層よりは明らかにちょっと上なんですけどね(笑)。初年度は20代前半で今は30歳くらいですかね。やっぱりすごくうれしいですよ。

お台場使えるのが今年最後だったんですけど、今後別の場所で続けるにあたってもクリアしなければいけないこともたくさんありますが、ステージを増やしたいですね。

 

自分のフェスを作りたい若者へ

自分の感じで言うとですけど、自分のやれることって一気には広がらないんですよ。何かひとつクリアすることができて初めて、次が見えてくるって感じなので、夢はあったほうがいい。でも大き過ぎる夢に一直線すぎると、道がずれた時が辛いんで。自分の思いとはそぐわないこともやってみることが大事。

大変じゃない仕事なんてないと思うんで、困難を乗り越えてこそだと思います。

だったら好きなことを選べば良いし、達成感を出演者やスタッフお客さんと共有できるこの仕事、最高ですよ。


番組情報

舞台の袖から#2 室清登

[OA日時]
10/02(火)11:30/18:00/23:30
10/03(水)13:30/21:00
10/04(木)03:00/14:00/21:30
10/05(金)03:30/14:30/22:00
10/06(土)04:30/19:15
10/07(日)04:45/22:45
10/08(月)05:15/13:00/18:00
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※初回放送の他、リピート放送アリ。詳しくはdTVチャンネル(TM)アプリ内番組表をご覧ください。
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(C)2018 M-ON! Entertainment Inc.


ライブ情報

-AUTUMUROCK 2018-
MAGIC OF LiFE × バンドハラスメント 2MAN SHOW
10/23(火)東京・duo MUSIC EXCHANGE
[出演]MAGIC OF LiFE / バンドハラスメント / INKYMAP(O.A)

MURO FES × [NOiD]
11/01(木)東京・TSUTAYA O-Crest
[出演]ircle / Amelie / Northern19

11/20(火)沖縄・Outputt
[出演]ircle / Amelie / Northern19 / ひぇあふぉう


『MUROFES』OFFICIAL WEBSITE
室清登 OFFICIAL Twitter

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    「1人(ひとり)」は良いけど、「孤独(ひとり)」は嫌! ヒトとの繋がりを 適度に感じられる、音楽風味 なチャンネルを2018年1月30日AM10:00より『dTVチャンネル(TM)』にて開局。