話題の映画『カメラを止めるな!』。「絶賛派」と「そうでもない派」それぞれのガチ感想

邦ロック界で一二を争う映画論客とも言われるBase Ball Bearの小出祐介が部長となり、ミュージシャン仲間と映画を観てひたすら語り合うプライベート課外活動連載。

インディーズ映画ながら異例の全国拡大公開となった『カメラを止めるな!』を、まさかの2ヵ月連続で観賞。今回は全開でネタバレします! 未見の方は前回分をどうぞ。

みんなの映画部 活動第46回[後編]
『カメラを止めるな!』

参加部員:小出祐介(Base Ball Bear)、世武裕子、オカモトレイジ(OKAMOTO’S)、野崎くん

「そうでもなかった派」ふたりの感想はこちらから

カタルシスの種類は「運動会」。マンパワーが困難を乗り越えていく

レイジ 絶賛派の俺もね、世武さんや野崎くんの意見は、やっぱり聞いたら納得するんですよ。これ別に、映画じゃなくても良かったんじゃないか? って。たまたま映画だった、って感じがするのはたしか。

──本質は「むしろテレビ的」だから、こんなにハネたとも言えますよね。

小出 とはいえ、実際問題としてテレビ版ではこの作品は制作できなかった。そこもポイントだと思うんですけどね。

前回ね、『ラヂオの時間』を例に出したじゃない。実際、『カメラを止めるな!』の原案というか元ネタは舞台だから、映像表現うんぬんというよりは“舞台劇の映画化”に近いんだよね。

あとカタルシスの種類としては、完全に運動会だと思う(笑)。なんだかんだ言って、マンパワーがいろんな困難を乗り越えていくっていうお話じゃない。そこに熱くなるし、感動してるんじゃないかと。

世武 そうなの?

小出 僕の中でこの映画にいちばん近い感動は“やぐら”なんですよ。小6の運動会の時に組体操があったんだけど、ラストに“30人やぐら”っていう大技をやることになって。

体が大きい人から輪を作っていって、ぎゅうぎゅうの太巻き状の下段、中くらいの中段、3人で組む上段、その頂点に最後のひとりが立つ。それが軽くていちばんちっちゃい子なんですよ。

この技ってかなり危なくて、俺らの一個上の先輩の代が失敗して、やぐらが崩れていちばん上の子が落ちて肩を骨折しちゃって。それを前年度に目の当たりにしてたから練習も連日ハードで、空気もすげえピリついててさ。

で、結局成功したんだけど、男子も女子も、先生も親御さんも泣いたりしてんのよ。僕も感動してたし、なんかその種類の感動が、ちょっとよぎった。

あれって上手くできてて、頂上に乗っかるちっちゃいやつは、クラスのカーストで言うと普段いちばん下のやつなんだよ。運動会でバリバリ活躍するのは体がデカいやつ。だけど“30人やぐら”のときだけは、いちばんちっちゃいやつを上にしないと、重くて組むことができないのね。

デカいやつらは土台になり、ちっちゃい子が上に立つっていう、逆転の図式が成り立つのは一年間でその瞬間だけなんだよ。

レイジ 『カメラを止めるな!』で言うと、最後、プロデューサーや主演だった子が土台やってるっていうのがその図ですよね。

小出 そうそう。だからミスリードの巧みさとか伏線回収の気持ちよさっていうのも当然あるけど、最終的にマンパワーで解決するっていう持っていき方が、非常に若手監督の熱意溢れる感じだと思ったし、まさに最後のピラミッドが象徴してるような映画だなと。

そういうの込みで、粗削りだけど光るものがあるみたいな気持ちになれる映画ってなかなかないからさ。上映初期にあの熱気のなかでこの映画を観れたのは本当にラッキーだと思うし。今こうやってどーんと拡大したのもうれしいし。ライブ的な劇場体験としてね。

 

この現象は狙ってもなかなか起きない

世武 あの女の子好きだった。秋山さんって女優さん。

小出 主演の秋山ゆずきさんね。彼女は事務所がアソビシステムなんだけど、そこがライブ配信アプリと組んでプロデュースしてるEVERYDAYSっていうアイドルのメンバーで。デビューしたの7月頭ぐらいだし、ツイッターとかだとまだ2~300人しかフォロワーいない子もいるのね。でも秋山さんは『カメラを止めるな!』に出たことで、ひとりだけ一気にフォロワー1万4000人いってて。

野崎 ずいぶん格差ができちゃって(笑)。

小出 そう。

世武 でもわかる。私、あの子好きだったよ。

──『カメラを止めるな!』現象は、日本映画界、とりわけ自主映画界にとっては間違いなく巨大な事件なんですよ。20年前にアメリカで『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』が大ブームになったようなことが、ようやく日本でも起きたと言える。

野崎 そうですよね。この現象は狙ってもなかなか起きないですよ。

小出 この映画の副産物みたいなのって良いことも結構いろいろあって。例えばトークショーで上田慎一郎監督と吉田大八監督が対談したらしいんだけど、そこで吉田大八監督が『桐島、部活やめるってよ』の映画部員・前田(神木隆之介)が撮りたかったのはこういう映画だ、みたいなことを言ったらしくて。前田が、これを撮っていたかもしれない、そんな世界線があるのかもと思ったらグッときちゃって。

世武 良い話だね。それはちょっとグッとくる。

小出 ね。

レイジ それはすごい感動的ですね。俺の場合はね、例えば誰からもおすすめされなくてふらっと入ってあの環境で観てもおんなじ感想だったと思うんです。

世武 大抵はひっそり終わっちゃうんだよ。自主映画の延長で劇場公開されても。

野崎 ENBUゼミナールっていうとこの制作ですよね。

世武 私もやっぱり、自主映画系の作品がこんだけ成功してるっていうエモさにはすんごい感動するのね。お金かけて、旬の人気俳優が出てるテレビ資本の映画じゃなくても、みんな面白いと思うんだよってことはすごい良かったし、励みにもなるから。

作品的にいろんな意見が出始めているのも、結局注目されてバズってる幸福だよね。こういう例が増えたら本当に良いなと思う。

TEXT BY 森 直人(映画評論家/ライター)

六本木ヒルズにて。右から2番目の野崎くんは、“みんなの友達”ということ以外はよくわからない謎の立ち位置。日々、映画館と動物園に通っているという謎の存在なのである。

感想会の場となった某ファミレスにて。レイジくんはこの間違い探しが大好きなのである。

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