絶賛以外はダメなのか?話題の『カメラを止めるな!』2回目観賞後の感想は変わるか?

邦ロック界で一二を争う映画論客とも言われるBase Ball Bearの小出祐介が部長となり、ミュージシャン仲間と映画を観てひたすら語り合うプライベート課外活動連載。

インディーズ映画ながら異例の全国拡大公開となった『カメラを止めるな!』を、まさかの2ヵ月連続で観賞。今回は全開でネタバレします! 未見の方は前回分をどうぞ。

みんなの映画部 活動第46回[前編]
『カメラを止めるな!』

参加部員:小出祐介(Base Ball Bear)、世武裕子、オカモトレイジ(OKAMOTO’S)、野崎くん

『カメラを止めるな!』、小出部長とレイジは2回目も満足

──第46回の映画部です。連載史上初の同じ作品を観るという回です。

レイジ すごいですよね。

小出 これはやっぱりこの作品だから許される、二度見じゃないですか。

──話題が話題を呼び、都内2館から全国約200館規模へのメジャー拡大公開となった『カメラを止めるな!』2回目です。では小出部長、まずは二度見のひと言をお願いします。

小出 やっぱ面白かったっす。

レイジ 俺も全然面白かったっすね。なんなら2回目のほうが結構泣きそうになりました。この規模感の拡大も含め。このデカい劇場で映ることをまったく想定してない画質の映像を観てると泣けてきましたね。

小出 わかるわかる。特に最初の37分さ、あの画質のゾンビ映画をTOHOシネマズの大画面で観るのって、なんか感動するじゃん。

レイジ いきなりスタジアムで演ってるガレージバンドみたいな。ニルヴァーナが出てきた時とかこんな感じだったのかなって。

小出 成りあがり感ね(笑)。

レイジ そうっすね。なんなら野崎くんの撮った『Summer break』(菅田将暉主演で話題を呼んだ7分半のショートフィルム。音楽にはレイジくんも携わっております)のほうが予算かかってるんじゃない?

野崎 いやいや、それはない(笑)。だって『カメラを止めるな!』の予算は公称300万円でしょ。僕のはショートフィルムで、みんなの善意で出来ているから、そんなにはかかっていない。

──今回久しぶりに野崎くんも来てまして。

野崎 お久しぶりでございます。

レイジ 野崎くんはK’s cinemaで一回目を観てるんだよね。

小出 じゃあ今日のメンバーの中で、世武さんだけが初見。

世武 はい、初見です。

小出 やっぱり世武さんの初見の感想を聞きたいね。

世武 笑えるところもあって純粋に面白いと思う部分もあったんだけど、私にはちょっと“テレビっぽい”と思ってしまうところがあったかなぁ。

野崎 あ、それ僕もわかります。

世武 自分の気分的には、もし年末のテレビ番組の企画でこれを観ていたら、素直に面白いねって盛り上がってた気がします。個人的に映画館を神聖化しすぎてる傾向にあるから(笑)、どうしても“映画”を別枠で観がちではあるんだけど、「これぞ映画だ」云々みたいなノリで言われると、実は内心違和感を持ってる人もいるんじゃないかなと思うのよ。

小出 なるほど。

世武 一応言っておくと、私、今日はどっちかって言うと期待値は下げてたの。以前にも社会現象的に盛り上がった映画に乗れなかった経験があって。

だけど最初から決めてたのは、もし本当に面白いなって思った時に「いやいや、さほど面白くなかったし」みたいに粗探しみたいなことをするのはナンセンスだから絶対やめようってこと。なるべくフラットな気持ちで観ようとは思ってました。

でも結局、私には最初の37分が良かったと思っただけに、そのあとが説明過多に見えたんです。

最初に提示したゾンビ映画の舞台裏を37分以降のくだりで「ああ、なるほど、あの変な間合いとか、不自然さってもしかしてああいうことだったのかな」ってほとんどわかるわけなんですけど、それをもう一度具体的に舞台裏として観せられるたびに盛り下がっちゃって。

──後半は自分で出した問題の「答え合わせ」ですもんね。

世武 はい。そこは逆にいうと、映画の“見えない余白を想像する良さ”が奪われる感じ。別に伏線が甘いとか、とかそういうタイプの乗り切れなさじゃないんです。実際“よく出来てる”とは思った。

 

面白いし人にもお勧めしたくはなるけど……

──今、世武さんのおっしゃったことは出るべくして出た意見だと思います。今回、感想会2回目をやるにあたって、映画の社会的なポジションが変わって、それがゆえに評価も変わってくる現象が起きつつある。それを検証しにいこうという回でもあります。

小出 僕の場合、最初にどういう状況下で観たかっていうのは大きかったかもしれないですよね。小さい映画館でコレを観た時は、自主映画とは思えない良質のエンタメを見つけたっていう発見の驚きもあったし、応援したいって気持ちも働いたし。でも今は逆に「傑作バイアス」が掛かった状態で観る人も多いと思うので。

世武 ただ私の場合、初期に観ていても基本的には同じ感想だった気はするけどね(笑)。

レイジ う~ん、そうか……。野崎くんはどうですか?

世武 K’s cinemaの時は結構初期?

野崎 そうですね。でもすでに満席続出とかで話題にはなっていました。だから多少は構えて観たんですけど、1回目は「ものづくり」の感動というか、みんなでひとつの方向に向かって作ってくっていう楽しさの感動がちゃんとあって。

その意味では、たしかに噂に違わぬ面白さで満足はしたけど、“映画愛に満ち溢れていて今年ベスト”みたいな勢いにはやっぱり乗れてなくて、別に自分のベストには入らないかなって感じで。それはなんでかって言うと、基本的にロジカルな映画だから。

世武 そうそう。すごいシンプルだしね。

野崎 シンプルでロジカルで全部お行儀が良い。稚拙な部分だったところも実はこういう裏がありました、みたいな説明をしてくれるけど、ロジックで説明してくれる以外の気持ちよさはちょっとなかったなって。

映画って、もっと荒唐無稽な魅力というか、でたらめなりの感動みたいなのあるじゃないですか。むちゃくちゃなんだけど、ワケもなく涙出てきちゃうみたいな。

でもこれはきっちり書けている脚本の見本みたいな映画で、すごくお行儀が良くて十分面白いし、人にもお勧めしたくはなるけど、僕的なポイントでもう1回このシーンを観たい、みたいな欲望は湧いてこないタイプの映画。

世武 それが私の言ってた年末のテレビっぽい感じなの。面白いで終わっちゃって、そっから持ち帰る何かがないみたいな。

野崎 映画愛の映画ってよりかは、文化祭みたいな感じで、みんなでひとつの目標に向かって作ってくっていう構造だから“ものづくり愛”映画。

そういう面では感動したけど、映画好きは絶対感動できるみたいな同調圧力が蔓延して、「そうでもなかった」みたいな意見が言いにくい空気になっちゃってるのはちょっと問題かもしれない。

 TEXT BY 森 直人(映画評論家/ライター)

夏の夜の部活動。まさか『カメラを止めるな!』を六本木ヒルズで観るとは、前回観た時にはまったく想像できなかった。

感想会の場へ移動中の4人。ちなみに。世武さんがはいているのは、ガチのムエタイパンツです。

小出部長が本作の本質的魅力を○○○で例える
[後編]につづく

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