演者が輝く瞬間を築く者たちの“ステージ袖”ドキュメンタリー。Hi-STANDARDのリアルを写す、岸田哲平【舞台の袖から】

ステージの“袖”で活躍する人々のドキュメンタリー『舞台の袖から』がiBEYAでスタート。第1回目は、ライブカメラマン・岸田哲平。Hi-STANDARDを写した写真展全国ツアーを大盛況のうちに終えたばかりの彼が、ライブカメラマンの道を歩み始めたきっかけとは? さらに、文末にはカメラマンを志す若者に向けた言葉を残してくれた。

初めてライブを観に行った時、舞台の上の大好きなアーティストが大好きな曲を演奏していた。このフェンスの向こう側へ行きたい。そう思った瞬間、客席とは別の場所から舞台を見る人の存在に気づいた。これは、客席からではなく、袖から舞台を見つめる者たちの物語。


【舞台の袖から】
ライブカメラマン・岸田哲平

広島県出身。ビジュアルアーツ専門学校大阪卒業。 在学中に数々のライブ写真を撮り始める。

卒業後、フリーランスとして今も撮影中。国内外を問わず、いくつものライブ・フェスを撮影。先日も、Hi-STANDARDの写真集『“SUNNY DAYS” Hi-STANDARD Photographs of TEPPEI KISHIDA』の出版を記念しての全国7カ所写真展の全国ツアーを終えたばかり。

岸田がどのように“ライブカメラマン”の道を歩むようになったのか、その生い立ちから追うことにした。

■写真館の息子・岸田少年はニルヴァーナに心奪われる

実家は写真館だったんですが、ゲームばっかりやってました。あとテレビとマンガと映画観たりとか、単なるオタクな感じでしたね。

岸田お気に入りの一枚「元広島カープのランスとジョンソンです(笑)」

中学とか高校の頃、ニルヴァーナが出てきて世界がガラッと変わって。「こうやってギター弾けばいいんだろ?」とかまねして体揺らしたりして。バンドもやってはいましたが、コピーばっかりでオリジナルが生まれなかったんで、すぐ挫折しました。

 

■「ミュージシャンになりたい」音楽への想いが強まった高校時代

高校の時は音楽やりたかったんで。しかも広島から出たいっていうのもあったから、専門学校行くって言えばとりあえず広島からは出してくれるだろうと大阪の専門学校に行きました(笑)。だからカメラマンになろうと思ったのは、ライブ写真を撮りはじめて、作品をどんどん撮り溜めていってた19歳か20歳くらいの時ですかね。

 

■岸田哲平、カメラマンとしての第一歩

専門学校に行って写真をやることになったので、地元広島には太田川っていう川が流れているんですけど、そこに行っていろいろ撮ったのを憶えてます。それがホントに最初に撮った写真だったと思います。NIKON F-4ってカメラで。

これですね。フツー(爆)。でも壁に画鋲で刺して飾ってたっていう(笑)。

 

■その瞬間を切り取る、“ライブを撮る”ということ

学校の授業で好きなもの撮ってこいっていうのがあって、じゃあ音楽大好きだし、勝手にライブハウス行って、コンパクトカメラで勝手に撮って、それを学校でプリントした写真をアーティストに渡して「次また撮らしてください!」っていうのを繰り返してたのが始まりでした。

初めて撮ったのは、大阪・十三ファンダンゴですね。PIZZA OF DEATHから出てるSHARBETってバンドのレコ発ツアーで、オープニングアクトがHUSKING-BEEでそれを勝手に撮って、SHARBETも勝手に撮ってました(笑)。

当時の音楽シーンは情報が少なかったですからね。本かテレビかラジオくらいで。今はインターネットでいろいろできますけど。当時は「情報ねえ。情報ねえ」って言いながら、好きなバンドの情報を探しまくって、CDのサンクスリスト見て「あ、このバンドとこのバンド繋がってるんだ!」ってわかったり。アナログでしたけど、熱量があって良い時代だったと思います。

 

■Hi-STANDARDとの出会いはまさかの直談判

専門学校は大阪だったんですけど、ハイスタが『ANGRY FIST TOUR』で広島に来るって知って、地元のミザリーって老舗レコードショップの知り合いに「ハイスタ撮りたいんですけど、スタッフパスでなんとか入れてもらえませんか?」って頼んだら、「スタッフパスは出してあげるから、ハイスタ撮れるかどうかは直談判してみなよ」ってことになって、当日リハーサル中に行って、写真見てもらってお願いしたのが最初です。

当時のことをあんまり憶えてないんですけど……「あ、いいよ」くらいの軽い感じで撮らせてもらいました。後日談として、Kenさんは「気持ち悪いやつ来たな」って感じだったらしいです。ありがたいなって思ってます(笑)。

リハーサル中とはいえ、ド正面から撮った一枚に「いろいろ勘違いしてた頃なんで(笑)」とひと言

あの時代、その場所に行かないとわからないってことだらけだったんで。しかも、若いしなんでもできるって勘違いしてた部分はあります。でっかい勘違いをいっぱいしてましたが、それが楽しかったですね。

 

■プロとして生きる。見てもらう喜び、オファーのうれしさ

大阪時代から写真をいろんな人に見てもらうのが好きで、いろんなとこ行って「見てください!」って言って見てもらってたんですよ。それこそ東京のレコード会社調べて電話して、「見てください!」って言ったりして(笑)。

そんななか、アンダーワールドが東京・赤坂BLITZでライブをやるって知って、また調べまくって電話して「僕撮りたいんですけど!」って言って写真見てもらって、撮らせてもらったんです。その写真が雑誌に載って、それを見たレコード会社の人が連絡してきて、「フィオナ・アップル撮ってください」って言われて。

これまで「見てください!」だったのに、雑誌を見てオファーをもらった時、瞬間的にヨッシャー! って。これで仕事になるって思うよりも先に、ものすごくうれしかったことを憶えてます。

 

■“撮りたい”という、変わらない原動力で突き進む

HMVとか行って普通の店員さんに、「すいません、EPICソニーの電話番号教えてください」って言って(笑)。そしたら教えてくれたんですよ。それこそ新宿のマイシティにあったHMV。その時コーンがすごい好きで、まだ来日してもなかったんですけど、電話して「あのすいません、コーンがすごい好きなんですけど撮らせてください」って言って、そしたらレコード会社の担当の方が「いや、僕はコーンを好きってレベルじゃないよ、もっとその上を行ってるよ」って言われて(笑)。その後もいろいろお世話になってるんですけど。

(電話でのお願いは)結構珍しいですねとは言われました。なんか気持ち悪いやつって思われてるんじゃないんですかね、一歩間違えると(笑)。でもとにかく撮りたいっていう気持ちです。

だからエムオンさんにはお世話になってましたよ。いや、本当に。だって、ビデオかかる時に、洋楽でもレーベルが出るじゃないですか? 俺それ見て電話かけてたんですよ。ホントにホントに! すごい勉強になってました(笑)。

 

■岸田哲平がこだわる、“時代を撮る”ということ

基本ライブ写真なんで、あんまりないですけど。大事にしているところは、その時代のアーティストをちゃんと撮れているかっていうところですかね。例を挙げて言っていいのかわからないですけど、Björkを撮影する機会があったんですけど、ハイパーバラッド時代は撮ってないなとか思っちゃったりするんですよね。だから時代時代をちゃんと撮っていきたいと思ってます。

写真って二面性があると思うんですよ。ドキュメンタリーな部分とアーティスティックな部分と。その両方をバランスよく撮りたいとは思いながら、撮影はしてます。報道写真も好きなんですが、なんと言うか一枚でドラマがわかるようなというか……なんか急に折れちゃいましたけど。

もちろんアーティストのためにでもあり、自分のためにも撮ってるんですが、そこに人が立っているんだということや、こういう気持ちで撮っているんだっていうのが伝わればうれしいですね。そんな感じです。

 

■岸田哲平が感じる、今の音楽シーン

インターネットの時代ですし、音楽の聴き方も変わってきましたしね。フェスもすごく増えて、そこに価値があるみたいな感じにはなってきているのかなぁと思うからこそ、個人的にはしっかり撮らなきゃなとは思っていますね。演出の部分でもLEDとかの開発で見せ方も変わって来ていますし。

熱量は今も昔も変わらないんだと思います。お客さんの年齢層も昔ライブハウスに通っていた人から、若い人まで広い年齢層が楽しんでいるのは良いことなんじゃないかな。それこそレイジ・アゲインスト・ザ・マシーン再結成の時も撮影してたんですけど、頭3曲撮って喫煙所行ったら、同年代のお客さんがみんなゼェゼェいってて、わかるわかるって思いました(笑)。

自分ができることは、やっぱり歴史を残すこと。今の時代を撮って後々それがきちんと伝わるというか、カメラマンも伝える側なんで、その時代の楽しさとかヤバさなんかもしっかり伝えて残していきたいです。はい。

それにステージ上からの景色は絶景だなと思いますよ。なんかこうブワァーってなってる感じとか伝えたいですけど、なかなか難しいですよね。でも責任感としては、後ろのほうにいる人たちが、「あ、前の方はこんな感じだったんだ」ってわかる写真を撮らなきゃっていうのは思ってます。

PHOTO BY Tsukasa Miyoshi(Showcase)

 

■カメラマンを志す若者へ「良い写真を撮るために一生懸命にならないほうがいい」

自分を信じるじゃないけど、あんまり人に合わせないほうがいいというか、自分が本当に好きなんだったら、勘違いでもいいから、どうにかそれを撮れるように動くこと。とにかく電話してみるとか(笑)。この人とこの人の繋がりでこの人に頼んでみようとか、僕はそうしてやってきたんで。

撮りたいけど撮れない、だから良い写真が撮れないってことをずっと悩むよりは、動いたほうがいい。今はデジタルの時代になって、皆さんが思うより撮れる環境も多いので、写真集作ったりや写真展なんかも絶対やったほうがいい。それが表現なんで。若い人には頑張ってほしいと思います。

ただ僕は、出る杭はバンバン打って、出る前から打って、可能性全部ブッチブッチ潰して老害老害老害でやって行こうと……いや、そうならないようにやっていこうと思ってます(笑)。

 

■インタビュー終了後。メールにて「岸田さん。ライブカメラマンの仕事、最高ですか?」

最高です!!! 一瞬で何年も楽しめる写真を撮れる可能性がありますから。。。(遠い目で)

INTERVIEW & TEXT BY 古川タロヲ


書籍情報

NOW ON SALE
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ぴあ株式会社
¥4,000+税
判型:A4(T297×Y210 mm)
製本:上製本
ページ数:本文224ページ


番組情報

舞台の袖から

[初回放送]
08/27(月)21:45~22:00
詳細はこちら

※初回放送の他、リピート放送アリ。詳しくはdTVチャンネル(TM)アプリ内番組表をご覧ください。
※dTVチャンネル(TM)内『iBEYA』にて配信中。
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