運命を信じる人ほど罰を与えない。川谷絵音率いるindigo la Endの新曲から考える“罰”と“自由意思信念”の関係【心理学的歌詞考察】

歌詞に重きを置く傾向にある、日本ならではのコラム(!?) 音楽好きで年間200本は心理学の論文を読むアル・マジローが“心理学”の観点から最新音楽を分析。あの曲の真の面白さに気づけるかもしれません。

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[お題]
indigo la End「Unpublished Manuscript」

音楽好きで心理学を学ぶ男、アル・マジローが楽しみながら“心理学”を知ってもらうべく、“心理学”の観点から歌詞を深掘りするコラム連載。

今回取り上げるのは、川谷絵音(vo、g)を中心に、長田カーティス(g)、後鳥亮介 (b)、佐藤栄太郎 (ds)で構成される4ピースバンド・indigo la Endの「Unpublished Manuscript」です。この歌では、最初から最後まで一貫して神頼みをしています。

神様を“見えないこと”(おそらく未来のことでしょう)が“見えている”存在であるとしたうえで、いろいろなことを教えてほしいと言っています。

“僕にも見せてよ 命の項目だけでも”

引用:indigo la End「Unpublished Manuscript」

“今年はどうなりますか? 優しい人が死にますか? 淡々と過ぎてみんな忘れますか?”

引用:indigo la End「Unpublished Manuscript」

教えてほしいことがとてもネガティブで、聞かれた神様もギョッとするんじゃないかな…と思ってしまいました。

indigo la End

[視点]
運命は決定されるもの? それとも自分で決めるもの?

さて、上の歌詞で見えてくるのは、神様は運命を知っているということです。言い換えれば、運命は神様によってある程度決められているという考え方です。

しかし、この発想に賛成しない人もいるでしょう。私たち人間は自分の行動を自分で決めているのだから、神様でさえ未来を見ることができないという考え方です。こうした、自分の意志で物事を選択したり行動を決めたりする能力のことを“自由意志”と言います(Nahmias, 2012)。

では、“自由意志”とを信じる人と、あまり信じない人(例えば、運命を信じる人)とでは、何か考え方や行動に違いがあるのでしょうか?

[実験結果]
“自由意志”を信じる人ほど、罪を犯した人を罰する

ここでは、Shariff et al.(2014)の実験を紹介します。彼らは、自由意志を信じる人と信じない人とで、他の人に与える罰の大きさが違うということを実験で調べています。

つまり、「自分の行動は自分で決められるものだ!」と信じている人と、「自分の行動は神様によって決められている!」と信じている人、どちらが他の人に罰を与えるのか、という内容です。

実験はとてもシンプルです。彼らは、実験に参加した人の半分に自由意志を否定する文章(人間の行動は意志によって決められているのではなく、神経伝達物質などによって決められている)を読んでもらいます。そうすることで、“自分の行動は自分の意志では決められない”というマインドを持ってもらうようにします。

一方、残りの半分の参加者には、自由意志とは関係のない文章を読んでもらいます。そして、それぞれが文章を読んだ後、殺人を犯してしまった人に対してどれだけ罰を与えるかを答えてもらいます。

結果、「自分の行動は自分の意志では決められない」という文章を読んだ人の方が、人を罰しないということがわかりました。

いやいや、こんな文章を読んだだけでマインドなんて変わらないとお思いの方も多いでしょう。実は私もそう思っている節はあったのですが、彼らの研究ではそうした文章を読んだ人ほど、自由意志を信じなくなっているということが確認されています。

さらに、三度同じような研究をして、同様の結果が出ています。ですので、この研究結果はある程度信じても良さそうです。

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[結果の解釈]
「Unpublished Manuscript」を歌うだけで、罪を犯した人に寛容になる(!?)

このように、自由意志を信じない人ほど人を罰しないという結果がわかりました。

自由意志を信じる人は「殺人を犯した人は当然自分の意志で人を殺した」と予想するので、そういう人たちには重い罰を与えてしかるべきと考えるのでしょう。

しかし、自由意志を信じない人は「殺人を犯した人は自分の意志で人を殺したのではなく、何らかのアクシデント──それは神様のイタズラかもしれません──によって人を殺した」と考えるので、それは自分の意志ではどうしようもないことなのだから重い罰を与えるほどではないと考えるのでしょう。

この実験で面白いのは、人を罰する程度は“自分の行動は自分の意志では決められない”という文章を読むだけで変わるということです。もし、この実験結果が正しければ……。

「Unpublished Manuscript」の歌詞を読むだけで、あるいはこの曲を歌うだけで、罪を犯した人に寛容になるのかもしれません。

なぜなら、この曲は、自分の意志によって運命・未来を変えられるという発想より、神様が運命・未来を決定しているという考え方に近いからです。こんな結果が出るとはあまり思えないのですが、もし出たらとても面白いなと思いました。

TEXT BY アル・マジロー


考察楽曲

indigo la End「Unpublished Manuscript」


作品紹介

※「Unpublished Manuscript」収録作品
2018.07.18 ON SALE
ALBUM『PULSATE』
unBORDE

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