満員で入れない!?話題の映画『カメラを止めるな!』を観て、アーティストがヒザを叩いて大爆笑!

邦ロック界で一二を争う映画論客とも言われるBase Ball Bearの小出祐介が部長となり、ミュージシャン仲間と映画を観てひたすら語り合うプライベート課外活動連載。インディーズ映画ながら「今年No.1」と言う人が日増しに増えている『カメラを止めるな!』を3人で観てきました。ネタバレ具合が難しいので多くを語れませんが、部員たちのテンション越しにうかがえる作品の魅力をご確認ください。

みんなの映画部 活動第45回[前編]
『カメラを止めるな!』

参加部員:小出祐介(Base Ball Bear)、福岡晃子、オカモトレイジ(OKAMOTO’S)

 予算300万円。初心の美しさに満ちた映画

──本日は激動のスケジュールでした。数時間前に劇場に行ったのにチケットが完売で集合時間を大幅にずらしました。新宿・K’s cinemaで連日満席が続いている大人気インディーズ娯楽映画『カメラを止めるな!』(監督:上田慎一郎)、『みんなの映画部』第45回目です。まずは小出部長からひと言お願いします。

小出 最高でした! これはもう、RHYMESTERの言葉を借りるなら「K.U.F.U.」、工夫ですよ。それに尽きる。

レイジ 予算もない、スターも出てない、監督も有名じゃない中で何をやるか。

小出 まずはホンが面白いのと、稽古で演技や演出を練りに練り上げたこと。プラス、お金がないけど時間はあるってこと。これはすごい大事だなって思いますけどね。だって僕らミュージシャンでも、それなりに大きいライブをやるようになると、いろんな演出に頼ってみたくなるでしょ。バーンとド派手な。

──映画だとCGを盛りまくるような。

小出 そうそう。ライブの演出だと、ステージをカーテンで囲ってみたりとか、幕間の映像を入れてみたりとか(←チャットモンチーのラストワンマンの演出いじり)。

福岡 ウチらのことやん!(笑)。

小出 世武さんが書いたストリングスで歌ってみたりとか……。

──重ねるね(笑)。

福岡 いいですよ。なんとでも言ってください。

小出 冗談です(笑)。チャットのそれはとても良いお金のかけかただと思ったけど、でもなんかお金をかけることで、かけるお金があることで、小手先の一瞬の効果を得てるもの、しかもそれに溺れてるものって音楽でもたくさんあるじゃない?

そうじゃなくて「セットリスト練ろう」「演奏を練り上げよう」って、そういう「そもそものところ」がまず大前提として大事だなと日頃から僕も思ってるんですけど、その意味でこの映画は初心の美しさに満ちているというか。まず、お金はないわけよ。予算は300万円だって。

福岡 え〜っ、それって映画だとめちゃくちゃ少ないんだよね?

小出 そう。『ブレア・ウィッチ・プロジェクト』より少ないのよ。6万ドルだからあれ。だから気合とアイデアでここまでやるって、本当にすごいと思った。最後のさ、詳しくは言えないけどラストの「あれ」とか、さすがにぐっときちゃうもん。あと物語の構造で言うと、三谷幸喜さんに近いよね。

──それはまったくそう思います。“伏線回収系”ですね。

小出 P.O.V(主観ショット)系ゾンビ映画版『ラヂオの時間』かなと。僕は三谷幸喜作品で『ラヂオの時間』がいちばん好きなんですけど、あれは生放送のラジオドラマで、リハーサルはうまくいったのにそのあとから本番にかけていろんなトラブルが起こる。

役者がごねだしたり、脚本の書き換えまでやりだして、作品が全く別のものになってしまう。それをマンパワーでどうにかするっていう。

レイジ 最初はそういう話だと思わないんですよね。ずっとワンカットでゾンビ映画が続いて。

小出 そう、37分間ワンカット。その「一週目」だけでもそれなりに面白いんだけど、こっからどうすんだろうと思ったら「二週目」でメタに消化していく。

レイジ あのひっくり返し方はびっくりしました。

福岡 すごかったね。

小出 このアイデア自体も素晴らしいけど、工夫して練らないと成立どころか、ここまで面白くはできないと思う。だからすごい努力とチームワークの結晶だなって。その意味でも感動した。エンドロールはいわば「三周目」じゃん。もはや愛おしさすら感じたよ。

オカモトレイジがあそこまで爆笑しているのを初めて見た

──劇中、レイジくんめっちゃ笑ってたよね。

小出 めちゃめちゃ笑ってたよね。客席でいちばんグルーヴ出してた。

福岡 レイジくん自身がもうアンテナになってたね。

レイジ ヒザ叩いて笑っちゃいましたもん。俺、爆笑は耐えられないんですよ。

小出 あそこまで爆笑してるの初めて見た。

レイジ 結構爆笑しちゃいます。

福岡 今日はお客さんの反応も熱かったから、ちょっとライブに似てるなとも思って。即興っていう意味じゃなくて、作品に込めた作り手の努力が伝わって盛り上がっていくっていうか。

小出 そうだね、練り上げたものの感動。その意味では舞台劇にも近いかもね。

福岡 全員うまいって思っちゃったもん。

小出 ね、みんな良い役者さんだなって思っちゃった。最初は全員クソだと思うんだけど(笑)、それ自体が重要な仕掛けだから。

福岡 そう、それがほんとすごいのよ。

レイジ キャスティングも完璧でしたね。

福岡 完璧。

レイジ こういうインディーズ映画とか低予算映画って、アイデアは面白いし、役者さんも巧いし……けど、やっぱりアラが見えてしまったな、という。“けど”がほぼ必ずあるじゃないですか。それがこの作品にはなかった。まったく揚げ足の取りようがない。ここがこうだったらな、といった物足りなさがないですよね。

小出 ないない。

レイジ 本当にバランスよく撮れていると思います。『リメンバー・ミー』(活動第42回参照)くらい面白かったですもん(笑)。こんなに予算や規模が違っても、同じぐらい面白い映画はやっぱり作れるんだって思いましたし。

小出 逆に言えば、ディズニーとか名作を量産するようなスタジオっていうのは、このくらいの練り方をたぶん通常作業としてものすごいやってんだと思う。

福岡 なるほど、たしかにそう思うわ。

TEXT BY 森 直人(映画評論家・ライター)

取材時は拡大公開前。新宿で夕方前に観賞する予定を組むも、まさかのチケット完売。劇場を池袋にして集合時間を変えて夜の観賞へ。そこまでして観る価値ありました。慣れない池袋での感想会会場(喫茶店)探しに苦戦しました。

[後編]に続く

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