ケチな超大金持ちは身代金を払うのか?『ゲティ家の身代金』をアーティスト4人が劇場で堪能

邦ロック界で一二を争う映画論客とも言われるBase Ball Bearの小出祐介が部長となり、ミュージシャン仲間と映画を観てひたすら語り合うプライベート課外活動連載。今回は小出部長が大好きな監督“リドスコ”の最新作『ゲティ家の身代金』。話題の“耳切りシーン”を含め、アーティスト4人の反応は……。

みんなの映画部 活動第44回[後編]
『ゲティ家の身代金』

参加部員:小出祐介(Base Ball Bear)、福岡晃子(チャットモンチー)、オカモトレイジ(OKAMOTO’S)、ハマ・オカモト(OKAMOTO’S)

 

小出部長のリドスコ監督好きっぷりがわかる[前編]はこちらから

ジェームス・ブラウンのイタリア語版が流れた時、めっちゃテンション上がった

ハマ 音楽も良かったですよ。なんか「ゲティが来る~」みたいなスコアがあったじゃない。あれ、すごい良かった。

福岡 ゲティが来る~って(笑)。

レイジ 実際怖かったし、すごい音してたよね。

小出 SEとかも怖いよね。銃の音とか、本当に撃ってんじゃないか? って音だと思う。

福岡 いちいち怖かった。男の子が誘拐される時とか。

小出 ね。緊張感がすごい。

福岡 あそこ、最後にオーケストラがバーンって入ってきて、うわ、めっちゃ金持ち感あると思って(笑)。

小出 あははははは。金持ってんなあっていうスコア。

福岡 勢いあるオーケストラってお金持ち感すごいよ。

ハマ ベテランの演奏みたいな。

小出 あと最後の身代金を犯人側に渡してさ、向こうでお金数えるじゃん。あの時にイタリア語バージョンのジェームス・ブラウンの「It’s a Man’s Man’s Man’s World」流れたじゃん。あの時めっちゃテンション上がった。

ハマ 良かったですよね。

小出 「これが男の世界」なんて。あははは。

ハマ カッコ良く言ってんじゃないよって(笑)。

レイジ 序盤レコードかけるシーンとかラジオかけるシーンあったけど、ド定番ですよね。

──ゾンビーズの「ふたりのシーズン」とか、ザ・ローリング・ストーンズの「ワイルド・ホーセズ」とか。

ハマ 要所要所で良かった。ヒット曲。

レイジ 1970年代当時の時代感がよく出てますよね。

福岡 時代背景もすごいちゃんとしてた。飛行機内でタバコ吸えるのとか、イタリアの初期のパパラッチの感じとか。

ハマ パパラッチを車で半分くらい轢いてましたね。

福岡 そう、轢いてた。1回後ろに下がってもう1回轢いてた(笑)。

 

「金持ってるけど世界一みじめなクソ野郎」

レイジ しかしゲティ様っていうのは、本当に強烈なキャラのおじいちゃんですよね。

小出 でもなんか虚しかったよね。マーク・ウォールバーグに言われるじゃん、「金持ってるけど世界一みじめなクソ野郎」って。

レイジ あれは本心でありつつ、実はゲティの心を煽る交渉だったってことですよね。

小出 全体的にお母さんもさ、だんだん交渉というかハッパかけるのがどんどん巧くなるのがサスペンスの展開としてわかりやすかった。

レイジ ただお母さんも、わりと最初から交渉の素質はありましたよね。旦那から親権取る時とか、お金はゼロでいいから明日までに連絡しろって。

小出 ちなみにあのお母さん(ミシェル・ウィリアムズ)、俺、ず~っと広瀬すずさんに見えてた。

レイジ え~っ? マジっすか?

小出 似てない?

レイジ わかんないなあ。

福岡 私もわかんない。

小出 あれっ、俺だけ? まあ乃木坂46全員同じ顔に見えてるくらいだからなぁ。

──それはおじさん脳だね(笑)。

レイジ ノーフィールでフィニッシュ。

──意訳すると、既読スルーってこと?(笑)

レイジ そうです。

小出 ノーフィールでフィニッシュってヤバいね。まったく感じず終了。まあそれはともかく……(笑)。ゲティのおじいちゃんの話に戻るとさ、冒頭の洗濯のルームサービスを頼む10ドルをケチってまで、世界一の金持ちが部屋で下着ちゃんと洗って干してるっていう。

あれ見て、たしかにここまでクソケチで、誰も信用してない感じじゃないと桁違いの金持ちにはなれないんだろうなって。

誘拐された孫の交渉をやってる横で、自分がずっと目付けてた絵を買いにお金を払いに行き、しかも値切ろうとする。身代金を税金の控除に使うっていう考え方も尋常じゃないよね。

ハマ いかにも「イヤなやつ」では出てきていないのが、すごくないですか。最初から超イヤなキャラだったらまだわかるけど、ゲティの登場シーンとかもわりと穏やかで。

小出 ちょっとにこやかだったもんね。

福岡 そうね。「ちょっと変わってるのかな?」くらいの印象で。

レイジ 俺、身代金払わないっていうこと自体が、良い話に繋がる期待感をずっと持たせられたんですよね。

福岡 たしかに。

レイジ 最後の最後は良い話で終わるのかな、って思ってたんですよ。でも全然。この人はただのケチだった。

小出 あははは。本当に正真正銘のケチだった。

ハマ 独占欲の塊ってことですよね。孫も自分の側に置いていたいし。

小出 なんにも取られたくないんだもんね。

ハマ ちなみに最後のシーン、ほんとにイヤだった。『セブン』(1995年/監督:デヴィッド・フィンチャー)とか思い出した。

レイジ 死亡フラグが……。

小出 『セブン』といえばケヴィン・スペイシーですよね。

ハマ 全部繋がりますね。お蔵入りになったスペイシー版もできたら観たいなあ。

TEXT BY 森 直人(映画評論家/ライター)

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