関西人はせっかち、A型は几帳面?Official髭男dismの曲に隠された“確証バイアス”

歌詞に重きを置く傾向にある、日本ならではのコラム(!?) 音楽好きで年間200本は心理学の論文を読むアル・マジローが“心理学”の観点から最新音楽を分析。あの曲の真の面白さに気づけるかもしれません。

歌詞に重きを置く日本だからこそ面白い!心理学的歌詞考察

はじめまして。音楽好きで心理学を学ぶ男、アル・マジローです。“心理学”と聞くと、身構えてしまう方が多いかもしれませんが、国語・算数と同じぐらい、実は私たちの生活に密に接している“心理学”。

初対面で“絶対この人と仲良くできないだろうな……”と感じた人でも、同じ出身地というだけで“あ、仲良くできそう”と思った経験、ありませんか? こういうのも心理学のひとつで、ちょっとした共通点があると言われるだけで、その人を贔屓してしまうことが心理学実験によって明らかにされています(Tajifel et al., 1971)。

このように、心理学は机の上だけで学ぶものではありません。日常生活のあらゆることが心理学と関係しているのです。そこで、このコラムでは楽しみながら“心理学”を知ってもらうべく、J-WAVE『TOKIO HOT100』のTOP 10にランクイン楽曲から一曲選び、“心理学”の観点から歌詞を深掘り! 心理学についての豆知識を自然と手に入れようというものです。

たまにはじっくり歌詞を読んでみたいという方、人の心のクセについて知りたいという方におすすめです。

J-WAVE『TOKIO HOT100』公式サイトより

[お題]Official髭男dism「ノーダウト」

今回注目するのは、藤原 聡(vo、pf)、小笹大輔(g)、楢崎 誠(b、sax)、松浦匡希(ds)からなる、山陰発ピアノPOPバンド“ヒゲダン”こと、Official髭男dism「ノーダウト」。

長澤まさみ主演で話題のフジテレビ月9ドラマ『コンフィデンスマンJP』の主題歌であるこの曲ですが、歌詞の冒頭がとても興味深いです。

まるで魔法のように簡単に広まってく噂話
偏見を前にピュアも正義もあったもんじゃない

引用:Official髭男dism「ノーダウト」

この歌詞の真意はわかりませんが、変な噂が簡単に広まっていくこんな世の中では、そして、その変な噂を信じてしまうほど偏見に満ち溢れたこんな世の中では、正義を訴えてもそれが届かないように思える……ということを言っているのかなと思いました。

では、なぜ“噂話”が“簡単に広まってく”のでしょうか? そして、噂が広まることと“偏見”は関連しているのでしょうか?

Official髭男dism

都合の良い事実しか見えない“確証バイアス”

キーワードは“確証バイアス”です。確証バイアスとは?

認知心理学や社会心理学における用語で、真偽を確かめようとする命題を確証(肯定)する情報に注目し、反証(否定)する情報に注目しないという傾向。

引用:池田・唐沢・工藤・村本, 2010

つまり、仮説や信念を検証する際にそれを支持する情報ばかりを集め、反証する情報を無視または集めようとしない傾向のことで、要は“自分にとって都合の良い事実しか見えないこと”を意味します。

関西人はせっかち?A型は几帳面?

例えば、“関西人はせっかち”という“偏見”を持っている人がいたとしましょう(このことが偏見なのか本当のことなのかは、置いておくことにします)。

そういう人が、せっかちな関西人を見て、“やっぱり関西人はせっかちだ。自分の意見は正しい”と認識するのが確証バイアスです。

この観察だけでは、関西人だからせっかちなのか、なにか別の要因でせっかちなのか(例えば男性だからせっかちなのかもしれません)はわからないにもかかわらず、自分の意見が正しいことが証明されたと錯覚してしまうのです。

逆にのんびりした関西人を見た場合は、“関西人はせっかちでない”と自分の意見を修正せず、その人が関西人であることを意識しないということも、確証バイアスの裏返しと考えられるでしょう。

また、このことは“A型は几帳面”といった血液型についての認識にも当てはまります。几帳面なA型の人を見て“やっぱりA型だから几帳面だ”と思う一方で、几帳面でないA型の人を見て“たまたまA型なのに几帳面ではない”と思ったり、その人がA型であることをそもそも意識しなかったりということがあるかもしれません。

確証バイアスがもたらすもの

こうして自分の“偏見”を確証しているうちに、自分の意見を“偏った”意見ではなく、“中立”で“正しい”意見として認識するようになると思われます。

自分の意見を偏った意見だと思っている場合は“出る杭は打たれ”てしまうので、その意見や噂を広めることのハードルは高くなると予想されます。でも、自分の意見が正しいと思っている場合は、そのハードルは低くなり、噂を広めやすくなります。

さらに、その人が広めた噂が噂を呼ぶということも考えられます。誰も“関西人はせっかち”なんて言わない場合、“関西人はせっかち”と噂を流すと“出る杭”になってしまう。

ところが、別の人が“関西人はせっかち”という噂をすでに流していた場合、“関西人はせっかち”という噂を流すハードルが低くなるのです。

[考察]「ノーダウト」歌詞の深みと面白さ

さて、歌詞に戻ります。

まるで魔法のように簡単に広まってく噂話
偏見を前にピュアも正義もあったもんじゃない

引用:Official髭男dism「ノーダウト」

確証バイアスによって、偏見を“偏っていない”と認識する人たちは、噂話を簡単に広めてしまいます。

そして、噂話が広まることによって、また別の人が偏見を“偏っていない”と思うようになります。一人ひとりの現象だったはずの確証バイアスが、他の人にも影響を与える集団的な現象へと変わっていく。

ここに心理学、そしてこの歌詞の面白さがあると思いました。

TEXT BY アル・マジロー


5月度 考察楽曲

Official髭男dism「ノーダウト」

J-WAVE『TOKIO HOT100』
5/6付:4位
5/13付:10位
5/20付:14位
5/27付:38位

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