現代風刺も#MeTooも入ったスピルバーグ映画に、日本のアーティストも真っ向反応!

バンド界で一二を争う映画論客とも言われるBase Ball Bearの小出祐介が部長となり、ミュージシャン仲間と映画を観てひたすら語り合うプライベート課外活動連載。今回は巨匠・スピルバーグ監督の実録社会派作品。政治的でシリアスな内容にアーティスト4人はどう反応したのか。

活動第43回[前編] 『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書
参加部員:小出祐介(Base Ball Bear)、世武裕子、オカモトレイジ(OKAMOTO’S)、ハマ・オカモト(OKAMOTO’S)

中学校の授業などで観せたほうがいい

──『みんなの映画部』43回目です。レギュラー回では久々のハマくんもいます!

ハマ はい、久しぶりで緊張してます(笑)。

──今回はアメリカ政府の不都合な真実に迫る実録社会派エンタメ映画『ペンタゴン・ペーパーズ/最高機密文書』。巨匠スティーヴン・スピルバーグ監督の新作をこの連載で観るのは初めてですね。ではまず部長から恒例のひと言をお願いします。

小出 最高でした!

ハマ ですね、「レベルが違う」感じ。なんか心がいつもと違うところにあります。これはもう、中学校の授業などで観せたほうがいいと思う。最高に響く教材ですよ。

小出 本当そうだね。掛け値なしにすごい映画だなと思いましたよ。全方位的な映画だなって。取り上げている題材は1971年の実話なんだけど、現在のアメリカ、トランプ政権下の状況について、言いたいことをはっきり言っているよね。

アメリカのことなんてあんまりリアリティないよっていう人でも、これに近いことがモロに今の日本で起きてますからね。森友・加計学園問題とか。

そのものはベトナム戦争についての事前調査を含む機密文書で、要は、それと照らし合わせると「戦争に勝てない」っていう調査結果があったにも関わらず戦争に介入して、しかも泥沼化させたってことがわかるのね。

それを調査報告書の中の人がリークしたことから報道に繋がり、政府から、というかニクソン大統領から報道への圧力があって、ひいては「報道の自由」についてや憲法自体にも三権分立にも接触するような問題に発展していったと。

概要だけでも今、日本が抱える問題とも重なる、他人事じゃない内容だとわかると思うんですが。

──むしろ予見していたかのようなシンクロぶりですよね。

小出 そうなんです。関心が高まっているなかで、日本の新聞社の方々はこの映画にとても勇気づけられるんじゃないかなと。僕も知ろうとすることや考えることを止めたらいけないと思いました。

世武 ワシントン・ポスト紙が、当時のアメリカ政府が隠蔽していたベトナム戦争に関する文書をスクープする話。だからジャーナリズムの使命とか責任が、この映画のいちばんのテーマだよね。芸能ゴシップとかのニュースとは、もう別次元の話。

レイジ 映画の見ため的には昔の時代感がものすごくよく出てましたけどね。当時の新聞はアナログな印刷法で毎日発行してたわけじゃないですか。今の感覚からすると、それだけでも大変そうだなって。

──活版印刷の時代。デジタル製版になるのは、まだ結構あとのことですもんね。

小出 「映画あるある」だけど、輪転機で新聞を印刷して、ざーっと刷りたての紙面を見せていくおなじみの描写があるじゃん。あのおなじみのシーンで、あんなに感動するとは。

ハマ ちらっと映りましたが、活版を直す人がいるんです。頻繁に使う文字などを直す職人さんなんかもずっといて。

世武 しかも毎日、真夜中に入稿して……すごいよね。インターネット時代の今に比べると不便なぶん、人間の熱量が違ってたのかもしれない。

ハマ あのタイム感を映像で観ると燃えますね。記者の人も編集部内を走ったり、あの人力な感じ。黒電話にも萌えます(笑)。内線の感じだったり。やっぱりそのあたりの作りが丁寧なので、70年代のジャーナリストたちの熱さがびんびん伝わってきました。

 

 

間違いなく今の世界に向けて作ってる

世武 ただコイちゃんもさっき言ってたけど、これは間違いなく今の世界に向けて作ってるよね。だから「へえ~、昔のアメリカってそうだったんだ」みたいに、自分たちと切り離して観る人が多いとしたら、それは本当にヤバいよっていう危機感も感じた。

ハマ 現代風刺だと思わないとヤバいかもしれないですね。「これ、ほぼ今の話じゃん」ということが肝心なところだと思うし。

実際スピルバーグも、この映画の製作を発表したのは大統領にトランプが就任して45日後だったらしいです。「すぐ作らなきゃダメだ」と思って、元々の予定を変更して早めたそうで。

──本当はすでに『レディ・プレイヤー1』(現在公開中)の準備段階に入っていたらしんですよ。だけどわざわざそっちを延期して、一気に早撮りしたという。脚本家はリズ・ハンナっていう新人の女性なんですけど、スピルバーグはそれを読んで製作を即断したんですね。

世武 脚本は女性の人なんだ。

ハマ 基本、男臭い世界ですが、主人公は女性社長。この構図も「今」っぽい。思えば最初にみんな飯を食っていて、政治の話を始めると女性が全員はけるじゃないですか。

──意識的に強調してますよね、「女子は政治の話しない」みたいなノリを。そのレベルから始まって、ある種キャサリンの意識変化を描くドラマでもある。

世武 でもきっとそれって今回の映画のメインテーマではないにしろ重要な要素ですよね。#MeTooみたいなセクシャルな話じゃないけど、男社会における女の大変さみたいなことはしっかり描いている。

小出 実際、この映画には女性出演者が少なかったよね。こういう職場の第一線に女性がいない時代だったってことだと思う。逆に、この映画は女性が活躍していく時代の第一歩を描いている。

世武 だけどさ、本当のところは今の時代にしたって、あんま進歩ないなって気もする。

小出 これもタイムリーな話題だけどさ、すべての女性は自分のスケベ心を受け止めてくれてる、笑って受け流してくれてるものだと思ってるおっさんいるじゃん。

世武 いるねえ(笑)。

──セクハラで辞任する中高年の官僚や政治家は、自分の行為が単なるスキンシップだと思っているというパターンですね。

小出 若くても当然いるんだけどね。ハリウッドでもセクハラ問題への意識が非常に高まってますよね。こないだのアカデミー賞は様々な差別問題への意識が詰まった内容でした。

これはアメリカだけじゃなく全世界的に重大な関心事だけど、世界と照らし合わせると日本は全然遅れてるんだと実感せざるを得ないなと。

この映画ではサブテーマだったかもしれないけど、むしろ当然の意識として、「女性の働きやすい社会」に触れてるんでしょうね。そういう部分でも勉強になる映画だと思ったなあ。

TEXT BY 森 直人(映画評論家/ライター)

特にコナン好きということもないのに、特製ポップコーンを買った世武さん。作品に詳しくないので、決めポーズは自己流。

毎度天気がよくない「みんなの映画部」の取材日。この日は強風。新宿・バルト9おなじみの谷間風で戯れるレイジくん(27)。

[後編]へ続く

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