“人に忘れられる恐怖”に反応したミュージシャン3人は、映画『リメンバー・ミー』に何を感じたのか?

活動第42回[後編] 『リメンバー・ミー
参加部員:小出祐介(Base Ball Bear)、世武裕子、オカモトレイジ(OKAMOTO’S)

バンド界で一二を争う映画論客とも言われるBase Ball Bearの小出祐介が部長となり、ミュージシャン仲間と映画を観てひたすら語り合うプライベート課外活動連載。今回は大ヒット中のピクサー映画『リメンバー・ミー』を。感想会冒頭から部員全員がテンション高めです……。


鼻水が出るほどの感動具合を話した
[前編]はこちらから

刺さるね。二回目の死は本当に悲しい

小出 音楽もさることながら、画がずっと良かったね。

──すべてが気持ち良かった。

小出 「死者の国」の色彩もすごくて。メキシコの死者の日ってさ、われわれで言うと「お盆」じゃん。それってたぶんキリスト教圏の人たちより、日本人とかアジア系の人のほうがピンとくると思う。神様じゃなくて先祖に感謝するっていう。

世武 死者の日の祭礼は『007』にも出てきてたよね。

レイジ 『007 スペクター』(2015年)のオープニングですね。

──あちらはあくまで「背景」の域だけど、『リメンバー・ミー』は本質にまで突っこんでますね。われわれ日本人だって、お盆を知っていても、先祖を迎えるってことに関してはあんまり深く考えてない。意味を考えてない。

世武 それは今回観て「うわっ!」って。自分も痛いって思ったところだった。単に儀礼的なものとして受け取っちゃってる。でも本当は、いや、そうじゃないじゃんって。

私もメキシコの友達が留学中に何人かいたけど、この映画と同じように本当に家族第一主義なんだよね。「先祖代々そう言ってた」みたいなこと、すごい大切にするから。

小出 なるほどね。

レイジ やっぱり重んじるんですね、家族それぞれで受け継がれていくカルチャーというか。

小出 それに絡めて言うと、この映画のいちばん刺さるテーマって「二度目の死」ってやつ。「人は二度死ぬ」と。一回目は肉体が滅びた時で、二回目が人から忘れ去られた時。

世武 刺さるね。二回目の死は本当に悲しいね。

小出 悲しいよね。特に僕らみたいな作品を作る仕事って、人に覚えてもらえたりする側じゃない、どっちかっていうと。

世武 チャンスは多いよね。

小出 チャンスは多いほうでしょ。いろんな人に弔ってもらえるチャンスがあるわけだけど、だからこそ人から忘れ去られてしまう、作品もこの世から消えちゃうってのは、本当に自分の存在意義に関わるっていうかさ。

──たしかに「忘れられる恐怖」っていうのは、表現を生業にしている人だと端的に出ますよね。

小出 “地獄めぐり”の途中に、無縁仏の人たちの集落っていえるような描写があったでしょ。ほんとに少ししか出てこなかったけど、それゆえにすごくグサッときた。

世武 ぞっとしたよ。私こうなんのかなと思って(笑)。これはもう音楽で頑張るしかないわと思って。良い音楽作るから、とりあえず誰か憶えといてって思った。

 

 

いわゆるディズニーとピクサーの作風ってなんか違うよね

──今回はピクサー・スタジオの実力を改めて見せつけた一本でもあると思います。おとぎ話としても新しい水準だし、フルCGアニメーションとしての洗練も究極的。特にみんなの表情が本当に素晴らしい!

世武 ですよね。私、CGアニメの造形って本来めちゃくちゃ苦手なんですよ。目の大きさとか、いかにもデジタルな立体感とか。だけど『リメンバー・ミー』は描写が本当に繊細で、服の揺れとかも「えっ、これ実写?」とか思うぐらい上手だし。

小出 リアルめだったね。

レイジ ピクサーのなかでもリアルめ。あまり誇張してないグラフィックでした。

世武 いわゆるディズニーと、ピクサーの作風ってなんか違うよね。あの違いはなんなんだろ?

──元々、本家ディズニーのカウンター的に出てきた独立系スタジオがピクサーなんですよね。今は統合されちゃってますけど、それでもピクサー主導の作品はやっぱり独自のカラーがあります。ざっくり言うとディズニーは保守的、ピクサーは革新的な傾向。

世武 『カールじいさんの空飛ぶ家』(2009年)は泣いた。ピクサーに関しては、結局毎回よく出来てるって泣いてるわけ。

小出 『リメンバー・ミー』の監督は『トイ・ストーリー3』(2010年)の人ですよね(リー・アンクリッチ)。あれを超えるやつを作れんのかなって思ってたんだけど。

世武 私、『トイ・ストーリー3』は観逃しているんだけど、映画好きはヤバいくらい絶賛してるよね。

小出 あれはもう、おもちゃ好きな人間としては感動しないほうがちょっと無理というか。特に第一作からの流れをずっと観てきた世代なら、ね。俺らが小5、小6ぐらいの時に『トイ・ストーリー』(1995年)だったから、主人公の少年アンディーと一緒に育ってきた感覚もちょっとあるしね。

世武 観よう観ようと思って観てないなあ。ディズニーは正直ちょっと「え?」って思う瞬間があるっていうか、これが善なのかわかんないって思う時があるんですけど、ピクサーはすごい素直に受け入れられるんですよね。

小出 最良の意味で教育的だと思う。現実と地続きにファンタジーの世界が広がっていて、ああいう想像力を持ってることが大事だよねっていうのも、本当そう思うし。自分に子供はいないけど、子供に見せたいよね。っていうか、「子供に見せたい」と思ったらもう勝ちじゃん、作品って。

──今回は絶賛一色ですね。ギターのチューニングの完璧さ以外は(笑)。

小出 みんな観な。

レイジ マジで観てほしい。

世武 今回、それしかない。早く映画館で観たほうがいい。

小出 ぜひ映画館で観てください。そんなたいしたこと言ってないんで、この回読んでる暇あったらさっと映画館に行ってください(笑)。みんな観な。

レイジ 間違いない!

TEXT BY 森 直人(映画評論家/ライター)

感想会の場となったファミレスにて。映画で号泣し、喉が渇いてドリンクバーに向かうレイジくん(ピンが甘くてすみません)。

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