映画好きアーティストが選んだ2017年ベスト。えっ?小出部長、それなんですか!?【2017年ベストムービー前編】

バンド界で一二を争う映画論客とも言われるBase Ball Bearの小出祐介が部長となり、ミュージシャン仲間と映画を観てひたすら語り合うプライベート課外活動連載。今回は特別編として、2018年元旦にJ-WAVEの年明け番組内で放送されたラジオ版『みんなの映画部』を記事化してお届けします!

特別活動 [前編] 「2017年ベストムービー」
参加部員:小出祐介(Base Ball Bear)、福岡晃子(チャットモンチー)、世武裕子、オカモトレイジ(OKAMOTO’S)、ハマ・オカモト(OKAMOTO’S)


小出部長が選んだ2017年ベストムービーはあのアニメ作品

ハマ こちら『J-WAVE YEAR END & NEW YEAR SPECIAL TIME FOR MUSIC』。今回も毎年恒例、昨年、2017年の映画をざっくり振り返ります。私、ハマ・オカモトも所属する『みんなの映画部』のメンバーを集めました。

この映画部は、元々すごくプライベートというか、仲の良い人たちと勝手に集まってしゃべっていたものでして。

小出 プライベートですよ。“すごく”じゃなくてもプライベートです、完全な。

ハマ ミュージシャン仲間と新作映画を観て、ああだこうだと言い合う会だったのですが、それがなんとウェブ連載になりまして……何年経つんですかね。

小出 もう3〜4年やってるのでは?

世武 こないだで40回でしょ。

小出 じゃあ3年は越えてますね。

レイジ 早いもんだなあ。

福岡 ほぼ月イチペースだもんね。

ハマ それなりにトシも重なるわけです(笑)。僕がこのJ-WAVEの年越し番組を担当させていただいてから、こうやって来ていただいてお話ししているので、もはや風物詩と言ってもいいのではないかと。

小出 ありがたいです。

ハマ では2017年のメンバーそれぞれの私的なベストムービーを発表していきましょう。これが毎年悩む。改めてベストと言われると。

小出 ベスト10、ないし5であれば並びも込みでいろいろ言えるから、まだラクなんですけど、やっぱベストムービー1本っていうのが本当に毎年難しいんですよね。

ハマ 今の、クレームですよね?(笑)

小出 クレームですよ。洋邦もあるしね。あと2017年の映画は、全体にこういう傾向だったね、みたいなのが割り出しにくい。

ハマ わかりやすいトレンドなんかはなかったような感覚でした。

小出 特に2016年がさ、『君の名は。』とか『シン・ゴジラ』とか、興行収入ドカーンみたいな派手なトピックがあったりしたからね。それに対して2017年はなんだろな~とか考えて、ちょっと思ったのが、音楽の使い方が良い映画が引き続き増えてるなって。音楽ネタや、音楽そのものを取り扱った映画。ミュージカルとか。

例えば話題作には『ラ・ラ・ランド』がありましたよね。評判が良かったものには『ベイビー・ドライバー』もあったし。あと『ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー:リミックス』もあったし。

ハマ 作品をショットガン的に撃っていきましたね(笑)。

小出 っていうのもありながら、僕の2017年のベストムービーは『SING/シング』ですね。

全員 お~っ!

ハマ ハリウッドのアニメーション映画。映画部の連載では取り上げてないですよね?

小出 やってないです。ウッチャンナンチャンの内村光良さんたちが声優を務めた吹き替え版も話題になってましたが、僕は字幕版で観たんですけど、もうね、普通に泣きましたね。

全員 へえ~っ!

小出 「普通に感動してる、俺」みたいな。最後のほうはボロボロ泣いてたんですよ。なんでかっていうと、僕自身が音楽をやっていて、歌詞も書いたりとか、歌ったりもしてるじゃないですか。だからいろんな音楽の伝え方、言葉の伝え方を日頃考えてるわけですけど、願わくば、すごいシンプルな言葉で、最小限あるいは最小公倍数の言葉で、自分の言いたいことを伝えられたならいちばん良いなって思ってるんです。

でもそれって、あまりにもむきだしの言葉になるし、あと最小公倍数の言葉ってことは、それだけ拡大解釈もできる。薄っぺらく聴こえてしまう危険性が高いんだよね。極端なことを言えば、「愛してる」と「ありがとう」だけでいいじゃん。でもそれだけじゃ伝えられないニュアンスがたくさんあるから、我々はいろんな言葉を肉付けしてお話にしたりとか、細かい機微を伝えようと悪戦苦闘していると思うんですけど。

だけどこの映画を観たら、もう恥ずかし気もなくね、「恐怖に負けて夢をあきらめるな」ってストレートに言ってくるんですよ。台詞でも言うし、曲でも言うんですよね。「夢をあきらめるな」って、俺も言いたいよ(笑)。普段言いたいよ。言いたいけど、やっぱりストーリーがないと言えないことじゃん。だから本来むきだしで言いたいけど言えないっていうジレンマを正面突破するために、この映画はうまく肉付けしてくれている。

「夢をあきらめるな」っていう言葉が、しっかり伝わるまでのストーリーを組み立ててくれているんだよね。だからめちゃめちゃ響いちゃって。いやあ、自分も本当はこれがやりたいし、信じたいことなんだよなって思っちゃったっていうことですかね。

ハマ 純粋に感銘を受けたわけですね。

小出 そうそう。「俺もこう言えたなら」って思ったっていうか。

ハマ なるほど。アニメだからこそ響いたということもあるかもしれないですよね。

小出 あると思いますよ。設定もすごく面白くて、登場人物が動物たちなんですけど、みんな歌いたいけど歌う場所がない人たちなんです。みんな歌はうまいし、表現欲も持っているんだけど、それを実現する場所がない。

そんな彼らが劇場支配人のコアラのもとに集まってくる。天才的な歌声を持っている内気なゾウの女の子とか、めっちゃ歌うまいんだけど強盗団の息子で、そのうしろめたさを抱えたゴリラの男の子とか。要は多様な人種のメタファーなのかなと思うんですけど、いろんな境遇の面々がそこに集まって、一個のショーを作るっていう。

みんなそれぞれの理由で歌いたいけど歌えないっていう境遇にあるから、さっき言った「恐怖に負けて夢をあきらめるな」っていうメッセージに全部繋がっていくんです。

福岡 なんか、めっちゃ観たくなるやん。

レイジ 今リスナーになってましたもん。ラジオを聴いている人の気持ちになった。

ハマ さすが部長ですね。しかし『SING/シング』を選ぶというのは少し意外でした。

小出 もし何本か選んでたら、ちょっと違う角度が出てきたかもしれないですけど。傑作ホラーの『ゲット・アウト』とかね。でも『SING/シング』は、例えばテイラー・スウィフトの「SHAKE IT OFF」ってあるじゃん、めっちゃ有名な曲。あれも使われるんだけど、「えっ、こんな良い曲だったっけ?」って驚いちゃって。

実はこの映画で最初にやられたのはそこなのよ。これ、こんな良い歌詞だったんだ! みたいな。そういう新鮮な発見もあって、いろいろと教えられることの多い映画でした。

 

チャットモンチー・福岡が選んだのはあの高校生ヒーロー

ハマ ではあっこびん、お願いします。

福岡 えー、部長のあとはつらいなあ。

ハマ それ、毎年言ってますよね(笑)。

福岡 ほんとだよ。私はですね、みんなと観たやつですけど『スパイダーマン:ホームカミング』(連載第37回参照)が良かったです。

ハマ 僕が昨年、唯一映画部に参加した作品(笑)。

福岡 映画部のときも言ったけど、前の『スパイダーマン』シリーズも一応観てたけど、何年も経ってたからぼんやりとしか覚えてなかったんです。でも、今年のがいちばん好きやなと思って。

ちなみに家に帰ってから、まじまじとパンフレットを読みこんだのがこの映画だったんですよ。私、2016年のベストに選んだ『シング・ストリート/未来へのうた』もそうだったんです。じっくりパンフレットを読み直す映画って、結構印象に残ってる。こういう意図があったんだとか、こういう効果使ってたんだとか。監督の話とかも気になっちゃうっていうのが、2017年は『スパイダーマン:ホームカミング』だったかなって感じです。

ハマ わかります。僕もあのパンフレットは読み直しました。

小出 これも最近の潮流のさ、今までインディーズ映画しか撮ってなかった新人監督がいきなり商業大作を撮っちゃって、うわっ、めっちゃ良いじゃん! っていうパターンのひとつだよね。

ハマ ハンパなく重荷に見える仕事をひっくり返しちゃうパターン。

小出 『キングコング:髑髏島の巨神』(連載第34回参照)もそうでしたけど。

ハマ 『アベンジャーズ/インフィニティ・ウォー』という、新スパイダーマンがアベンジャーズに合流するマーベル・スタジオの新作も2018年には控えていますし。『スバイダーマン』シリーズは、『スパイダーマン:ホームカミング』から観始めてもいいくらいの良い作品でした。

小出 “親愛なる隣人”的な、身近なヒーローとしてのスパイダーマンが完璧に描けてたよね。しかも青春物語として、もう最高。

福岡 そう、青春だった。勢いがあった。

レイジ 過去のシリーズでは、主人公ピーター・バーカー(トム・ホランド)の同級生の友達なんかはあまり出てこなかったですよね。

福岡 あ、そうだ、あのネッド(ジェイコブ・バタロン)っていう親友の同級生が良かった(笑)。

レイジ 部長の知っている同級生がいて。

福岡 こいちゃんの同級生がいたね。

小出 そうそう、ムネカワね。

ハマ そのネタ、今聴いている人はなんのことだかわからないですよ(笑)。

小出 記事を読んでください。俺がさっき言った『ゲット・アウト』もそうだから。

福岡 ムネカワくん出てた?

小出 そう、ムネカワ出てた。

レイジ 『ゲット・アウト』もムネカワくん出てるんですよね。

小出 太ってる親友が最高ムービー。

ハマ 今年のテーマはそれじゃないですか? 2017年のこいちゃん的映画のテーマは“ムネカワムービー”。

小出 ほんとそうなの。太ってる親友がみんな最高っていう。

レイジ サブジャンルが生まれた! もしかしたら『SING/シング』にも太った親友が出てるんじゃないですか?

小出 太ってはいないけど、親友は出てくるね。

レイジ ムネカワムービーのひとつには入る?

小出 そこから枝分かれした一本かな(笑)。スクールカーストの上位じゃない人たちが、ちゃんと意味を持ってるっていう。その意味では『IT/イット “それ”が見えたら、終わり。』もまさにそうですね。

XTCの曲がここでかかるか! っていうところでかかるのも良かったんだけど、ホラーという以上に青春映画で、ムネカワムービーの傑作です!

ハマ ムネカワムービーのくだりがわからない方は、連載「みんなの映画部」を検索して、ぜひスパイダーマンの回をご覧になってください(笑)。

ハマ、レイジ、世武が選んだ“熱い”2017年ベスト作品は[後編]で

TEXT BY 森 直人(映画評論家/ライター)

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