向井太一は流されない。曲に惹かれて、ライブで好きになる、今をサバイブするアーティスト

向井太一

ふと見せる、柔らかな笑顔が印象的な向井太一。“人が好き”だと言う彼は、インタビュー中も目を輝かせながらいろんな話を聞かせてくれた。 “弱さ”を知り、そのうえで強くあろうとする彼の、人間的魅力にも触れてほしいと思う。

醸し出す雰囲気、曲の完成度、ファッショナブルさ……高いクオリティを保持する彼のいちばんの魅力とは?

INTERVIEW & TEXT BY 藤井美保


僕は風で簡単に揺るがない、芯の通った、青い炎のようなアーティストになりたい

──斬新で心地良いグルーヴと抜群にキレのある歌声に衝撃を受けました。何より言葉が伝わってくる音楽だなと。どんな思いで『BLUE』制作に臨んだのですか?

向井太一 イメージしたのは青い炎なんです。青い炎って見た目静かで冷たそうだけど、実は赤い炎よりずっと温度が高い。そこにアーティストとしての意思表示、自分自身に向けたテーマをこめました。

──そのテーマとは?

向井 今って、新しいアーティストがどんどん出てくるけど、そのぶん消化されやすくもありますよね。

人(=アーティスト)への興味ではなく曲単位で聴く人が増えたし、サブスクリプションも急激に普及したから、キャッチされやすく、同時に捨てられやすい。

そういう時代にあっても、僕は風で簡単に揺るがない、芯の通った、青い炎のようなアーティストになりたいと思ったわけです。

自分にあるだけのリアルなキャパで、歌と向き合いたい

──一方で、“ブルー”って気持ちが落ち込む状態でもありますね。

向井 僕にも悔しい思い、コンプレックスはいろいろあります。「アイツは売れてるのになんで僕は売れないんだ」とか(笑)。

でも、そういうマイナスをバネにして立ち上がる強さが、人には絶対あるとも思っていて。だから、普通は隠したくなるような内側の生々しい感情も、僕は歌ってます。

ネガティブをポジティブに変える力、という意味でも青い炎を持っていたいなと。

──たしかにそこを感じました。「痛い!」けれど、「そうか。やらなきゃ!」とも思う。未来に向かって闘う日々を歌う人なんだなと。

向井 実は結構ダウナーな性格なんです。そんな僕を肯定したり、軌道修正したりしてくれる人たちがいて、ここまで来れたんです。

自分にあるだけのリアルなキャパで、歌と向き合いたいと思っています。

いろんな人に助けられているので。本当、そのまんまです

──なるほど。自分に対してかさ増しをせずに。

向井 同じ場所で、悩みながら引っ張っていける人になれたらうれしいですね。僕自身、友だちと話しているだけでフッと心が軽くなったりするので、自分の音楽はそういう存在でありたいんです。

歌詞を聴くって日本の美しい文化ですし。音楽的には、たった今自分がカッコ良いと思う感度の高いものをやりたいけど、歌詞では心に残るものをと思ってます。

──タイトル曲「Blue」は、まさにそれを体現する曲。向井さんの作品でお馴染みのCELSIOR COUPEさんとの共作ですね。

向井 最初はもっとライトな感じだったんですけど、メロディと歌詞が出来た段階で、その世界観に合うサウンドに作り変えていただきました。良い意味でのポップス感が出たなと。そこは目指すところでもあったので。

──焦燥感と覚悟を感じる曲。これこそ「やらなきゃ!」と思いました。

向井 実は歌詞が全然書けなくて悩んでいる時に書いたものなんです。ある時、ふと「そうか。書けないことを書けばいいんだ!」って(笑)。

──悩みながら書いたものは強いんですね。“僕はそうひとりじゃない”という言葉も耳に残ります。

向井 さっきも言ったように、悲劇のヒロイン系だった僕を怒ってくれた人、くじけそうな時に支えてくれた人、僕と同じ熱量で一緒に頑張ってくれてる人……いろんな人に助けられているので。本当、そのまんまです。

散々、こすられてるフレーズですけど、やっぱりメッセージとして強い

──個人的に「空 feat.SALU」は、ファンキーなゴスペルといった趣ですごく惹かれました。

向井 母の影響で聴いてたルーツミュージックの要素が入ってますね。

──“Everything’s gonna be alright”にボブ・マーリーを垣間見た気がしました。

向井 もしかしたら、お腹にいる頃から耳にしてたかもしれません。散々、こすられてるフレーズですけど、やっぱりメッセージとして強い。

この曲は自分のフィールドを広げるきっかけにもしたかったので、わかりやすくまっすぐな言葉を乗せました。

──SALUさんのメランコリックなラップがまた素敵です。

向井 そうなんですよ。SALUさんがあの人間らしいマイナス要素を入れてくださったおかげで、きれいごとと言われてもおかしくない歌詞が味わい深いものになりました。

──SALUさんとは何か打ち合わせをしたのですか?

向井 最初はソロで考えてた曲なので、ラップを入れようと思いついたのはほぼ出来上がってからなんです。

その時点で、元々ファンだったSALUさんにぜひお願いしたいと思いました。まず聴いていただきたかったのでいっさいリクエストはせず。

でも、バチッとハマッたのが届いたので、感動して泣いちゃいました。思い出深い曲です。

──「Can’t Wait Anymore」や「Conditional」など、ロマンチックな曲も新鮮に響きました。

向井 「Blue」のように自分自身の内側を書く時と、シーンを思い浮かべながら妄想でストーリーを書く時と、2パターンの書き方があって、「Can’t Wait Anymore」や「Conditional」は後者なんです。

──取材前の雑談で、「小さい頃は漫画家になりたかった」と言ってましたよね。

向井 あ、通じるかもしれないです。トラックのイメージから雰囲気や人物像を思い浮かべて、絵を描くようにストーリーを展開させていくので、どれもすぐMVが作れる感じなんですよ。

言葉の向こうにあるストーリーや感情をさりげなく伝える音楽を作っていきたい

──本編最後の「ONE」は、温かいピアノとともに胸に染みました。

向井 震災で旦那さんとお子さんを亡くされた方の奮闘を追ったドキュメンタリー番組をたまたま目にしたら、撮影スタッフに「いつも笑顔ですよね」と問われて「笑ってないと涙が出ちゃう。前に進むために笑うんです」と笑顔でおっしゃったんですね。

悲しみや痛みを知る人の強さを見た気がして……すごく心を打たれました。そこで感じたことを自分なりに言葉にしたかったんです。このアルバムでいちばん古い曲です。

僕、坂本 九さんの「上を向いて歩こう」がすごく好きなんですよ。あの曲のように、言葉の向こうにあるストーリーや感情をさりげなく伝える音楽を作っていきたいですね。

──『BLUE』への反応を、今、どう感じていますか?

向井 いろんなところでピックアップしていただき、自分のフィールドを広げるという目標に少しずつ手が届き始めてるのを日々感じてます。

インディーズ、メジャー、どちらにも属せて、クラブでも大ホールでもやれる。そんなアーティストを目指していることが、この一枚で伝わりつつあるのかなと。

年明け1月には大阪と東京でライブもありますので、ぜひ、生の向井太一を目撃しに来てください。


ライブ情報

向井太一 “BLUE” TOUR 2018
[2018年]
01/13(土)大阪・心斎橋VARON
01/19(金)東京・Shibuya WWW


プロフィール

ムカイタイチ/1992年3月13日、福岡生まれ、A型。シンガーソングライター。2010年に上京、2016年3月に初のE.P「POOL」をリリース。2017年11月29日に待望のフルアルバム『BLUE』をリリースした。

オフィシャルサイト


リリース情報

2017.11.29 ON SALE
ALBUM『BLUE』
トイズファクトリー

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