シンガーに最も共演を熱望される音楽家・澤野弘之のボーカルプロジェクト「SawanoHiroyuki[nZk]」について

数多くのアニメやドラマの劇中音楽を手がける俊英

『機動戦士ガンダムUC』『進撃の巨人』『Re:CREATORS』などのアニメ、『マルモのおきて』、連続テレビ小説『まれ』、『CRISIS 公安機動捜査隊特捜班』といったドラマをはじめ、数多くの映像作品の音楽制作を手がけている音楽家・澤野弘之。

久石譲、菅野よう子らと並び、今や日本を代表する劇伴作家としての評価を手にしている37歳の音楽家によるボーカルプロジェクトが“SawanoHiroyuki[nZk]”(読み:サワノヒロユキ ヌジーク)だ。劇伴作家としてきわめて幅広い作風を持っている澤野だが(しかも驚くべき多作ぶり)、SawanoHiroyuki[nZk]では彼本来の音楽性がダイレクトに示されている。

その特徴を端的に言えば、緻密に構築されたトラックメイクとドラマチックなボーカルラインの融合ということになるだろうか。

「RE:I AM」(Aimer/『機動戦士ガンダムUC episode6』主題歌)、「The Reluctant Heroes」(mpi/『進撃の巨人』挿入歌)など以前からサウンドトラックのなかに歌モノの楽曲を取り入れてきた澤野が「ボーカル楽曲に特化した、自分名義のプロジェクトをやりたい」という動機のもと2014年にスタートさせた“SawanoHiroyuki[nZk]”。

Aimerをはじめ、Tielle、Gemie、mizuki、Yoshなど、澤野自身が選んだ優れたボーカリストをフィーチャーした楽曲からは、彼のメロディメイカーとしての資質の高さがはっきりと伝わってくる。

以前インタビューした際に彼は「“ここでブレスを入れる”みたいなことを意識し始めると、メロディに対するアプローチが違ってきてしまう。人が歌えないものはさすがに作りませんが、あくまでもメロディ優先」という趣旨のコメントをしていたが、豊かなドラマ性と緻密な構成力を併せ持った旋律は、J-POPユーザーからアニメファン、ボーカロイド楽曲のマニアまで、幅広い層のリスナーにアピールしている。

 

「どちらかというとサウンドを中心に聴いてほしい」

ヘビィロック、エレクトロ、クラシックなどの要素を織り交ぜた、壮大なスケール感と独特のオリエンタルな雰囲気を同時に感じさせるサウンドメイクもこのプロジェクトの魅力だ。9月にリリースされた2ndフルアルバム『2V-WALK』では従来のテイストに加えて、EDM系のシンセサウンドを取り入れることでさらに幅を広げている。

“歌モノを中心としたプロジェクト”というと、どうしても歌詞や歌にスポットがあたりがちだが、「歌詞にも意味を持たせていますが、どちらかというとサウンドを中心に聴いてほしい。英語の歌詞も多いので“何を歌っているかはわからないけど、良い曲だな”と思ってほしいんです」という発言からもわかるように、あくまでも彼は楽曲全体のトータリティを重視しているのだ。

相変わらず“誰がどんなことを歌っているか”ということばかりに重点が置かれているJ-POPシーンにおいて(“歌偏重”とも言えるこの傾向は、日本のポップスにおけるビートミュージックの低調ぶりにも大いに関係している)、サウンドだけでも楽しめるSawanoHiroyuki[nZk]のスタンスは極めて貴重だ。

小室哲哉、ASKAからの影響を公言し、スキマスイッチ、Do As Infinityとのコラボ作品を制作するなど、王道のJ-POPとも縁が深い澤野弘之。

重厚なグルーヴと音楽的な構築美を共存させたサウンド、卓越した技術を持ったプレイヤー/ボーカリストの質の高いパフォーマンス、そして、作曲家・澤野弘之の核である優れたメロディセンスが刺激的なバランスで融合したSawanoHiroyuki[nZk]は、日本のポップスに新しい進化をもたらす可能性を秘めていると思う。

TEXT BY 森 朋之

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