「さくらんぼ」から14年。大塚愛が“一発屋”にならなかった理由

2017.09.08

“大塚 愛”でイメージするものは?

デビューから14年。ここへきて改めて評価の高まる、大塚 愛というアーティストとはどんな人物なのか。

秋、おろしました。 トップス G.V.G.V. AIO #autumn #fashion #gvgv

A post shared by AIO 大塚 愛 (@aiotsuka_official) on

創作活動は毎日が実験。探究心旺盛なトライの数々

シングル「桃ノ花ビラ」でデビューしてから14年のキャリアを持つ彼女は、実は意外と世間には知られていなかった側面がいくつもあるアーティストだろう。すべての楽曲の詞曲を手がけている彼女が作る音楽はポップ、パンク、ロック、ジャズ、エレクトロ、インストゥルメンタルと多岐にわたり、曲ごとに“大塚 愛”のイメージを変化させることでリスナーたちをその都度驚かせ、どれが本当の大塚 愛なのだろう? という核心が掴みにくい多彩なキャラクターを見せ続けてきた。

例えば、「桃ノ花ビラ」でデビューした3ヵ月後にリリースした2ndシングル「さくらんぼ」は多くの人たちに“大塚 愛=カラフルで快活な女の子”といったイメージを強く印象づけたが、その後「金魚花火」や「大好きだよ。」のような心に染み入る切ないバラード曲を立て続けに出したかと思えば、風変わりなタイトルの「黒毛和牛上塩タン680円」を発表。

また、「ビー玉」の間奏の語りは逆再生しなければ聞き取れない仕掛けを施したり、一万人の心音を取り入れた「end and and~10000hearts~」のような実験的な楽曲を制作したり、3rdアルバム『LOVE COOK』に収録した「LOVE MUSiC」のBメロを「雨の粒、ワルツ~LOVE MUSiC~」(2008年発売シングル「クラゲ、流れ星」収録)のサビに落とし込んだ作り方をしていたりと、彼女は様々なアイデアを取り入れた実験的な制作も行っている。

音楽とは別のアプローチで表現したかったこと

彼女がそのように次々とアーティストイメージを極端に変化させる挑戦や実験ができたのは、大塚 愛自身が“大塚 愛”をプロデュースすることができたからだ。

4歳からピアノを習い、10代で作曲を始めたが、自分の声にコンプレックスを持っていたいう彼女は、当初誰かに歌ってもらうために曲を作っていた。そのため、彼女の中で“ソングライターの大塚 愛”と“シンガーの大塚 愛”を意識して使い分けることができ、様々な楽曲を表現することが可能になる。

その自己プロデュース能力や作家としての才能が認められたこそ、トミタ栞の作品プロデュースや安藤裕子への楽曲提供などが実現したし、絵本作家やイラストレーターといったクリエイティブな活動も音楽活動を同時進行できた。

“大塚 愛は今こういうことをやりたいがっているんだ”と発信していく

クレジットの名義を2010年以降“愛”から“AIO/aio”に変えたことも、自分でありながら自分ではない大塚 愛を客観的に見ることができたから。これまでのイメージを一新する「Re:NAME」を発表することに迷いがなかったのもそのためだろう。

この「RE:NAME」を機に、大塚 愛は聴き手に“大塚 愛は今こういうことをやりたいがっているんだ”という意思表示を楽曲を通じてしっかりと伝えるようになった。

そして、エレクトロを基軸にしたアルバム『LOVE TRiCKY』があったからこそ、約2年ぶりに発表したアルバム『LOVE HONEY』の中には、リアルな大塚 愛の“今”があると信じられるし、彼女が「過去や未来や他人の評価に捉われずに、私をもっと生きよう」と高らかに宣言できる生き方を刻んだ「私」に共感・共鳴する女性が多いのだろう。

『AIO PIANO』と題したピアノ弾き語りライブを行っているのも、自分がピアノと1対1になったときにしか生まれない緊張感で、何ができるのかを追求し、彼女は自分自身の今を知ることができるからだろう。今を知ることで、アルバム『LOVE HONEY』の最後に、「日々、生きていれば」のような自分の足でしっかりと歩みを進むことを決めた歌を残す覚悟が生まれたのだと思う。

結婚、出産を経て、人間味を増した大塚 愛。その姿こそがリアル

大塚 愛は今をちゃんと生きている。今の自分を包み隠さずに見せている。結婚をし、母になった大塚 愛、30代になった大塚 愛の生き方が輝いているからこそ、久しぶりにその楽曲を耳にした人たち、10代の頃に「さくらんぼ」や「プラネタリウム」を聴いていた人たちや子供の頃に見ていたアニメのタイアップ曲が実は大塚 愛の歌だったんだ! と今さらながら知った人たちにも、今の彼女の歌が支持されているのだと思う。

アーティストにとって、最新の作品がいちばん好き、いちばんカッコ良いと受け入れてもらえることは大きな喜びであり、次の作品への原動力となる。あらたなスタートラインに立った今、そしてこれからの大塚 愛がとても楽しみだ。

TEXT BY 松浦靖恵

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

M-ON! MUSICの最新情報をお届けします。

この記事に関するキーワード

この記事を書いた人