新海誠監督も魅了された秦 基博の音楽。ヒット曲「ひまわりの約束」以降に変化が……

映画「STAND BY ME ドラえもん」主題歌で全国の知名度に

2006年11月にシングル「シンクロ」でデビューした当時、秦 基博には“鋼と硝子でできた声”というキャッチフレーズが付けられていた。

彼の声が作り出す唯一無二の音楽に惹かれた人たちはデビュー当時から数多くいたとはいえ、やはり全国的に秦 基博の名前と存在が知られるようになった大きなきっかけは、2014年に公開された映画「STAND BY ME ドラえもん」の主題歌として書き下ろし、自身最大のヒット曲となった「ひまわりの約束」だろう。

秦はこの曲の歌詞を書くときに、子供たちも観る映画ということを踏まえ、シンプルな言葉を使うことを心掛けたということで、「ひまわりの約束」はドラえもんとのび太の大切な繋がりを描いた映画のストーリーに寄り添う主題歌としての役割りをしっかりと果たしている。私たちが当たり前のように過ごしている日常、そして当たり前のように思えることの中にこそ、かけがえのない大切なものがあるというメッセージを聴く者に優しく投げかけた。

「STAND BY ME ドラえもん」は“大人も泣ける映画”として大きな話題を呼んだが、「ひまわりの約束」の中にいる“僕”と“君”の距離感や温度感が、この歌を聴いた幅広い年代の人たちのそれぞれの想いと人生に重なり合い、日常の中で大切に生き続けているからこそ、リリースからすでに2年半以上が経った楽曲にも関わらず、「ひまわりの約束」のイントロを聴いただけでも泣けてきてしまうという大人たちからの反応や反響が、いまだに秦の元に届いているのだろう。

「ひまわりの約束」大ヒット以降の変化球と挑戦

秦 基博は「ひまわりの約束」のヒットによって何か変わったのか。彼はこれまでの数々の楽曲の中でも、人と人との距離感、触れなければわからない温もりや感触、色や景色、繊細な心の動きをていねいに切り取り、自分の人生や生活を通して見てきたものを自分の言葉で提示し、あの“鋼と硝子でできた声”で伝え続けてきたシンガーソングライターだ。

ただ、「ひまわりの約束」は彼の音楽人生において決して特別な作り方をした作品ではない。この曲を最初の入り口として秦 基博のことを知った人たちにとっては、アコースティックなサウンドやミディアムバラードの印象が強いアーティストかもしれない。

けれど「キミ・メグル・ボク」のようなライブで盛り上がれる曲、打ち込みで音を構築していく「ダイアローグ・モノローグ」、あえて怒りや憤りといった感情をぶつけた歌詞を載せた「Q&A」と、その時々で様々なサウンドと言葉選びで彼は秦 基博流の変化球を見せている。

そして、「ひまわりの約束」で多くの人たちに秦 基博の存在を知ってもらえたことでより自由度が増し、最新アルバム『青の光景』では、作詞作曲のみならずアルバム収録曲すべての編曲を手掛けるという初挑戦ができたのかもしれないし、2016年第一弾シングル「スミレ」のジャケットではおじいさん姿になったり、ミュージックビデオにダンサーを登場させるという初の試みができたのではないだろうか。

作品とマッチし、相乗効果をもたらす秦 基博の音楽

元々、秦 基博の音楽に惹かれている人は数多く、CMソングやドラマ主題歌などで彼の楽曲は数多く起用されてきたが、ここ数年で映画主題歌・テーマソングを手掛けることが増えた。

現在、映画「君の名は。」で注目を浴びている新海 誠監督が手掛けた映画「言の葉の庭」のイメージソング「言ノ葉」、映画「あん」(川瀬直美監督)主題歌「水彩の月」、映画「聖の青春」主題歌「終わりのない空」と、どれもが話題作ばかりだ。

しかも監督自らが秦の音楽を使いたいとオファーすることが多いという。監督が思い描く絵の中に秦 基博の音楽が鳴り、相乗効果を生む。

秦 基博の音楽が“映像”と相性がとてもいいのは、彼がデビュー当時からやってきたこと、つまり彼自身が描く色や景色、ていねいに切り取った繊細な心の動きが、映画を観た幅広い年代の人たちのそれぞれの想いと人生に重なり合うことを、監督自身も十分に知っているからだろう。

2017年には初の単独スタジアム公演も

11月8日にデビュー満10周年を迎えた秦 基博は、現在11月1日の横浜アリーナから始まり、12月23日福岡マリンメッセまで続く初のアリーナツアー『HATA MOTOHIRO 10th Anniversary ARENA TOUR “All The Pieces”』を開催中。そして、早くも2017年5月には初の単独スタジアムライブ(横浜スタジアム)が決定している。

以前、彼は「そのときどきの今の自分の表現があると思うので、これから自分がどんな景色を見るのか、どんな人生を送るかで自分が歌おうとすることは変化するかもしれない」と言っていた。

デビュー11年目に突入した秦 基博。少し気は早いが、初のアリーナツアーと初のスタジアムライブを経た彼がどんな新しい歌を私たちに届けてくれるのか、とても楽しみでしょうがない。

TEXT BY 松浦靖恵


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