今の清水翔太は、アナタの知ってる清水翔太とは違う……?

10月に発売された清水翔太の最新シングル「My Boo」が、ネットを中心に爆発的な広がりを見せている。この曲は、愛する女性に向けて普段照れくさくて言えない男心を歌ったラブソング。

“俺も全然子供だしね 喧嘩して嫌んなって だけどbye-byeする気はないぜ”“俺が君を守ってるようで 時に君が俺を守ってる”など、“僕”ではなく“俺”という一人称を使って本音をストレートに綴った歌詞が同世代の男性の共感を集める一方、彼氏からそう言われたいと望む乙女心もくすぐったようで人気が若い女性にも飛び火。

Mix Chanelなどの動画投稿サイトには、人気読モの松本鈴香が投稿した動画をはじめ、この曲を使ったカップル動画や「歌ってみた」系の動画が続々とアップされている。

2008年のデビュー以降、「君が好き」に代表されるような普遍的なラブソングを数多く生み出し、ミリショーの愛称で知られる加藤ミリヤとのコラボレーションではヒットを連発してきた清水翔太。

小田和正を迎えた「君さえいれば」、仲宗根泉(HY)を迎えた「366日」といった話題曲も持つ彼だが、最近は作風を徐々に変化させ、そのイメージを更新している。


その転機となったのは昨年7月に発売したシングル「BYE×BYE」。作詞作曲をこなし、2013年発表の「WOMAN DON’T CRY」からはトラックも自身で手がけるようになっていた彼だが、「BYE×BYE」では、元来のソウル/R&B/ヒップホップ志向を開示し、当時USで主流だったオルタナティブR&Bを展開、シングルで初めてボーカルにオートチューンをかけるなど、ヒップホップ路線へと大きくシフトチェンジし、ビジュアル面も含めて攻めの姿勢をみせた。

その姿勢をさらに強く押し進めたのが、隅々までこだわりまくって作った今年3 月発売の最新アルバム『PROUD』。この作品ではジャズやファンク、ブルースといった古き良き音楽のテイストもちりばめながら、自身のルーツである90年代R&B/ヒップホップや、現行のUSトレンドであるトラップやアンビエントR&Bも消化。

音楽プロデューサー/クリエイターとしての優れた才覚を発揮すると同時に、ラップを多く取り入れた唱法や、自身に渦巻く葛藤や苦しみを婉曲的に表現した歌詞など、通俗的なJ-POPとは一線を画すサウンドと歌詞で、まったく新しい清水翔太、もとい彼がデビュー以来ずっと望んできた自身の音楽人としての在り方を打ち出してみせた。

そうしてコアな作品を届ける一方、同作を引っさげた全国ツアーでは日本武道館2daysと大阪城ホールを満員にするほどの人気をもつのが清水翔太の魅力。

その武道館公演のMCでは、デビューからの9年間の葛藤や、『PROUD』を作りあげるまでの苦悩を赤裸々に語り、「普通(メジャーでは)こんなアルバムは作れないんだって!」と激白。「でも、俺の才能とかやり方を信じてくれて、尖ったことをさせてくれた」とスタッフへの感謝を表し、「俺は音楽しか作ることができない」と改めて宣言。

最後には「このいちばん大切なとき、このいちばん苦しいときに支えてくれてる今日来てくれてるみんなとまた会いたい」と呼びかけ、集まったファンの心を熱くさせた。苦しみもがきながらも、紆余曲折を経て、長年求めた自由な創作表現を勝ち取った清水翔太。彼にこんな闘う姿勢や信念の強さ、音楽にかける熱意があったと想像していた人は案外少ないのではないだろうか。

実は冒頭の「My Boo」は、こうした物語の果てに、今度は『PROUD』の感覚をキャッチーに昇華しようという試みで作られた曲。言うなれば、コアさとわかりやすさの両方を追求した美味しさ2倍の楽曲なのだ。

自身に宿るポップネスと良い意味でのマニアック志向を絶妙バランスで共存させ、音楽性としても立ち位置としても日本の音楽界で希有な存在になりつつある清水翔太。これからの彼がどんな新しい扉を開けていくか、期待したい。

 

TEXT BY 猪又 孝(DO THE MONKEY)


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