リオデジャネイロ五輪の男子テニスシングルス3位決定戦において、日本代表の錦織 圭選手が、スペイン代表のラファエル・ナダルに勝利し、銅メダルを獲得した。
オリンピックの男子テニスでのメダル獲得は、なんと96年ぶり。その歴史的快挙に日本中が盛り上がっている。そんな偉業を達成した錦織選手だが、彼の心の支えとなってきたあるトラックメイカーの存在を、皆さんは知っているだろうか。
「Jazzy HIPHOP」の第一人者、Nujabes
錦織選手が、“最もお気に入りのミュージシャン”としてこれまで何度も名前を挙げてきたのが、トラックメイカーのNujabes(ヌジャベス)だ。
1995年から渋谷を拠点に活動をスタートさせたNujabesは、ヒップホップにジャズの要素を取り入れた「Jazzy HIPHOP」というジャンルの第一人者。
往年のジャズやソウルからサンプリングされたフレーズを、ヒップホップ的なセンスで再構成し、心地よくループさせる唯一無二の楽曲には、日本のみならず、世界中に多くのファンがいる。
「Nujabesの曲は聴いていると心が穏やかになり落ち着きます。一つひとつの曲に物語があり背景が見えるようで、どっぷりとその世界観に浸れます」
そう語る錦織選手は、試合前にNujabesの曲を聴くことで気持ちをリラックスさせ、精神統一をしてから試合に臨んでいたという。
盟友・Shingo02。彼のリリックの虜になる錦織選手
Nujabesの音楽活動を語るうえで、欠かすことのできないのがラッパーのShingo02である。高校、大学時代をカリフォルニアで過ごした彼は、英語と日本語の2ヵ国語で流暢にラップをする本格派のバイリンガルラッパーだ。
Nujabesの代表作「Luv(sic)(ラブシック)」シリーズ(2001年〜)も、Shing02をラッパーに迎えて制作された。Nujabesのメロウなビートに乗せて、Shing02が“音楽の女神に宛てて書いた手紙”の内容をラップする本シリーズは、錦織選手も大のお気に入り。錦織選手は、楽曲はもちろんのこと、Shing02によるリリックの持つ世界観に惹かれたという。
好きすぎるあまり、錦織選手自ら選曲したコンピを発売
トラックメイカーとして、一時代を築いたNujabesだが、2010年に交通事故によって、36歳の若さでこの世を去った。
彼の死後、遺されたトラック「Grand Finale」を宇山寛人がリミックスし、Shing02がラップを乗せることで、楽曲「Luv(sic) Part6」を制作。Nujabesの意志をふたりが引き継ぐという形で、12年続いた「Luv(sic)」シリーズを完結させた。
また、Shing02らのみならず、錦織選手もNujabes作品の素晴らしさを伝えるべく、アクションを起こす。それが2016年、Nujabesの命日である2月26日にリリースされたコンピレーションアルバム『KEI NISHIKORI meets Nujabes』だ。
本作には数あるNujabesの楽曲のなかから、錦織選手自らが選曲した曲を収録。“錦織圭がヒップホップのコンピレーションアルバムで、選曲を担当する”という意外性から大きな話題となった。
今回の銅メダル獲得のように錦織選手が活躍する度、彼のお気に入りの音楽として話題となるNujabes。それは音楽ファン以外に、Nujabesの名が知られる絶好の機会となっている。今後も、錦織選手と共に、Nujabesの音楽は輝き続けるだろう。
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