世界で話題のコンゴのファッション軍団「サプール」を生んだミュージシャンを知っていますか?

コンゴの超お洒落集団「サプール」って何?

アフリカ大陸の赤道のやや南、左寄りにあるふたつの国、コンゴ共和国とコンゴ民主共和国。これらの国に、「サプール(Sapeur)」というファッション軍団が存在することが、2014年頃から世界的に話題になっています。

フランス語で「お洒落で優雅な紳士協会」(Société des ambianceurs et des personnes élégantes)の頭文字を取ったのがSAPEで、そのSAPEを楽しむ人々、という意味でSapeurと呼ばれているそうです。

埃色のストリートを、極彩色のブランドスーツや靴、ステッキでビシッとキメて歩き、しかもその服は、何ヵ月もかけてお金を貯めて買うというサプールたち。

海外では写真集やテレビ、ギネスビールのCMにも登場し、ファッション界ではポール・スミスやクリスチャン・ルブタンも、サプールにインスパイアされたコレクションや広告を発表。

ここ日本でも、2014年にNHKの番組で紹介されて注目を集め、今年3月、渋谷西武で行われたサプールの写真展も大盛況でした。

そんなサプールのルーツに、あるミュージシャンがいる──というのが今回のテーマなのであります。

 

サプールの王様、パパ・ウェンバ

そのミュージシャンとは、パパ・ウェンバ。コンゴ民主共和国出身、アフリカンミュージック界を代表するひとりで、グループ「Viva La Musica」を率いて、1970年代からコンゴの音楽「ルンバ・ロック」(または「リンガラ・ポップ」)を世界中に広めました(日本にも1986年から度々来日)。

御年66歳で今もバリバリ現役のパパ・ウェンバですが、彼は「サプールの王様」として、他のサプールたちから大いに崇められているのです。

というのも、サプールのルーツは1920年代からあったようなのですが、植民地支配からの独立と混乱で途絶えてしまっていました。それを復活させたのが、国民的人気歌手パパ・ウェンバでした。

「お洒落をやめたら俺は俺じゃなくなる」と言い切る彼は、アルマーニ、シャルル・ジョルダン、ヨージ・ヤマモトなど、一流ブランドの服を着てステージで歌い、彼に憧れた人々によってサプールのムーブメントが復活したのです。

またパパ・ウェンバは、1965年に独裁者モブツ・セセ・セコが、西洋の影響を排除しようと、国民に「国民服」を強要したにも関わらず、サプールであり続けたとも言います。

なぜそこまで、パパ・ウェンバやサプールたちはファッションにこだわるのでしょうか。その理由は、サプールとはプライドであり、生き様でもあるからです。

植民地支配、独裁政治、内戦に苦しんできたコンゴにおいて、お洒落かつエレガントであることは武器を持たないことを意味し、つまりは平和への願いの象徴でもあるのです。

パパ・ウェンバ「Yolele」(1995年)。カラフルな布の中で衣装をとっかえひっかえ、さすがサプールの王様。

 

せっかくなのでコンゴ音楽に触れてみよう

それでは最後に、サプールと同じくらい強烈なインパクトとオリジナリティをもつ、コンゴのアーティストたちをチェックしてみましょう。

 

◎コノノNo.1

アフリカの伝統楽器、指で金属の細い棒を弾いて演奏する親指ピアノ(カリンバ)。それをアンプにつないで音を増幅させた、爆音人力ミニマルトランスグループ。

自動車部品の磁石を使ったマイク、車のホイールを改造したメタルパーカッション、50年代のラジオ放送で使われていたスピーカー、バッテリーなど、すべてジャンク品からの手作り。ビヨークの「Earth Intruders」(アルバム『Volta』収録)にも参加している。

 

◎スタッフ・ベンダ・ビリリ

日本でも2010年に公開された映画「ベンダ・ビリリ! ~もう一つのキンシャサの奇跡」で世界的に有名になった、コンゴ民主共和国の車椅子や松葉杖のミュージシャン、ストリートチルドレンらで構成されるバンド。

演奏するのは、空き缶にギターの弦を1本張っただけの「サトンゲ」をはじめ、廃材を工夫して作った楽器。ルンバとレゲエとR&Bの哀愁がミックスされたグルーヴ、そして力強いたたずまいに圧倒されます。

 

彼らの、逆境の中から生まれる輝きは、なぜこんなにも心を揺さぶるのでしょうか。それは、豊かさに慣れきった私たちの日常に対して、表現することの意味や必然性を強く問いかけてくるからかもしれません。

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