今さら人に聞けない、プリンスの偉大すぎるその功績

アメリカのミュージシャン、プリンスが4月21日にミネソタ州の自宅で他界した。1978年にアルバム『For You』でデビューしたプリンスは、作品制作においては徹底した完璧主義を貫くが、楽曲の歌詞などでは奥深い人間性を顕にする、という二面性を持ち合わせ、その中性的なルックスと、ロック、ポップ、ファンク、ソウル、ブルース、ジャズなど多種多様なジャンルを取り入れた音楽で人気を博したアーティストである。

オリジナルアルバムだけでも51枚もリリースしており、それらの他にも様々なリミックス集や、数えきれないほどのブートレッグ版が流通されている。アルバムとシングルの総売り上げ枚数は1億2000万枚以上にも及ぶと言われている。

名実ともに唯一無二の存在であるプリンスは、デビューアルバムの制作では作詞作曲、および楽器の演奏からプロデュースまですべてをひとりで行ったという逸話をもつ多才なミュージシャンであり、1980年代以降にはレボリューション、ニュー・パワー・ジェネレーションといったバックバンドを従えながら数々の作品を世に送り出してきた。

しかし、デビュー間もない頃にローリング・ストーンズの前座を担った際、彼が黒人であるということでローリング・ストーンズのファンから激しくブーイングを浴びせられて、ライブを途中で終了せざるを得ない事態となり、ショックのあまり故郷であるミネアポリスへ飛行機で帰ってしまう、という出来事もあった。

そんな彼の楽曲をカバーするアーティストも多く、シンディ・ローパー、チャカ・カーン、ジョン・メイヤーなど、挙げ始めたら枚挙にいとまがないほど数々のアーティストに影響を与えていた。

全世界のSNS上では彼に対する多くの追悼の言葉が寄せられており、他界の報を知ったミック・ジャガーは、「プリンスは革新的なアーティストであり、素晴らしいミュージシャンで作曲家だった。彼は、独創的な作詞家で驚くべきギタープレーヤーだった。彼の才能は無限だ。彼はこの30年で最もユニークでエキサイティングなアーティストだった」と言葉を綴った。

また、オバマ大統領も「彼は秀逸な演奏家であり、卓越したバンドリーダーであり、しびれるようなパフォーマーでした。“強い精神はルールを超越する”とかつてプリンスは言いましたが、誰よりも強く、大胆で、創造的な精神を彼はもっていました」と称賛の言葉を述べている。

今回は、後にも先にも現れないであろうポピュラーミュージック界の革命児プリンスのキャリアをさかのぼれる楽曲を紹介する。

 

1.「Why You Wanna Treat Me So Bad?」(アルバム『Prince』収録)

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ギターとキーボードのリフが印象的なポップナンバーで、終始ファルセットで歌い上げるボーカルが甘ったるく響く。ギターソロは特に聴きどころで、テクニックもさることながら突き抜けるようなギターのサウンドを聴いても、彼がギタリストとしても秀でていたことがわかる。

 

2.「Darling Nikki」(アルバム『Purple Rain』収録)

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セクシャルで卑猥な内容の歌詞が多いと言われているプリンスの曲のなかでも、かなりストレートな表現が目立つ。“ホテルのロビーで雑誌片手にマスターベーションしてた”ニッキーという女性と出会ってから別れるまでという内容で、映画「Purple Rain」の作中でこの曲を演奏する際、後半で奇声とともに倒れこみ腰を振るパフォーマンスは見もの。

 

3.「Kiss」(アルバム『Parade』収録)

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シングルカットされたこの曲は、ビルボードの週間チャートで全米1位を記録した。1986年にアメリカでヒットした曲を挙げていくと、ディオンヌ・ワーウィック&フレンズの「That’s What Friends Are for」、ロバート・パーマーの「Addicted To Love」や、ペット・ショップ・ボーイズの「West End Girl」などR&B界の大御所がリリースした曲や、打ち込みを大胆に使用したポップナンバーなどがあるが、そうした楽曲のなかで、ベースラインがないミニマルなファンク調のこの曲をヒットさせてしまうプリンスには、やはり時代の流れとは別の場所にいたということが感じられる。

 

4.「Letitgo」(アルバム『Come』収録)

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1990年代になりようやくプリンスが時代と融合し始めた頃の曲で、リズムはファンクを基調としつつも、サビのリフレインには当時流行っていたR&Bなどの要素も垣間見える。ファルセットを中心に、通常の音域とそのワンオクターブ下の音域でメロディを歌っているが、これはかねてからのプリンスの特徴のひとつである。

 

5.「Clouds」(アルバム『Art Official Age』収録)

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近年発表された曲で、イギリスの若手シンガー、リアンヌ・ラ・ハヴァスとのデュエットがスムーズな雰囲気を醸し出している。曲調としては近頃のR&Bを基本としつつも、以前ほど豪快ではないにせよギターソロを入れていたりと、プリンスらしさが随所に散りばめられている。60代を前にして、いまだに彼の書く曲は瑞々しさを失わずにいる。

 

正直これだけで彼の偉業を辿りきることはできない。なぜなら、彼はアルバムを作るごとに多数の曲を書くが、どんなに秀逸な曲であってもアルバムのコンセプトにそぐわなければ収録しないため、未発表音源が膨大にあると言われているからだ。

今後は未発表音源がリリースされるごとに、「彼の意に反している」「いや、聴きたいだろ!」と物議が起こりそう……。

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