音楽界随一のライダー好きが最新作「仮面ライダー1号」を観てきたが……【みんなの映画部】

Base Ball Bearの小出祐介が部長となり、ミュージシャン仲間と映画を観てひたすら語り合うプライベート課外活動連載。ミュージシャンのなかで1、2を争う小出部長が満を持してシリーズ最新作「仮面ライダー1号」を観賞。レジェンド登場の話題作にご満悦かと思いきや……。


活動第24回[前編]「仮面ライダー1号

参加部員:小出祐介(Base Ball Bear)、福岡晃子(チャットモンチー)、オカモトレイジ(OKAMOTO’S)

意義があるけど「なんでこうなったの?」っていうところが多かった

──今回は小出部長の提案によって『仮面ライダー1号』。ご存じ、日本を代表する人気特撮ヒーローシリーズの生誕45周年記念作品となります。では、まずは恒例のひと言をどうぞ!

小出祐介 うーん。あのぉ……総評としてはなんとも言えない映画だなと(笑)。

福岡晃子 複雑なひと言(笑)。

小出 いや、だってそれは、やっていること自体にはものすごく意義があるから。

オカモトレイジ レジェンドのキャラクターを、実際に初代仮面ライダーを演じた藤岡弘、さん(現在69歳!)が演じるという。

小出 そう、本物の「本郷猛」(ライダー1号の正体の名前)が出てくるんだもん。これをダメとは言いにくいでしょう。作られたことに意義があるというか。ただ作劇としては相当いびつというか。「なんでこうなったの?」っていうところが多かったですね。トータルの印象では。

──どの辺がいびつ?

小出 まず、脚本のクレジットを見て驚いたんですよ。井上敏樹さんという方なんですけど、普段の作風と全然違ったので。井上さんは平成「仮面ライダー」シリーズ初期を中心に、テレビ版も劇場版も多くの作品を担当されていて。

最初は「仮面ライダークウガ」に参加されて、「仮面ライダーアギト」でメインライターを務めて、「仮面ライダー龍騎」もシリーズ半分くらいを担当されて、そのあとの「仮面ライダー555(ファイズ)」では全50話をひとりで担当されたんです。

テレビシリーズ全部をひとりで書くってことは、普通やらないんですよ。大体、数人の脚本家さんがローテーションで回していくんですよね。これは特撮だろうがアニメだろうが、ほとんどそうなんですけど。

レイジ 「サザエさん」とかでも、クレジット見るとそうなってますよね。

小出 うん、そうやってどんどんストックしながら作っていく。じゃないと毎週の放映に製作が追いつかないんですよ。それが基本なんですけど、「555」では井上さんが全部書ききって。しかも骨太でめちゃめちゃ面白い作品だった。

速筆で有名な井上さんだからできたことだとは思うんですけど。仮面ライダーファンからの信頼も厚い方です。

──従来のヒーロー像に批評的なアプローチで挑んだ脚本家さんだと言えますよね。

小出 そうですね。ゆえに、敵味方どちらにも壮絶な最期を遂げるキャラが多かったりするし、物語も典型的な勧善懲悪にならないんですけど、熱過ぎるほど、“ヒーローもの”としてのカタルシスを感じさせてくれるんですね。

ちなみに井上さんは、映画「仮面ライダー THE FIRST」「仮面ライダー THE NEXT」という石ノ森章太郎さんの原作版や、「仮面ライダー」第1作目初期の怪奇色やシリアスさを抽出した、“リブート版「仮面ライダー」”といえるような作品も担当されているんですけど、実は、井上さんのお父さんも伊上勝さんという脚本家の方で、「仮面ライダー」は伊上さんが担当されていた作品なんですね。

つまり、親子二代で別々ではあるけど、仮面ライダー1号=本郷猛を描いてきたんですよ。で、今回ついにお父さんが描いてきた正史の仮面ライダー1号=本郷猛を担当することになった。継ぐ形になった、と。

しかも、今作には本郷猛を支えてきた立花藤兵衛の孫も出てくる。もうメタ段階ですでに熱い展開じゃないですか(笑)。で、観てみたら、「あれ?」と。井上さんっぽくないなぁという印象で。

福岡 へえ~。

小出 本郷猛が学生に「生命は愛の連瑣なんだ」みたいなことを話す説法シーンとか特にね。普段、説明的な場面を書かない方なので、あくまでも「藤岡弘、ありき」の企画だったと思うんです。

 

ちゃんと本郷猛が画面に出てきたのは40年ぶり

レイジ じゃあドラマやセリフにも藤岡弘、のテコ入れが?(笑)

小出 それはわかんないけど。ただ本郷猛というキャラクターがレジェンド過ぎるから、藤岡さんの思い入れが非常に強いのは間違いない。最初の当たり役でもあるし。

レイジ 個人的に印象が強いのは「藤岡弘、探検隊シリーズ」(テレビ朝日「スイスペ!」枠)とか。

小出 あれも当たり役だね。その藤岡さんが本郷猛というキャラクターを作ってきたっていうのも、すごくデカいと思うんですよね。なにせアクションもやっていたぐらいだから。

──“中の人”もやってる。

小出 そう、スーツアクターもやってる。

レイジ そうなんですね。

小出 あと、藤岡さんがアクションの撮影中に大怪我をして主役を一時交代することになって、「仮面ライダー2号」の一文字隼人が生まれたんだよね。

逆説的にだけど、怪我していなかったら「仮面ライダー1号」という考え方も生まれなかったし、“2号ライダー”というシリーズの恒例も生まれなかった。それくらいシリーズに与えた影響は大きいんだよ。

で、藤岡さんが演じる本郷猛は「仮面ライダーストロンガー」のスペシャル編「全員集合!7人の仮面ライダー!!」(1976年)の客演が素顔でちゃんと登場した最後で、その後も「1号」の客演はあったんだけど、本郷猛の出演はなかった。

2年前の映画「平成ライダー対昭和ライダー 仮面ライダー大戦 feat.スーパー戦隊」(2014年)では久しぶりに藤岡さん演じる本郷猛が出てくるんだけど、パラレルワールドなので、いわゆる正史ではないんですよ。だから、“あの”本郷猛が画面に出てきたのは実に40年ぶり。

福岡 なるほど~、じゃあファン的にはすごいことだよね。

 

C-20160409-MK-2100劇場を出て、いつもの喫茶店へ向かう3人。クリティカルな作品を観た後は話をしたくてウズウズしてたりしますが、そうでなかったときは言葉数が少ないもので……。

C-20160409-MK-2101パンフレットを読みふけるレイジくん。真剣に読み込んででいるようで、実は過去の怪人の解説以外はあまり興味なさそうでした。

 

小出部長がなぜダメだったのかをさらに語る[後編](4月10日配信予定)につづく

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