祝・宇多田ヒカル復活!1998年と現在のシーンを繋ぐ今こそ読むべき本「1998年の宇多田ヒカル」の魅力

宇多田ヒカルの新曲が、2016年4月から放送されるNHK連続テレビ小説「とと姉ちゃん」の主題歌になることが発表された。

長らく音楽活動を休止していた彼女が、この曲で本格的なアーティスト活動を再開することも同時に発表され、大きな話題となっている。

そんな電撃的な活動再開の発表直前に、「1998年の宇多田ヒカル」(新潮新書刊)というタイトルの書籍が発売された。

本書では1998年の音楽シーンをただ懐かしいものにして振り返るのではなく、今の音楽シーンにも影響を及ぼしているものとして分析している。そんな今こそ読むべき音楽本、「1998年の宇多田ヒカル」を紹介しよう。

 

CDが史上最も売れた1998年

著者は、本書で単著デビューとなる音楽ジャーナリストの宇野維正。宇野が1998年に着目した第1の理由は、「CDが史上最も売れた年である」からだ。

1998年の日本のCD総生産枚数は4億5717万3000枚、総売り上げは5878億7800万円。これは2014年と比較すると、枚数が約2.7倍、売上が約3.19倍。

宇野はこのデータを元に、1998年の平均的な社会人や学生は、月に2枚のCDを購入し、年間で3万円分のお金を使っていたと分析しており、当時の日本の音楽シーンがどれほど大きなマーケットだったのかがわかる。

 

今も人気の持続する「奇跡の98年組」

また本書のタイトルは「1998年の宇多田ヒカル」ではあるが、1998年は宇多田ヒカルだけがデビューした年ではない。実は椎名林檎、aiko、浜崎あゆみの3人の人気女性シンガーのデビュー年でもある。

宇野は1998年にデビューしたこの4人を、1982年にデビューした松田聖子、中森明菜、小泉今日子ら「花の82年組」になぞられて、「奇跡の98年組」と呼んでいる。

2014年、2015年も連続で紅白歌合戦に出場し、日本の芸能界・歌謡界に存在感を示し続けている椎名林檎。「奇跡の98年組」のなかでも近年、最も高いCDセールスを継続的に記録しているaiko。多くのオーディエンスの前で勢力的にライブパフォーマンスを行っている浜崎あゆみ。

「奇跡の98年組」はデビューから18年が経過しても、日本のポップミュージックにおいて決して「過去の人」ではないことを、宇野は指摘している。

 

知られざるアーティスト同士の関係性


「1998年の宇多田ヒカル」が面白いのは、「奇跡の98年組」の4人を個別に論じるのではなく、宇多田ヒカルがいたから椎名林檎がいた。椎名林檎がいたからaikoがいた、というようにアーティスト同士の関係性から音楽シーンを読み解いているところである。

例えば、宇多田ヒカルと椎名林檎の関係。1998年当時に同じ「東芝EMI」に所属してふたりは一夜限りのユニット「東芝EMIガールズ」を結成していた。ライブを行ったのは、1999年に行われた音楽関係者向けのコンベンションライブ「MUSIC TALKS’99」。

前年にすでにブレイクを果たしていたふたりが突如ステージに現れ、ピアノ演奏をバックにカーペンターズの「I Won’t Last A Day Without You」を美しいハーモニーで披露した“事件”も本書では紹介されている。

他にも、お互いを「ヒカルちん」「ユミちん」というあだ名で呼び合っていることや、カバー集『宇多田ヒカルのうた -13組の音楽家による13の解釈について-』のなかで椎名林檎がカバーした「Letters」は、原曲のレコーディング直後に、椎名林檎がスタジオの卓から直接宇多田ヒカルに聴かせてもらっていたことなど、超有名アーティスト同士の知られざる関係性が描かれている。

「1998年の宇多田ヒカル」には、他にも「CD信仰はなぜ起こっていたのか?」「アイドルとアーティストとは何が違うのか?」「渋谷系は本当にすごかったか?」など、日本の音楽シーンにジャーナリストとして切り込む大胆な分析が多数掲載されている。

1998年から続く現在の音楽シーンを考えるうえで必読の一冊だ。

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