「パンクの始祖」と言われてまず思い出したのはどのバンドだろうか。
1974年にニューヨークで結成されたラモーンズ、そして1976年にイギリスで結成されたセックス・ピストルズ。このふたつのバンドを思い浮かべた人が多いのでは。
どちらのバンドもパンクを語るうえで絶対に欠かせないバンドではあるのだが、ラモーンズよりも早い1973年にパンクサウンドを完成させていたというバンドがいる。それが「DEATH」だ。
1971年にアメリカ、デトロイト州の黒人3兄弟で結成されたDEATH。元々はR&Bバンドだったが、アリス・クーパーのライブに圧倒され攻撃的なサウンドを目指すように。
ラモーンズやピストルズが登場し絶大な支持を得ていく一方で、当時黒人のパンクバンドは見向きもされなかった。
一時はメジャーレーベルとの契約寸前までこぎつけるが、バンド名の改名を迫られ契約は白紙に。バンドはその後もレーベルに断られ続け、1977年に解散してしまう。
一見よくありそうな話だが、この後彼らに奇跡が起こる。なんと30年以上もの時を経て、彼らの音楽が世間に注目され始めたのだ。
2009年にドラッグ・シティ・レコードから1974年のセッションの音源がリリースされ、バンドは復活を遂げる。
翌年にはケンタッキー州で行われたフェス『ブームスラング』に出演し、2011年から現在までに3つのアルバムをリリースするなど、トントン拍子に事が進み、バンドは一気にスターへの道を駆け上がる。
なんだかものすごいことが起きているけど、一体どんなバンドなんだ……? DEATHの公式YouTubeの中から2本の動画を紹介しよう。
2013年8月にニューヨーク、ブルックリンで開催された『AFROPUNK FEST』でのライブ映像。20万人を動員する野外ロックフェスでレニー・クラヴィッツやグレイス・ジョーンズなども出演するアフリカンアメリカ系フェスだ。結構な年齢のはずだが、それを感じさせない勢いのゴリゴリパンクに圧倒される。
「Relief」は1976年にリリースされたDEATHの1stシングル。2015年4月にリリースされたアルバム『N.E.W.』の1曲目に収録されているので、現在でも購入可能だ。シュールでポップな映像は4word Productionsのナスティによるもの。
しかし、なぜ30年もの時を経て彼らの音楽が発掘されたのか? 本当にただの奇跡なのか? 誰もが疑問に感じるであろう、彼らのできすぎたサクセスストーリーの背景には実は家族の深い絆があった。
そんなDEATHのブレイクの秘密を解き明かした映画「バンド・コールド・デス」が2016年1月に渋谷で公開され、現在はオンライン上映も行われている。
この映画では、彼らに起こった30年越しの奇跡の物語が家族の絆とともに描かれている。
楽曲の魅力は言うまでもないが、やっぱりこれだけうまくいったのには他にもちゃんとした理由があったのだ。
DEATHが気になった人はもちろん、このサクセスストーリーの裏側が気になってしょうがない人、家族愛映画に弱い人にも、この映画をおすすめしたい。