SHISHAMO ALBUM「SHISHAMO」ディスクレビュー

SHISHAMO

ALBUM

SHISHAMO

SHISHAMO

GOOD GREATORS RECORDS

2013.11.13 release

<CD>


初恋のように決定的な出会いを

 この十全な感性と表現力はなんだろう。全11曲、50分。誇張ではなく、1秒も退屈な時間がない。本当にどこまでも過不足がないから、必然的な欲求として、聴きながらこのアルバムが終わってほしくないと思う。今春に高校を卒業した3人の女の子たちが、ただただシンプルに歌とギターとベースとドラムを交わらせているだけで、3ピースのガールズ・バンドが体現するロックとポップスにおける魔法をすべて鳴らしてしまっている。

“僕に彼女ができたんだ”、“学校には行きたくないよ”、“君もあの子のことが好きなのかなあ”、“僕じゃ物足りない女の子”、“君といた休日の部屋の匂い それだけ残して 彼女は消えた”、“飽きずに行こう あの街へ”、“あなた今日はなにしてるの? なにしてるの? 教えてよ”、“私は今あのバンドマンに夢中です”、“僕はサブギター”、“君とのことは誰にも 死ぬまで言わないつもりだから”、“この気持ちに気づいたあの日から 私の毎日とても生きづらい”

 楽曲ごとに、僕のような35歳のおっさんがシンパシーを覚えるにはあまりに眩しい情景や感情が目の前に現れる。しかし、宮崎朝子のソング・ライティングには、つねに切なく心地よい動きを見せる絶対的に抗いがたいメロディ・センスと、豊潤な想像力に満ちた天性の作家性があり、だからこそ、彼女が描く物語は限定されたリアリティを超越したファンタジーとなって、あらゆるリスナーをそこに立ち止まらせる。その歌のあり方はスピッツの草野マサムネに通じるものがある。

 そして、宮崎の歌にはある側面において成熟した色気と残酷さを感じさせる。一人称が“僕”の曲もあるが(1曲目「僕に彼女ができたんだ」のみドラムの吉川美冴貴が作詞を手がけている)、それらは逆説的に宮崎自身の“私”という本能的な欲求をあらわにしている。

 メロディの性質や声色も含めてチャットモンチーの橋本絵莉子やaikoを想起させる局面も少なくない。しかし、それがまったくネガティブな要素にはならず(魅力的な女性アーティストほど最初は往々にして〜っぽいと言われるものである)、宮崎の歌もまた作品を重ねるたびに独立した求心力を得ていくに違いないと確信する。

 どうか、一刻も早くSHISHAMOと初恋のように決定的な出会いをしてほしい。 

(三宅正一)

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