禁断の多数決 ALBUM「アラビアの禁断の多数決」ディスクレビュー

アラビアの禁断の多数決

ALBUM

禁断の多数決

アラビアの禁断の多数決

AWDR/LR2

2013.11.20 release

<CD>


正体不明の音楽集団が辿り着いたポップの頂点

 何から書けばいいか途方に暮れてしてしまうが、まず記しておきたいのは、本作は間違いなく超ド級のポップ・ミュージック・アルバムであるということだ。このアルバムは“やばい”を超えて、もはや“まずい”。こんなすごいものを聴いたら、何もかもどうでも良くなってしまうじゃないか。(初めてコレを聴いたときに筆者は“これがあれば、消費税10%になってもいいや。ほかのものいらないし”とワケがわからないことを思ってしまった)

 禁断の多数決の2ndアルバム『アラビアの禁断の多数決』。メンバーの素顔をまったく明かさない状態で、自作のミュージック・ビデオを動画サイトにアップすることから活動をスタート。そのクオリティの高さが話題を呼び、昨年10月に1stアルバム『はじめにアイがあった』をリリース。アニマル・コレクティヴ、ベイルート、MGMTあたりを想起させるポップ・チューン、フィル・スペクターの“ウォール・オブ・サウンド”を再現したナンバー、エレクトロ、ニューウェイブ系の楽曲までを揃えたこのアルバムは、シュアな耳を持つリスナーから高い評価を得た。そして、ポップ・ミュージックに関する膨大な知識と情報、それを独自のセンスで再構築して混ぜ合わせる彼らのスタイルをさらに突き詰めたのが、本作『アラビアの禁断の多数決』というわけだ。

 ストリングスとホーンセクションを取り入れたバート・バカラック風のオープニング・ナンバー「魔法に呼ばれて」、4つ打ち、エレクトロ系の音響を取り入れた現代的なポップ・チューン「トゥナイト、トゥナイト」という最初の2曲だけで完全にノックアウト。初のスタジオ録音、確かな演奏技術を持ったサポート・ミュージシャンの参加も功を奏し、茫然とするほど質の高い楽曲を生み出すことに成功しているのだ。さらに素晴らしいのが、全編を通して“東京っぽさ”が感じられること。あらゆる情報とモノが揃ってい(るように見え)て、驚くほど精密なのに猥雑なところもあって、どこか儚げ。そのイメージを象徴しているのは、繊細で不安定な女の子たちの歌だろう。

 12月12日には渋谷WWWで日本国内初となるライブ“宇田川の禁断の多数決”を開催。個人的にはこのアルバムだけでも充分だが、もし“この先の風景”があるのなら、絶対に観たい。音楽ってすごい。

(森 朋之)

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