
ALBUM
TOMOVSKY
終わらない映画
FAMIRES Records
2013.11.13 release
<CD>
日常という映画の主人公になった気分で
以前、TOMOVSKYにインタビューさせてもらった際の「初めてウォークマン(’79年にソニーが発売した携帯型カセット・プレイヤー)で音楽を聴いたとき、“うわ、映画の主人公になったみたいだ”と思った」という言葉が妙に心に残っていたのだが、このアルバムを聴いて“なるほど、あの言葉の意味って、こういうことだったのかも”とちょっと腑に落ちた。
TOMOVSKYのニュー・アルバム『終わらない映画』。今回は久々のコンセプト・アルバムということで、その中心にあるのは“自意識の削除”だという。トモフ自身の解説によると「自意識の削除ってのは、“ヒトのために生きるってほうが、ラクなんじゃん?”ってあるとき、ふと思ってしまったのがきっかけ」(レコード会社の資料より)ということだが、こんなややこしい話をテーマに選んでしまった以上、“きっと永遠に答えがないような、ちょいと厄介なテーマで大苦労”というのも当然かもしれない。しかし、トモフさんは頑張った。もともと哲学的、宗教的なところにあるテーマを、こんなにもキュートでオルタナティブなポップスへと結びつけられるミュージシャンは、トモフ以外にいないと思う。
そして今回も“うわ、全然考えたことなかったけど、ホントにそうかも!”と目からウロコが落ちまくるフレーズがいっぱい。“明日に期待してるとか/よく言えるな/ムシがいいな”(「さしだぜ」)とか“ヒトのためなら/アタマは回る/自分のコトだと/かたまっちゃうのに”(「ほうき」)とか。おそらく自意識から完全に逃れることはムリだと思うけど、視点をちょっとだけズラすことで——まさにカメラの位置を変えるように——日々の生活はずっと楽になる。このアルバムを聴いているとボンヤリとそんなことを考えてしまうのだった。そうだな、まずは“したいならする/じゃないなら寝る/それは時計が/決めることじゃない”(「日付変更船」)という歌詞を真に受けてみよう。というわけで、ものすごく眠たいから寝ます。今は金曜日の午前10時だけど、特に問題ないですよね。
(森 朋之)