うみのて MINI ALBUM「UNKNOWN FUTURES(&FIREWORKS)」ディスクレビュー

UNKNOWN FUTURES(&FIREWORKS)

MINI ALBUM

うみのて

UNKNOWN FUTURES(&FIREWORKS)

DECKREC/UK. PROJECT

2013.11.13 release

<CD>


“名無しの権兵衛”に名前を奪還させる音楽

ネット上の匿名の悪意、核と放射能、戦争など、報道番組「クローズアップ現代」あたりで特集されそうな題材を描いた曲が並んだ6曲入りミニ・アルバム。ジャーナリスティックなテーマを扱うのは実はかなりリスキーだ。薄っぺらな表現になると、それこそ“あざとい”とか“あくどい”とか叩かれて、炎上しかねない。が、うみのては社会的なテーマを音楽的に表現してエンターテインメントとして見事に成立させている。

タイピングとドラムのリズムに導かれて始まる「UNKNOWN IDIOT」は罵倒、侮蔑、挑発するような歌詞の攻撃力のすさまじさに一瞬たじろぎそうになる。標的は“匿名のバカモノ”だ。これはネット社会で匿名性のもと、増幅する悪意に切り込んでいく歌。彼らはこれまでも「WORDS KILL PEOPLE (COTODAMA THE KILLER)」などの作品で同様のテーマを歌ってきているが、この曲は“俺はお前を見ているよ”という一節にある“俺”の視点が作品にすごみと深みを与えている。考えようによってはちょっとオカルティックな設定だ。“俺”とは誰なのか? 神か悪魔か、作者である笹口騒音か、それとも内なる良心とやらか。尖った歌詞にざらついたドラム、憂いを帯びたピアニカ、硬質なギターなどの音が融合して、行き場のない感情の渦を浮かび上がらせていく。“素朴”“ほのぼの”などの形容詞を付けられることが多いピアニカをこうした殺伐とした世界で生かしていけるところに、このバンドの突出したセンスが表れている。これはただ単に告発し攻撃する歌ではないだろう。問いかけ、覚醒させる歌。

どんなに罵詈雑言のようなきつい言葉を使っても、笹口の書く歌詞はどこか詩的だ。マジカルな歌詞とシュールでスペイシーでリリカルなサウンドが見事にマッチしているのは核をテーマとした「NEW(NU)CLEAR,NEW(NO)FUTURE」。曲の後半の混沌としたサウンド・コラージュには戦慄が走った。対の2曲、「下から見上げる花火、上から見下ろす火花 」と「上から見下ろす火花、下から見上げる花火」でもバンドの自在な描写力が光る。視点、立場が変わると、見える景色も一変する。“ひゅー”という音が一瞬にして風情溢れるものから非情なものへ切り替わっていく。彼らは音楽によって不条理を鮮やかに描いていく。聴き手の感性を刺激するイマジネイティブな歌が並んでいる。これは“名無しの権兵衛”が名前を奪還するきっかけにも成り得る作品だろう。

(長谷川 誠)

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