0.8秒と衝撃。 ALBUM「NEW GERMAN WAVE 4」ディスクレビュー

NEW GERMAN WAVE 4

ALBUM

0.8秒と衝撃。

NEW GERMAN WAVE 4

actwise

2013.11.06 release

<CD>


最短最速で閉塞した世界から脱出させる音楽

かったるい音楽が苦手だ。前置きはいらない。あれこれ説明されるよりも早く、最短最速で天国へと連れてってくれる音楽がいい。そんな気分のときには塔山忠臣(唄とソングライター)とJ.M.(唄とモデル)のユニット、0.8秒と衝撃。の最新作『NEW GERMAN WAVE4』が最適だろう。キレ味抜群。アコースティック調の2曲を除いた7曲すべてが100メートル走のような鮮やかにスタート・ダッシュして、そのまま最後まで駆け抜けていく。テクノもハードコア・パンクもニューウェイヴもプログレもオルタナティブも歌謡曲も飲み込んだエレクトロ・ダンス・ミュージック。刺激的な歌声と削ぎ落とされた強靱なグルーヴと縦横無尽に繰り出されるノイジーなサウンドが肉体はもちろん頭の中までシェイクし、既成概念にまで揺さぶりをかけていく。

ハイスピードで駆け抜けるにはメロディが足手まといになることもありそうだが、「Mad Drumming 7」での山本リンダあたりの歌謡曲を彷彿とさせる展開を始めとして、彼らはメロディすらも加速していくアクセル的な存在にしている。塔山の書く歌詞もソリッドでシャープだ。「Mad Drumming 1」の“ブリブリ”“ハマチハマチ”など、濁音や促音のパーカッシブな響きを駆使することでボーカルまでもが打楽器のように響く。トータリティのある歌詞も特徴的だ。男女ふたりのボーカルという特性を生かしていて、1曲目も“アナタ都会育ち、僕はスラム”というフレーズで始まり、“僕”と“君”とのロミオとジュリエット的な恋の物語を予感させるのだが、どの曲も閉塞感が漂う今の時代の空気とリンクしていて、ヒリヒリした感触までもが伝わってくる。切なさのすぐ隣に切迫感があったり、「FLoWeR」のようにロマンティシズムの背後からシュールでサイケデな空気が滲んだり、どの曲も一筋縄ではいかない。

ハードなグルーヴを備えた7曲にはそれぞれ「Mad Drumming」という言葉に通し番号がつけられている。タイトルも削ぎ落とされていて機能的。このあたりもジャーマンなところか。アルバムのラストはJ.M.のアカペラの歌声で始まる「UKuLeLe HiBisQs」。ここで描かれたラブ・ストーリーにはハッピー・エンドは訪れない。安易な救いはない。だがその替わりに、過去すらも今の瞬間に変換していく音楽や、痛みらも追いつくことのできない早さで疾走していく音楽が鳴り響いている。

(長谷川 誠)

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