MOROHA ALBUM「MOROHAⅡ」ディスクレビュー

MOROHAⅡ

ALBUM

MOROHA

MOROHAⅡ

ROSE RECORDS

2013.11.06 release

<CD>


がむしゃらで丸裸のラップが描く、青春のひとつの像

ジャケットを最初に見たとき、軽い違和感を覚えた。というのは、MOROHA──MCのアフロとギターのUKが奏でる音楽に、思いきりの笑顔はあまり似合わないのでは? と思ったからだ。描いたのは漫画家の新井英樹先生。アルバムの最後の曲「鳩尾から君へ」というタイトルは彼の代表作「宮本から君へ」に掛けたMOROHAからのオマージュなのだろう。

MOROHAの音楽は、アフロのラップをUKが弾くアコースティック・ギターが鮮やかに色づけするというシンプルな構造。ただ、ラップと言っても、いわゆるバックトラック類は使わないので、ヒップホップ的なマナーとは一線を画している。例えば東日本大震災直後に書かれた「今、偽善者の先頭で」あたりはポエトリー・リーディングのようでもある。

そしてMOROHAの歌は、アフロというひとりの男の生きる姿が徹底的に照射されているかのようで、実にリアルだ。彼は夢に燃え、理想に向かい、だけど不安や現実に立ちすくみ、自分自身の行く末について戸惑う心理までラップする。音楽、仕事、恋、友情、家族への思い……。アフロは自分の強さも弱さも、あたたかみも優しさも、ダメさ加減も情けなさも全部さらけ出す。がむしゃらで丸裸。だからどの曲も、すべてが個人のドキュメントとして突き刺さってくるのだ。その生々しさはときに挑発的ですらあるが、彼らはそのぐらいギリギリのところで生きていることをこうして表現しているわけだ。

「げこくのジョー」はボクシング漫画の名作「あしたのジョー」と“下剋上”のダブル・ミーニングだが、この2ndアルバムを貫いているのは、孤独なアスリートを思わせるようなハングリーさである。中には「ハダ色の日々」のような叙情性を持つ曲もあるものの、この歌にしても背後には張り詰めた毎日の生活が見える。だから聴いてて、心がキリキリする曲が多い。そんな鈍色の光沢をまとった緊張感を鋭く突きつけてくるのがMOROHAの世界なのだ。

ただ、以前ライブを観たときには、もうちょっと柔らかみも感じた。それはいかにも普通人といった雰囲気のアフロの風貌によるところもあったと思う。それがこうして音源だけで対峙すると、ストイックに響きすぎる感を受けるのだ。もちろんそうしたキリキリするような感覚こそ彼らの真骨頂なのだが、実際のふたりは……きっと、もっと当たり前に笑ったりバカ騒ぎもするような若者たちだという気がするのだ。

そこで再びジャケットを眺めながら、思った。新井先生がふたりの笑顔を描いたのは、こんなに切羽詰まった音楽だけど、それを鳴らすのを彼らは目いっぱい楽しんでいて、思いきり叫びながら生きているよ、と。そういった感覚を伝えたかったんじゃないだろうか? だとしたら、それはなんて青春的なんだろう! と思う。

MOROHA。オッサンになっても、ジジイになっても、ラップしててほしいコンビである。

(青木 優)

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