藍坊主 MINI ALBUM「S/Normally」ディスクレビュー

S/Normally

MINI ALBUM

藍坊主

S/Normally

トイズファクトリー

2013.11.06 release

初回限定盤/写真 <CD+DVD>
通常盤 <CD>


リスペクトに値する音への飽くなき探究心

 6ヵ月前のミニ・アルバム『ブルーメリー』の“続編”が届いた。先行配信曲「宇宙が広がるスピードで」はいかにも藤森真一らしいメロディックに疾走する青春ソングで、同じく藤森作曲の「冬空」「マッチ」もスピード感、切ないメロディ、ストレートなメッセージという点で藍坊主の王道を行く曲。ただ「マッチ」で歌われる世界は、テーマが10代の葛藤ではなくもっと大人びた男女関係を感じさせるロマンチックなラブ・ソングで、ゆっくりと藍坊主の世界も変わりつつあるのだなという感慨を、長く聴いているファンほど感じるかもしれない。

 一方hozzy(佐々木健太)は相変わらずの独自路線を走っていて、リズムもテンポもくるくる変わる複雑な構成の楽曲を次々と繰り出し、バンドにあらたな風を吹き込み続けている。虫の声のサンプリングやノイズを生かした「虫の気配」、メカニカルなビートに人間的な揺れを加えた「トランスルーセント」の不思議なリズム感など、純粋な耳の楽しみとしてとても面白い。そして渡辺拓郎・作曲の「雨、照らす」は、言わば藤森とhozzyの中間を行くような曲で、軽やかに踊るミドル・テンポのビート、派手ではないが繊細な優しさを感じるメロディが、藍坊主の世界にもうひとつの可能性を付け加えた。全体的にアップ・テンポの明るい曲調が多いので、聴きやすさ、入りやすさという意味では前作以上と言ってもいい。

 アルバム・タイトルの“S/Normally”というのは、ヘッドホンやスピーカーの説明書にもよく書いてある“S/N”(シグナルとノイズ)と、“Normally(標準的に、普通に)”を掛け合わせた造語。アルバムに寄せたメンバーのコメントから推測すると、シグナル(意味のあるもの)とノイズ(意味のないもの)との間に本来差異はなく、音は音として“普通に”聴いてもらって、そこから自分なりの意味を見つけ出してほしい、というふうにも取れる。もうひとつ推測すると、藤森の曲には“冬”のイメージが多く、hozzyの曲には“夏”のイメージが多いという対比は何かを暗示しているようで、hozzyの歌詞に“虫”が多く登場するのも、よく言われる“日本人は左脳で虫の声を聴く”といった表現の象徴のように思えて、そこに“S/N”というテーマが重なり合うようでとても面白い。

 藍坊主は、生きのいいメッセージ・ソングを歌うロック・バンドという側面と、純粋な音の楽しみを追求する音楽家集団という側面を、1作ごとに先鋭化させているように見える。いわゆる青春パンクのイメージを濃厚に背負いつつ、こんなふうに飽くなき音の冒険へと果敢に繰り出しているバンドは、ほかにあまりいないのではないか。大いにリスペクトすべきバンドだと思う。

(宮本英夫)

この記事が気に入ったら
いいね!しよう

M-ON! MUSICの最新情報をお届けします。

この記事に関するキーワード

この記事を書いた人