Czecho No Republic ALBUM「NEVERLAND」ディスクレビュー

NEVERLAND

ALBUM

Czecho No Republic

NEVERLAND

日本コロムビア

2013.10.30 release


ドリーミーポップが誘う“ここではないどこか”。

 Czecho No Republicのメジャー・デビュー・アルバム『NEVERLAND』を聴くと、一瞬にして、目の前の風景が変わる。色彩も変わる。いつの間にか、どこか遠い世界へと連れていかれたような錯覚に陥る。そこは、私たちが普段、生活している“この舞台”とは別の、頭のなかに広がる“もうひとつの舞台”。現実とは少し違う、夢のような場所。憧れが産み出す、眩いイメージの世界。そこは決して、甘くロマンチックなものだけがあるわけではない。ウキウキするような空想や旅、恋にいつか終りがくるように、うつろいゆくものや終わっていくものへの感傷があり、だからこそ、刹那の今への愛おしさも込めれているような気がする。

 2010年3月にボーカル&ベースの武井優心(まさみ)とドラムの山崎正太郎を中心に結成されたチェコは、11年2月に八木類(g、cho、syn)が加入し、同年10月にインディーズから1stフル・アルバム『Maminka』(チェコ語で“お母さん”の意)を発表。同作が12年のCDショップ大賞にノミネートされたことを機に、一躍、話題の新人ポップ・バンドとして注目を浴びるようになり、12年6月には2枚目となるミニ・アルバム『DINOSAUR』をリリース。13年1月には。キュートでストレンジなポップ・ワールドをライブでも具現化すべく、モデルとしても活躍しているタカハシマイ(cho、syn、g、per)と砂川一黄(ギター)が加入し、5人組バンドとして、正式に始動。シンセポップを中心に、インディー・ロックやギター・ポップ、カントリーやマーチまで多彩なアレンジが施されたメジャー・デビュー・アルバム『NEVERLND』は、インディーズ時代の代表曲8曲と、キラキッラのドリーミー・ポップ「ネバーランド」「MUSIC」を含む新曲5曲で構成された、まさに名刺変わりの一枚となっている

 また、アルバムのタイトルにもなっている“ネバーランド”とは、童話「ピーターパン」で描かれている、大人になることを拒んだ、“子供だけの国”ではないだろう。タイトル曲の中で“幻想でも/信じてたい/ちっぽけな理想論だっていい”と歌っているように、“どこにもない、夢の中だけの理想郷”というニュアンスのほうが近いのではないかと思う。続く「MUSIC」を聴けばわかるように、彼らが求めているのは、あくまでも音楽の力を使って、聴き手の想像の扉を開くことだろう。「レインボー」で夢の中のメリーゴーランドに乗り、「Don’t Cry, Forest Boy」で森の中に取り残された未完の箱船を見て、「トリッパー」でエッフェル塔から無限の彼方へ。「幽霊船」に乗って深い闇に潜り、「ダイナソー」になってカーニバルを楽しみ、「国境」を超えて、限りのある「ショートバケーション」を楽しむ。自分ではない誰か、ここではないどこかに夢を馳せることで浮き上がってくるのは、今、この瞬間の貴さと真実の愛の在処。寒い季節にぴったりな室内でできる空想の旅。チェコの力を借りて、あなただけのネバーランドをイマジンしてみてください。

(永堀アツオ)

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