清 竜人 – 清 竜人が新作『WORK』を完成させた。淡々と、素直でまっすぐな言葉で今作について話してくれた彼。濃密なインタビューをお届けする。

清 竜人

 とにかく毎回、走りすぎるくらいに極端に走るアーティストである。去年の2枚のアルバムはとくにそうで──まず通算4作目の『MUSIC』は“萌え”を中心にした感覚をポップかつハイテンションで表現した超問題作だったし、続く『KIYOSHI RYUJIN』はどの歌もあまりに赤裸々すぎるもので、しかも限定的な販売方法をとったため、コアなファン以外は耳にできていないであろう弾き語り集だった。そしてニュー・アルバム『WORK』は一転、流麗なストリングスが鳴り響き、スピード感と勢いに貫かれた楽曲群が次々に異なる光景を見せていく、実にダイナミックな作品である。清 竜人は、やはり破格の才能の持ち主だ。
と、こちらがそうした確信を持てば持つほど、その一方で、これだけオリジナリティ溢れる音楽が世間にまだ届ききっていない現状について、歯がゆさを感じるのも正直なところである。マイペースにして、確固とした自分の世界を持つこの24歳は、今そうした現状をどう考えているのか? アルバムの話とともに、そんなことも聞ければと思って臨んだインタビュー。いつものように淡々とした口調の彼だったが、ここに来てその内面に少しずつ変化が生じているのも感じられた1時間だった。

INTERVIEW & TEXT BY 青木優

 

……もっとポジティブな気持ちでやりたい

──すでに取材をいくつか受けてきてると思うんですが、今のところ、このアルバムを聴いた人たちからの感想や反響はどんなものですか?

どうなんですかね? ほんとのこと言ってるか、わかんないんで。「いい、いい」とは言ってくれますけど。

──(笑)そう思いますか。

でも、なんとなく、皆さん言ってくださる感想というか、「こういうふうに良かった」みたいなものが、(自分が)“こういうふうに聴いてもらえたらいいな”と思ってたものと合致する部分が多いんで。そこは良かったかなと思いますね。

──それは具体的にはどんなところなんですか?

“今までの5枚を総括して、そこから新しいものをひねり出せたらな”みたいなことは思ってたんで。うまくそういうふうに聴いてもらえてるかなという印象は受けますね。

──そうですか。じゃあ翻るんですけど、これ以前までの5枚のアルバムに対する世の中からのリアクションについては、どう感じてます?

いや、いたって、すごく、そのまま受け取ってもらえてるなとは思いますね。ただ、『MUSIC』だけは、もうちょっと評価されても良かったかなと思いますけど。

──ああ、僕もそう思います! すごくそう思う。

あ、そうですか。それ以外はほんと、素直に、評価していただけてるかなと思います。

──竜人くん自身も『MUSIC』はもっと注目されても良かったと思う?

ですし、作品としてもっと広く聴いてもらえたり、評価してもらえても良かったかなとは、振り返って思いますけどね。

──あそこでうまく浸透しなかった理由について、自分としては何か考えてます?

どうでしょう? まあ振り返って、“ここ、こうしたほうが良かったかな”みたいなことは、あんまり考えないんで。

──それは、そういうことを考えないタチだってこと?

そうですね。自分で反省会みたいのはあんまりしないんで、そこまで深くは……“ここ、こうすればもっと良かったんじゃないか”とか、細部までは考えないですけど。

──でも、そこで悔しさとか、ないですか? 自分自身の才能だったり作品性が、もっと評価されるべきじゃないか?って。

そうですね……今までの人生、あまり“悔しさをバネに”みたいな感じで生きてきてないので。“いつか見返してやるぜ”みたいな、そういうものをモチベーションにしたことは今までないですね。

──そうですか(笑)。では何があなたのモチベーションなんでしょうか?

いや、まあ“日々楽しけりゃいいかな”って感じですけど。あとは……もっとポジティブな気持ちでやりたいなぁとは思いますけどね。ネガティブをパワーに変えるんじゃなく。

──なるほど。じゃあポジティブに活動できてますか? このところは。

はい。今はそう思いますね。

集大成のものが作れたらなと思った

──わかりました。さて、このアルバム・タイトルはなぜ“WORK”なんでしょうか?

まあ“作品”という意味でもそうですし、“仕事”という意味でもそうですけど。いちおうプロのミュージシャンとして、ふたつの意味でそういう集大成のものが作れたらなと思ったんで、『WORK』がいちばんしっくりくるかなぁという感じですね。

──プロのミュージシャンである自覚は前々から持ってたんじゃないですか?

まあ、それはそうなんですけど……もう少し大きくなったかな、という感じですね。自覚だったり責任感だったりが、少しだけ。それも徐々に、ですけどね。今回は音楽的だったり技術的な部分でちゃんと下地があって、しっかりしたものを作りたいな──っていう思いはありましたね。

──過去の作品はそれに足りてなかったと思うわけですか?

そういうわけじゃないんですけど、どっちかと言うと、もっとフィーリング的なものを大事にして作ってたんで。今回はそういうものじゃないような気がします。もう少し、しっかりと音楽的な部分だったりを重要視して作った気がします。それはほんとに感覚的なことなんで、あまり言葉にできないですけど……出来上がったものを聴いてみると、コード進行だったりドラムのフレーズだったり、あらゆる細かい部分にやっぱり滲み出てるかなという感じはしますね。曲を作る前の姿勢というか、自分の向き合い方が、出来上がったものにちゃんと反映されてる気はします。

──つまり、プロ意識が高まったということ?

まあ今回に関して言うと、そうですね。また次、なくなるかもしれないです。

──え(笑)、なくなるかもしれないんですか?

わかんないですけど。今回は自分の中でそういうテーマを掲げたほうが今までとの差別化も図れるし、新しい音楽が出てくるんじゃないかなという気がしたんで。

──じゃあ、あえてそうしてみた、ということ?

うん、というところもあります。なんとなくですけど、ちょっとしたことに対するこだわり方が変わってきてるんで。そういうのが積み重なって違うものが生まれればいいな、っていう。

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