青葉市子 – 青葉市子という名の弾き語りシンガーがニュー・アルバム『0』をリリースする。彼女は間違いなく今後の音楽シーンに重要な存在となるはずだ。

青葉市子

豊かな想像力、濃密な世界観とおだやかな手触りを感じさせてくれる楽曲、クラシック・ギターの弾き語りから生み出される奥深い歌によって、高い評価を得ているシンガー・ソングライター、青葉市子。メジャー第1弾となる4thアルバム『0』は、彼女の出発点である山田庵巳のカバー曲、初のフィールド・レコーディングによる楽曲など、ルーツと新しいトライが混ざり合った作品に仕上がった。細野晴臣、小山田圭吾などからも絶賛される彼女の音楽はここから、さらに広いフィールドで浸透していくことになりそうだ。

INTERVIEW & TEXT BY 森 朋之

 

いろんなエッセンスがその都度、入ってきますね

(9月某日、17時。取材場所であるレコード会社の一室にて)

堅苦しいですね。会議みたいな……。

──そうですねえ。あんまりこういうところで取材しないんですか?

何回かやってるんですけどね。下のお庭に行きます? 日差しがキレイだったから、遊びに行きましょう。(というわけで、みんなでビルの下にある庭へ移動)

──では、改めてよろしくお願いします。以前から市子さんの音楽を聴かせてもらっていたので、今日は楽しみにしてきました。フジロックのライブも観させてもらって。

あ、あの中にいらしてたんですね。最初は雨が降って、雷とかも鳴ってましたけど、最後は晴れて……(近くの道路を救急車がサイレンを鳴らしながら通過し、それを目で追う)。

──ニュー・アルバム『0』の話の前に、前作「うたびこ」以降のことを聞きたいと思います。活動の幅がどんどん広がってますよね。

そうですね。今まで関わってくれた人たちよりも、さらに多くの人と一緒にお仕事をする機会が増えて。いろんなエッセンスがその都度、入ってきますね。それにつられるようにして、活動の場も——自分で選んで増やしているというよりは、人が持ってきてくれる場が多くて。

──思ってもみないようなことも起きる?

そういうことばかりで。それがとても楽しいです。

──“青葉市子と妖精たち”名義で発表した『ラヂヲ』(NHK-FM「坂本龍一 ニューヤー・スペシャル」における、細野晴臣、坂本龍一、小山田圭吾、U−zhaanとのスタジオ・セッションをCD化した作品)も素晴らしかったし。

面白かったですね。刺激のある試みだったと思ってます。

──才能溢れるミュージシャンとのやり取りのなかで、特に心に残ってる言葉は?

細野さんとふたりで一緒に録音する曲があったんですね。そのときに「何も考えずにやって。じゃないと、音楽がきらめかないからさ」って言ってくれて。小山田さんとはツアーでもご一緒したんですが、「ここはどうしましょうか?」って聞いたときに、「好きにやって。ついていくから」って言ってくださったんです。ある程度の決め事はあって、“ここで4回やったら終わる”とか。でも、そのほかの細かいことについては“好きなようにどうぞ”っていう。それがいつも自由でいられる秘訣なんだなって思ったし、そういうことをたくさん教えてもらってます。

いろんなエッセンスを普段から取り込んで生きていて、そこから凝縮したものが曲になる

──市子さんが普段、ひとりで弾き語りのライブをやるときはどうですか? できるだけ余計なことは考えないようにしてる?

セットリストとかは、そんなに決めてないですけどね。もちろん大体は決めてるんですけど。例えば地方に行って“前に来たときもこの曲を歌ったな”って覚えてたら、その場で違う曲を選んだりとか。ざっくり決めておいて、気分が合った曲順にすることもあるし。ひとりだったら、何でも出来ちゃいますから。例えばもしバンドを組むことがあったとしても、ここぞっていうときにはピッタリの人がシュッと集まってくるんじゃないかなって思ってますし。

──無理に集めようとしないでも、会うべき人にはいつか必ず会えるっていうこと?

単純に、向こうからやってくるものをただ受け入れるんですよね。そうすると、自由でいられる気がして。

──全部を受け入れて、苦しくなることはないですか?

ありますよ、それは。例えば曲作りもそうですけど、いろんなエッセンスを普段から取り込んで生きていて、そこから凝縮したものが曲になるわけですよね。そのなかには見たくないものを見ることもあるし……。東京で生きてたら、さっき(の救急車)みたいに大きな音がそこらじゅうから聞こえてくるじゃないですか。東京って、音がすごく大きいと思うんです。例えば駅の改札の“ピッ”という音にしても、ほかの街よりも一段階大きいと思うし。

──意識したことないけど、そうかも。

あと、駅構内の天井も低いから、人の声が潰れて、ワーッと響いて大きく聞こえるし。そういうなかで感度が高いまま過ごしてると、すごく疲れるんです。

──感度って、自分で下げられるんですか?

下げられます。ずっと下げてると、植物みたいになるけど。電車とかはできるだけ乗らないようにしています。電車は、アドレナリンがガーッと出てるときとか、体調がすごく良いときじゃないと乗れない。だから、普段は徒歩とかチャリが多いです。東京の中にも比較的静かな場所はあるし、時間帯を選べば、わりと人が少ないこともあるんです。そういうところだけですね、私が頭を使ってるのは。

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